第五夜
霞さんの秘密が簡単に本人にバレたのはちょっと惜しかったけど、
なんだかこれを機に霞さんと仲良くなれたみたいでこれもまた嬉しかった。
それにしても男の子だって分かってるのに美人だな〜って思う。
声変わりもしていないらしい。だったら普通に女の子としか見えない。
とりあえず不思議な人だと思った。
休み時間が終わると、私はまた霞さんに呼び出された。
今度は誰もいない理科室に呼び出された。
早速理科室に行ってみると、隅の方で霞さんが手招きしていた。
「こっちこっち」
人がいないのを確認するとすぐさま霞さんの元へ走って行った。
「どうしたの?か・・・霞くん・・・」
「霞でいいよ。ちょっと頼みがあってさ・・・秘密を知っている仲間として」
「何?」
霞は私の肩を抱き寄せ、顔を近づけて小声で喋り始めた。
「合コンのセッティングお願いしたいんだけど・・・」
「えぇ!?」
合コンは行ったことがあるけれどセッティングなんてしたことないし、
私は正直困っていた。
「お願いだよ!実はさ、さっき若葉山のダチから淀川を含めた
合コンのメンバーが集まったって連絡が来たんだよ!」
「あの・・・そんな綺麗な顔して"ダチ"とか言うのイメージが崩れる・・・。」
「あぁら、ごめんなさぁい。オホホ・・・」
気を抜いていたら全部許してしまいそうだ。
もはや私には霞が男なのか女なのか分からなくなってきていた。
本当、スカート穿いてるのに胡坐を掻くのとかやめてほしい・・・。
「まぁとりあえず頼むよ!俺女子にどうやって頼んでいいかわかんねぇし」
「あたしだってセッティングって・・・!」
「お願いだよぉ・・・」
怒っている筈なのにずっと目を見つめられている所為か、
私はなんだかすごくドキドキしていた。
「頼むな!」
そう言って霞は理科室から去って行った。
本当に合コンのセッティングなんて・・・どうすればいいんだろう?
私は早速教室に帰り、桜に話してみた。
「合コン!?」
「やるんだけど・・・若葉山男子と・・・。」
「若葉山男子!?行くっきゃないでしょ!?」
「ホント!?」
桜は若葉山男子と聞いてかなり興奮しているようだ。
私はあんまりよく知らないんだけど、若葉山男子って結構お坊ちゃまや、
美形が揃っているみたいなんだとか。
部活の成績も良くて運動だけじゃなく、頭のレベルも高いらしい。
そんな高校がよくうちの高校なんかと合コンなんてするんだろう?
やっぱり近所だから?お嬢様校だからなのかもしれない。
まぁとりあえずメンバーは一人確保。霞を入れて四人確保すればOKらしい。
向こうのメンバーは淀川柾と霞の仲間の親友二人と霞の仲間で四人ってことらしい。
もう一人の仲間はどうしても行けないんだとか。
それにしてもあと一人・・・できれば同じクラスの人がいいって言われてるんだけど
同じクラスに桜がいた為に桜としかほとんど話してないんだよね・・・。
あ〜人脈を広げとけば良かった・・・。
「どうしよっかな〜」
あと一人・・・。そうだ!
教室中を見渡すと、私の目にある一人の姿が飛び込んできた。
そうだ、あの子がいい!
「あと一人いるんだけどさ、甲山さんなんてどう!?」
「甲山?誰だっけ?」
「あの子!」
私と桜は女友達とお喋りしている甲山 梅を見た。
「甲山さんなら話したことあるし・・・同じクラスだし・・・」
「でも甲山さんって・・・」
桜は何か言いかけたようだが、私と目が合うと慌てて誤魔化した。
とにかくメンバーは全員揃ったし、あとは合コンの日を待つだけだ。
そして霞の復讐が始まるわけだ。
今の私は"復讐の手伝いをしている"なんていう罪悪感なんて全く無く、
寧ろ"これから復讐が始まる"という悦びを感じていた。