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第三夜

「何やってるんだろう??」


私は男子たちと霞さんが話していることを聞き取ろうと耳を澄ました。

すると何かぼそぼそと聞こえてきた。


「しかしよく半年でここまで伸ばしたよな」


一人の男子は霞さんの美しく巻かれた長い髪を触りながら言った。

霞さんは音も無く笑っていた。


「まさか本当にこんなことになるとは思わなかったぜ」

「復讐なら俺らの高校でやればよかったのに」


復讐?私は何がなんだか分からなくなり、ますます話に興味が湧いてきた。

すると、霞さんがゆっくりと口を開いた。


「心を傷つけるんだから男子校じゃあんま意味無いよ。俺はあいつの心をズタズタにして

やりたいんだからさ」


私は「ん?」と疑問に思った。


「えっ!?俺・・・?まさか・・・霞さんて・・・!」


ますます頭が混乱し始めた。でも次の瞬間、この疑問に確信がついた。


「まさか女のふりして女子高に編入するなんてお前も思い切ったことするよな。バレてないよな?」

「当たり前だろ?誰一人知らねえよ。」


女のふり・・・!?

確かにここに入学してきた時・・・渋木 霞なんて子、いなかった。

二年に進級したとき、初めてクラスで見たような気がする。

私は結構ショックだったが、まだ霞さんたちが話していることに耳を澄ました。


「ま、女だと思ってた奴が男って知るとあいつも相当ショックだろうな」

「だからこそ合コンが多いこの高校に来たんだ。あいつが卒業する前に若葉山との合コン、上手くセッティングしてくれよ。こっちも綺麗なお嬢様たっぷり連れてくるからよ」

「そいつは楽しみだ」


それから三人は笑い話をしながら帰って行った。

私はとんでもない秘密を知ってしまった。まさかあの校内のアイドルの

渋木 霞が男だったなんて・・・。

どうしようもない気分で薄暗い廊下を通って私は帰宅した。



「ただいま」


家に入ると、茜がすでにテレビを見ながら夕飯を食べていた。


「おかえり〜お母さん遅いから先に晩御飯作っちゃった。菫ちゃんの分もあるから食べて〜」

「お母さんまだ帰ってこないの?」

「うん」


私はさっきの事でとてもご飯どころじゃなかった。


「どうしたの?何か顔色悪くない?」

「大丈夫・・・だと思う・・・」


私は自分の部屋に行ってベッドに顔をうずめた。

さっきのは何だったんだろう?

復讐って・・・誰に?

何のためにするの?

そんなことが頭の中を駆け回っていた。

私が前から感じていた秘密のあるような雰囲気ってやっぱり・・・。

誰一人知らない秘密を知ってしまった私は、その秘密の内容がショックだった。

しかし、いろいろ考えてみるとそんなにショックではなくなってきた。

寧ろ、校内では自分だけが知っている秘密、しかも校内のアイドル

渋木 霞の秘密となると途端に何か快楽のようなものが込み上げてきた。

特に霞さんに恨みがあるわけがないけれど、バラせば女子たちは

騙された、と逆上するだろう。

私にとってこの秘密は切り札になりそうだ。

そう考えているとさっきとは打って変わって元気になってきた。

私は部屋を飛び出してリビングまで走ってご飯にがっついた。


「いただきます!」

「どうしたの!?」

「何でもないよぉ??」


茜はまるで猛獣でも見るような目で私を見た。


渋木 霞・・・叩けばもっと綿もホコリも出てきそうな男だ。

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