09
あれから数日、私は徐々に良くなっていき、ようやく熱も下がった。
そうなれば人間だれしも動きたくなるだろう。
例にもれず私は部屋を出たかった。
外に出て思いっきり駆け出したかった。
何せ外を見ると広い庭、花も整備されているのかとてもきれいに咲いていた。
私だって女のはしくれ。花は大好きだ。
「あの、外に出たいんだけど…」
朝、いつものように隣でちゃっかり寝ているクレバーに話しかける。
そう、こいつは私がいつもいつも暑いし邪魔だから違うところで寝てくれと頼んで、ちゃんと寝る時は一人で寝ているのにもかかわらず、朝起きて横を見るとぴったりとあの美しい顔があるから毎朝小さな悲鳴を上げる。
突然横に貞子がいるのも怖いけど美しい顔があるのも驚きもんだ。
それを何回か繰り返しいや、もう繰り返すのも疲れた私は最近あきらめかけている。
しかし今日は少し違う。頼みたいことがあったから呼びに行かなくて好都合と言うわけだ。
先ほどの一言を言うとクレバーは困ったように眉を下げたが私のおでこの熱を測り一人頷いた。
「もう熱も下がってるね。それじゃあ今日はお城を案内しようか。少しずつだけれどね。」
え、あんたも来るのかよって言う突っ込みは飲みこんで私はようやく外に出れることに歓喜した。
しかしそののちのドアのノックに緊張が走る。
「入れ。」
「失礼いたします。」
そうして入ってきたのは宰相さん。
前回の件があってから私がこの人が苦手だ。
クレバーに悟られない程度に体をこわばらせていると宰相は一度私を見てからクレバーに話しかける。
「クレバー様、今日のスケジュールでございます。」
「ああ、今日のスケジュールは朝は休みだ。昼からにしてくれ。」
「…は?」
「だから今日の朝はユイと城を散歩するんだ。体調も良くなってきたし体力回復は必要であろう?」
「…」
その何も言わないのが一番怖いと言うことを宰相はわかっているのだろうか。
宰相の言いたいことはわかる。だから私はクレバーを見た。
「あのさ、私一人で見てるし大丈夫だよ。わからなくなったら周りの人に―」
「駄目だ。」
突然冷たい声になったクレバーに遮られ思わず後ろずさる。
「な、なんで?」
どうしてこんなに怖くなるのわからない。私は事が円滑に運べたらとわざわざ気を使っていると言うのに。
「俺は、ユイのために時間を費やしたい。そのために今まで努力してきたんだ。誰もこれを否定する資格はない。」
クレバーは立ち上がると宰相の方を向く。
「宰相、ラミアス。私は本日朝休暇を取る。異論はないな?」
「…かしこまりました。」
宰相さんは苦い顔をした後部屋から去って行った。
ご飯を食べた私たちは早速外の庭へ出た。
思っていた通り空気は綺麗で花も綺麗。太陽の光がまばゆく私たちを照らしていた。
「うん、綺麗…なのよ。」
周りに人さえいなければ。
やはりというか実はあまり考えてもいなかったがクレバーは王様でありこの国の一番偉い人だ。
ということは逆に言うと命も狙われやすいらしい。
後ろと前には離れてはいるが警備の人がいる。
そして世話係の様な人が後ろにごまんと固まっていた。
クレバー離れているのかそんなことは無視して芝生の上に高そうなランチマットをひいていた。
「はい、ここにすわって。あ、寝転がっても良いよ。」
「いや、あの、いいです。」
これじゃあなんのために外に出たのかわからない!
こいつを連れてきたのは失敗だったと後悔しているとクレバーは嬉しそうにランチマットの上にすわって私を眺めていた。
「…何?」
「いや。可愛いなと思って。」
爆弾発言に私の顔はたちまち真っ赤になる。
「な、何を突然言うのよ!馬鹿じゃないの!」
恥ずかしいと言うのも相まってクレバーからそっぽを向く。
しかし見えたのは周りの人の警戒している目。
「陛下、」
「何を見ているのだ?ユイには許される行為だ。」
王様がおと言うかかなり怖顔のクレバーに警備の人たちも恐れをなす。
「…はっはい。」
そして再び警備についた皆様方。
「ねえ、私何かした…?」
クレバーの傍により小声で尋ねる。
しかしクレバーは笑顔でこちらを向くだけだった。
「ユイ、あそこに咲いている白い花があるだろう?あれはどうやら編み込んで冠にできるらしいぞ。」
「え?」
指をさした方向を見るとシロツメクサの様な白い花が咲き誇っていた。
クレバーはランチマットから離れ白い花をむしり取って編み込もうとしてた。
しかしその花の取り方は雑と言うか…
「クレバー!ちょっとストップ!」
「え?どうしたの?」
「あんた、こんな取り方してたら花がかわいそうでしょ!しかもあああ、花の上にすわって…」
私は小さい頃やっていた花つみ、花冠作りを思い出し作り始めた。
それを隣でクレバーはニコニコと微笑みながら見つめている。
「いい?冠を作るためにはまず短く摘み取るんじゃなくて茎の下の方から摘み取るの。ほら長いでしょ?そしたら頑丈に作れるわけ。」
「クスッ、はい、先生。」
「ほら、クレバーもやってみたら?」
それから小一時間二人で黙々と作業を行った。
「よし、こんなもんかな!」
「ユイ先生、こんな感じで良いですか?」
クレバーが作ったのは私のよりも凄く綺麗にできていた。え、幼いころの経験って一体…
「うん上出来だと思う。」
「ありがとうございます。それではこちらを我が妻に。」
その花冠をクレバーは私の頭に載せた。そして照れた私の手にある花冠を自分の手で自分の頭に載せた。
「俺にピッタリだね。ありがとう」
「別に、あんたにあげる予定じゃなかったんだけど…」
「いや、ユイが作ったものは俺がちゃんと丁寧に頂戴いたしますよ?ありがとうございます。」
「…なんだそりゃ」
「ふふっ。これで結婚式をするのも良いね。もうあと少しだけどちゃんと枯れないでいてくれるかなあ?」
「…は!?」
クレバーのあほ話に付き合ってられないと会話を流しそうになったが最後の発言はいただけなかった。
「あ、あの、クレバーさん?」
「なんだい?」
「結婚式って、誰と誰の?」
「ん?俺とユイのだよ?」
「…え?」
「床に伏せていたのもあってずらしているんだけど、もうそろそろ良いよね?ああ、ドレスやその他のものは伝統があるから好きに決めれないんだ。あっちの…なんと言ったかな?しろむく?うぇでぃんぐどれす?の様なもの着せてあげれなくてごめんね。」
クレバーは楽しそうに結婚式について語ってくれたが、私はそれどころではなかった。
手が震え怒りは頂点と達した。
「結婚式なんてまだしませーーーーーん!!!!」
その声は周りの臣下の方々までまる聞こえであった。
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