ストーリー・ザ・ホワイト ━人と獣━
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ」
俺は目の前の現実を受け止めきれずにいた。
真等二十年の4月1日
俺の住む魔導国家『マジック』の三大都市が1つ『カルラド』が異次元生命体の大量発生により壊滅寸前だった。
平和だったいつもどうりの空に突然、紫色のヒビが入って、巨大なパラレルゲートが開き、そこから大量の異次元生命体がなだれ込み、何人もの人が、喰われ
潰され 千切られ 殺されていった。
俺はただ、上半身だけになった妹を抱き抱え、崩れ落ちた家だったものの上で両親だった肉塊が食い散らかされていくのを見ている。
見ていることしか出来なかった。
悔しさ、悲しみ、怒り、怨み、あらゆる負の感情が心の中を渦巻いていた。
「何が魔導者だ!何が魔法だ!俺はなにも、なにも守れなかったじゃないか!」
全てを失ったオレ、ジーク・ヘラ・フリードは、己の非力さを怨んだ
叫ぶ、ただ泣き叫ぶ、まるで子供の様に
こんな事実を認められるものかと
こんな運命を受け入れられるかと
その叫び声は誰にも届かない
いや、あえて言うなら、敵たる化け物共にしか聞こえぬと
その声に気付き、多数の化け物逹がよって囲み、食らい付く隙を伺っている。
化け物の一匹が大口を開け、ジークに食らい付こうとした、その時
突然一匹のパンダが表れた
パンダは、すこし普通のパンダとはすこし違って、可愛らし寸胴体型で人のように二足歩行をしている。まるで着ぐるみだ
突然やってきたパンダは、ジークに襲いかかろうとしていた化け物を、その短い脚で蹴り上げ、その体型からは想像もつかないような素早くキレのある格闘術で見事に異次元生命体の群れを撃退した。
そして、パンダは、どこからともなく取り出した、画用紙(落書き帳のように何枚か綴られたもの)に、同じく取り出したペンでこう書き、オレに見せた。
『大丈夫か?安心しろ、オレはただのパンダだ!』と
空気が凍てつく
ただのパンダは、紙に文字を書いたり、ましてや自分をパンダだと言い張ったりなどしない
「あんた、誰だ?」
この世界において、俺の知っていることは、ごくわずかだ、それに対して、知らないことは多いい、このパンダの存在もその、知らないことの一つだ。
パンダは、俺の前にたち、その手をさしのべた。
それから二年たった俺はそのパンダに助けられから、一年かけて正気に戻った家族の死も、故郷の壊滅も、全てを受けとめ心の整理をした。
そして俺は、魔導力学を一から学び直すことにした。
あのパンダはどうなったかというと、今は一緒に暮らしている。
俺の命の恩人だ
俺が立ち直るまでの一年間、ずっとそばにいて慰めてくれた。
今でこそ、パンさんなどと気軽に呼んでいるが、感謝してもしきれないほどの恩がある。
パンさんがなぜ人語を理解しているのか?なぜ文字が書けるのか?いろいろ不思議はあるけれど
パンさんはとてもいい人だ、いや、いいパンダだ
「パンさん、晩御飯どうする?」
『オレはいつもどうりでいい』
パンさんはいつもどうり、画用紙に文字を書いて会話している。
「そうか」
いつもどうり、パンさんの大好きなレイのアレを出してやった。
「はい、おでん缶」
『サンキュー、人生このために生きてるってもんだぜ♪』
パンさんのテイションが一気に高くなる。
相当好きなんだな
パンさんはいつもどうり缶を丸飲みすると、その後、パンさんの中から、「カチッ!」という缶を開ける音がして、一分ぐらいたつと缶だけ吐き出す。
パンさんの生態は不可思議の極みだ
『どうした?こっちをじっと見つめて』
「なんでもないよ」
深く考えるのはよそう
「パンさん、オレはもう寝るよ」
晩御飯を食い終え、食器をかたづけたオレは、早めに寝ることにした。
何せ明日は朝早いのだから
久しぶりの魔導高等学校だ、あまりいい思い出は無いが、悪い思い出も無い、いや、正確には何も覚えていないと、言うべきか、だからこそ、もう一度、一から学ぶ価値があるのだ