今日はカレーだな~
「今日はカレーだな~」
そんなことを夕暮れのオレンジ路の空を眺めながら呟く。私が住んでいる家は集合住宅街にそびえる市営の団地だ。歩いて10分くらいしたところにスーパーがあって私はいつもそこで食料品を購入する。団地と住宅が近いということもあって家とスーパーの通り道には公園とかもあって緑も多い。
そんな公園の茂みの中で背中に装備した件の柄を握り今にも引き抜こうと身を潜めている弟の姿は見なかったことにして帰りを急ぐ。私は弟と二人だけで暮らしている。ちゃんと父も母も健在なのだが仕事が多忙なせいでなかなか家に帰ってこない。でも、仕事以外でも仲良し夫婦は子供を差し置いて仕事という理由をつけて旅行とかに勝手に行ったりしている。まぁ、私も弟も全然気にしないからいいんだけど。
それで親がなかなか帰ってこないということは身の回りのことは自分でやるのがうちのセオリーなのだ。料理は基本私がやる。弟がやったら、「これの悪魔の調味料を入れることにより死神の力を補充。さらに魔力向上のための赤いスープ(トマトジュース)を投入。敵への急襲に備えて体力を養うための薬(ビタミン剤)を入れる必要もある。最後に我らの力の源とも言えるこれ(タバスコ)を入れればどんな敵が襲って来ようとも返り討ちにすることのできる体を作るスープの完成だ!」っという感じになりかねない。しかも、その謎スープを普通にまずいとか言って食べずに私が最終的に処理するという最悪結果に終わりかねない。だからやらせない。
まぁ、後は掃除とか洗濯くらいかな。例えばお風呂掃除だったら、「こそだ!食らえ!ダークブラックリン(バスマジックリン)!フハハハ。これで貴様は俺の手を下さずとも松の死のみ!・・・・・何?逃れた者がいるだと!ならばこれはどうだ(たわしでこすり洗い)!フフフ、さすがにもう・・・・・な、んだと!これだけの攻撃をしてまだ生き残った奴がいるだと!ならば最後の手段だ!食らえ!デスキラー(カビキラー)!」っといった感じで騒ぐだけ騒ぐけど結果的にはちゃんときれいにはしてくれるのだ。他にもほうきを持たせれば、「俺が手に入れたのは生の源を奪われし腐敗物(落ち葉)!このブルーム(ほうき)があれば貴様らなど俺の力の前ではどうすることも思出来ない!」的な感じでうるさいけど掃除はするのだ。洗濯とかもちゃんとやる。もう、例えはやらないけど。
そんな弟の行動にいちいち反応していたらそのうち精神が崩壊して自我を保てない気がする。ああいう感じになってしまった弟の周りには同じようなバカしか集まらない。この前は全員が黒い装束服を着て部屋を真っ暗にしてろうそくの火を囲んで謎の儀式をやっているところを見てしまった。私は普通にお茶とお菓子を渡そうとしたんだけど。
なので基本的にはああいう中二病の奴らとの絡みは避けるようにしている。そう例え、目の前の電信柱でフード付きの黒いマントをしている人が腕を押さえて苦しそうにしていて私は気にしない。
いや、気にしないも何も目に入ってどんな奴なのかを見た目で判断している時点で絡んでいるのかもしれない。でも、これはまだ観察に入るから絡みまでは行っていない。黒いマントとフードに覆われた人は性別の判断も年齢の判断もできない。でも、いつも中二病の弟と暮らしているせいでそういうバカがどんな奴なのか大体わかるようになってしまった。
例えるなら、いつも怪我をしているふりをしているとかやたらと黒い服装したがるとか体全体が隠れるようなマントとかは必須にしているとかギラギラした物を装備しているとかなどなどだ。
目の前にの人。腕を押さえているということは怪我を負っているふりをしている。黒い服装をしている。フードとマントのせいで姿が見えない。何かギラギラした物を持っている。
これはもう確定だ。この人は弟と同族だ。つまり、絡まない方が良いと判断。
さっさと帰ってカレーを作ろう。
私がその謎の黒い人の真横を通り過ぎた瞬間、謎の黒い人は力なく地面に倒れた。絡まない方がいいと思っていても思わず振り向いてしまう。
突然倒れたのは演技かと思った。でも、それはあまりにもリアルすぎて疑うことがどうしてもできない。服の上から上下に揺れる体。そんな倒れた状況でも痛む腕をさえたままだった。つまり、あれは演技じゃなくて本物だということになる。
いやいや、そんなわけない。だって、あんないかにも私は中二病だって言うオーラを醸し出している服装をしているんだ。その確証はいつもいるバカから経験で得ている。あれは明らかに家にいるバカと同じなはずだ。きっと、これは巧妙な演技だ。そうに違いない。
と言い聞かせるがそれを吹き飛ばすものを見て考えが180度を通り越して360度も通り越して540度回転した。テンパってしまってめんどくさい表現をしてしまった。つまり、全く真逆の考えに変わった。あの人は本当に怪我を負っている。
その人の押さえていた腕からコンクリートの上を流れ出ていたのは何を隠そう。人という生き物にまんべんなく酸素を送る赤血球。つまり、血だった。それは紛れもなく本物だと分かった。ああいうバカな弟はしょっちゅう周りの同年代と問題を起こす。その度に怪我をして泣きながら帰って来る。その時に見る血と同じだった。
それを見た瞬間、私は衝動的に動いてしまった。
「大丈夫ですか!」
声を掛けるとそれに反応した黒い人はフードの影から私のことを見た。でも、答える気力がないようでそのままぐったりと倒れたままだった。
とにかく怪我の具合を見るためにコートをはいで怪我をしているであろう腕を見る。色白で華奢な二の腕に一線の切り傷が走っていた。何か鋭いもので切ったみたいだ。傷的には深くない。でも、これだけ血が出ているのは何かおかしい。普通はある程度血が出たらその血が固まって出血を止める。でも、この子の血が固まることなくどんどん出ている。
何か重要な血管が損傷して血が止まらないだったらそれは重傷だ。
「今から救急車を!」
と言って手持ちのポーチ中からスマホを漁る。でも、そこにスマホはなかった。そういえば、充電中で家に放置していたことを普通に忘れていた。だから、この場にはない。
「待ってください!すぐに助けを呼んできますから!」
そう声をかけて場を離れようとした。でも、血で真っ赤になった手を見て私は背中がぞっとする。周りには人の影はない。これはここに放置するべきじゃない。家もすぐそこだ。傷自体も決して大きいわけじゃない。
「今から私の家に連れて行きます!それまでは我慢してください!」
私は買い物袋を一旦おいて黒い人を背負う。軽かった。いや、これは女である私に対する嫌味ではないということにしておいて買い物袋を持って家に向かって走る。