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05

そして私は王宮に連れて行かれた。

もちろんロイとは涙なみだのお別れをした。


「ろっロイっ!!!私ここに残るっ!!」

「ユイ…」



この言葉にぎょっとしたのは王宮からの使いの人達。

クレバーの笑顔がだんだんと怖くなっていたらしい。



「ユイ様、皆あなた様を待っております。ですからっ…」

「ユイ、ストラクス家に迷惑だろう?」

「けどっ…」

「ミスター・ストラクス、」



クレバーに抱きしめられこの時の顔を私はみていないがロイのお父さんの顔面蒼白っぷりをみたら、うん、多分逆らえる人なんかいないんだろうなって思う。



「ユイ様、是非また遊びにいらしてください。ロイも楽しみにしております。」

「はい。ヴィレも、待ってるわ。」

「っロイいいいい!!!」









そして無事馬車に乗せられてしまった私。

クレバーは隣でご機嫌だ。

「今日のごはんは何にしようか。ユイの好きなものを作ろう。」

「いや、っていうか作れるの?別の世界のものを」

昨日ロイの家で出たものも多少味は似ているものの、具材が全く知らないものだらけだった。

見なければ食べれるけれど、見てみると少し勇気のいる行為になってしまった。

「同じものは作れないけれど、同じようなものは作ることができる。そのために我が王宮の料理長を鍛え上げたからな。」

他の世界の料理を覚えさせられるとか…不憫だろう料理長。

ハハハと流そうとしていると、窓から精霊が見えた。

どうやら畑に水をやるために水を出す魔法を使おうとしていた。

「そういえばさ、あんたの精霊は?」

「俺の?」

「昨日以来見てないけど…」

「ああ、トゥーラか。」

ぼそっと何か呟くと昨日の暗い空気をまとった精霊が出てきた。

【何事か。】

「いいや。ユイがどうしたの?って心配したから召喚したんだ。」

【心配は無用だ。ユイ殿。】

「あ、はい。」

なんか、この子すっごく絡みづらいんだけど…

苦笑いをしているとクレバーが笑いながら補足をする。

「ユイ、紹介するよ。俺のパートナートゥーラだ。」

「ど、どうも…キサラギ・ユイ、です。」

【トゥーラだ。】

シーンとする馬車の中。

もうちょっと、何か話してくれてもいいんじゃない?

「え、えっと、パートナーって精霊は何人もいるんじゃないの?」

トゥーラとの会話は不可能だと判断した私はクレバーに話を振ることにした。

「この世界で言う精霊と言うのは魔法を使うための媒体として使われているんだ。そして必ず一人につき精霊一人しかつけない。契約をするからね。」

「へえ…」

なんかこの世界契約することが多いな…

「この世界ではユイの世界以上に言葉に制約が課せられるんだ。一つひとつが契約につながるんだよ。」

「な、なるほど。」

こやつ、私の気持ちを読んだな…?

クレバーの固有能力に怖いと思いながら話を聞く。

「そして精霊を持つにもその持つ本人に魔力がなければ保有することができない。と言うよりも選ばせてくれないかな。」

「選ばせてくれない…?」

「選ぶためにはまず神殿のドアを開くことが必須になる。それができるのは魔力がある人物。その時点で精霊に試されているんだよ。」

「はあ…」

「そしてその中に入ると様々な精霊が待ち受けているんだ。自分の主をずっと待っている。そうして俺が見つけたのはトゥーラだったってわけ。」

「なるほど…」

なんとなくわかったがいまいちよくわかっていない気がする。

それがクレバーにもわかったのだろう。

ニコニコ笑いながら私の方を向いてくる。

それにむかついたのでトゥーラの方を向く。

しかし、精霊ながら様々なアクセサリーをつけているな…

クレバーの趣味なのかな?

じっと見ているのがわかったのかトゥーラが私の方を向く。

【ユイ殿、如何した?】

「いっいや、なんでもない…です…」

「トゥーラ、ユイの傍にいてあげて。」

【承知】

すると私の方へやってきて私の膝の上に降り立つ。

「かっ…軽いのね。」

【人間より小さいからな】

「そ、そうね。」

いまいち会話になっているのかなっていないのかわからない状態で私は初めての馬車を体験していた。










「でかっ…」

王宮について最初に浮かんだ言葉がこれだ。

本当に大きい、そして真ん中にある城が高い。

「ユイ、ようこそ。我が王宮へ。」

「は、はい…」

馬車から出るとそれはそれはたくさんの人が私たちを出迎えてくれた。

「ここで働いているものたちだ。今日ユイが来るのを心待ちにしていた。」

馬車を降りながら人々を眺める。

とても嬉しそうに歓迎してくれているのが唯一の救いだなと思った。

そしてそろそろ休ませてくれると思いきやとある広い部屋に連れて行かれた。

行くと机や本棚、ベッドと誰かのプライベートルームのようだった。

まあ、うん。誰のかはなんとなくわかるけれど。

「ここは俺のプライベートルームだ。」

そして一つ一つ案内される。

一つドアを開けるとバスルーム。

もちろんくつろぐためにソファもある。

この世界にはテレビが存在しないのか、テレビはなかった。

と言うより電気と言うものが存在していないのか灯りもロウソクのようなものだった。

聞いているうちに少しおかしいと疑問がわく。

「ちょ、ちょっと待って、私もここなの?こんな広いお城で私一人の部屋とかないわけ?」

「…」

「ちょっと!まずそこに連れて行くべきなんじゃないの!?」

そうおかしい。なぜこんな広いお城の中でちまちまと二人一緒の部屋でなければならないのか。

ハリボテ出ない限りあり得ない。

「しかも、べっ…ベットが一緒だなんてちょっと待って欲しいんだけど。」

いくら王妃っていう肩書でここに来たからと言って私は別に彼のことを”愛していない”のだから。

「俺はソファで寝る。だからここにいてくれ。」

「隣とかにないわけ?普通王妃の部屋ってそういう構造になっているんじゃないの?」

どうしてそこまで一緒にいたいのかわからない。

私にはその気持ちがないからわかるはずもないのだけれど。

「それなら王妃の部屋に俺も移る。」

「だから、」

「何もしないし一緒にいるだけで良いんだ。話さなくても良い。傍にいるだけで、ただそれだけでいい。」

ぎゅっと握られる手。

まただ。私はこの手を振り払えない。

同情なのか、それとも怖いからなのか。

良くわからないこの感情。






そして私はまた頷くしかなかった。

久々の更新です。

トゥーラは割と好きなキャラだけれども、台詞を考える時にすっごく考えます(笑

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