第七夜
集会の日から一週間。ついに合コンの日が来た。
時間は六時。場所は学校近くのカラオケボックス。
私はあんまり歌は得意じゃないからお菓子食べてジュース飲んで
適当に過ごしていようと決めていた。
「制服のままで行っても大丈夫かなぁ・・・」
「大丈夫、触法行為しなければいいんだから!」
この瞬間だけは霞の笑顔が怪しかった。
相当気合入ってるんだな・・・。
早歩きする霞の後を付いて歩いていると、後ろの二人が立ち止まった。
「甲山さん大丈夫?」
振り向くと、桜がしゃがむ甲山さんの横に付いて様子を窺っていた。
「どうしたの?気分悪い?」
すると甲山さんはゆっくり立ち上がり、髪の毛を整えた。
「・・・平気よ。行きましょう」
一応心配だからと桜は甲山さんの隣で歩いていた。
私は早くもカラオケボックスに辿り着いた霞の後を追った。
「126号室です」
すでに若葉山男子のみなさんは来ているようだ。
フロントでリモコンや盛り上げグッズなどを貰って私たちは
若葉山男子のみなさんが待つ126号室へと向かった。
霞はもうニヤニヤしだして桜は興奮して落ち着かない様子だ。
甲山さんは相変わらず調子悪そうに下を向いていた。
「お待たせ〜」
霞が勢いよくドアをあけて入っていくと、男子たちは一気にテンションを上げて
霞の傍へ駆けて行った。まぁ一番盛り上がっている男子は霞の仲間の人なんだけど。
私は白々しいなぁ、と目を細めていた。
「待ってたよ〜霞ちゃんって噂には聞いてたけどやっぱり美人だね〜」
「そぉ?霞嬉しい〜」
私は苦笑いしながらとにかく目立たないようにそそくさと椅子に座った。
「ねね!歌おうよさっそく!」
「あたし歌得意なんだから!」
桜まで男子たちの高いテンションに便乗して合コンを楽しんでいる。
自己紹介もナシに歌って・・・こんな合コンなのか!?
私は静かにお菓子を食べながら歌いもしないのにソングブックを捲っていた。
ふと顔を上げると、向かいに座っていた男子と目が合った。
彼も私のように静かで、携帯電話をいじっていた。
私は慌てて目を逸らしたが、案外その男子がカッコ良かったことに気づく。
今度は目が合わないようにそうっと本の間から彼の顔を見た。
(・・・カッコいい・・・)
坪山 菫、17年に一度の大チャンス到来かも!
これは大当たり!モノにしなければきっと損!
そう思い、さっそく彼の隣に行こうと立ち上がろうとすると、甲山さんの姿が目に入る。
甲山さんは多分淀川だと思われる男にしつこく付きまとわれていた。
その様子を見ていると、霞が歌の感想の間に私に耳打ちしてきた。
「あれが淀川だよ・・・軽い男でね。気を付けな」
やはりあいつが淀川か・・・と観察していると、甲山さんが淀川にもっとしつこくされていた。
「ねぇ〜メアドくらい教えてよ〜」
「・・・」
「ね?いいじゃん〜」
「ちょっと・・・あたしトイレ・・・」
甲山さんはそう言って淀川の手を振り払って部屋を出て行った。
気分悪い上にあんなやつにベタベタされたら溜まったものじゃないと私は思った。
それより・・・あのひとのところへ行ってみようかな??
こんなに積極的になったのはきっと初めてじゃないかな・・・。
私は緊張しながらも彼のところへゆっくりと歩いて行った。