03
ロイとお話をしているといつの間にか夜になっていた。
どうやらお母さんはすでに病気で亡くなっているらしく、家でお父さんと家政婦さんや執事さんたちと一緒に暮らしているらしい。
お金持ち…すごい。
ご飯を食べ終え再び二人(プラス精霊とやら一人)で話していると
ドアからノック音が聞こえてきた。
「はい、どうぞ」
ロイがそのノックに返事をするとおじさんが部屋へ入ってきた。
「話は弾んでいるかい?」
「お父様!」
ロイはドアの方へかけて行く。
そうか、あのおじさんがロイのお父さんか。
気まずいながらも二人の方向を向く。
色々二人が話しているとお父さんと目があった。
「はじめまして。ロイの父親です。」
「はいっはじめまして!ユイ・キサラギです。あの、今日はありがとうございました。」
声をかけられてあまりの緊張にどもってしまう。
まず看病してもらったことを感謝する。
突然こんな名も知らない人物を家に入れてくれるのだ。
感謝をしなくていつする!
私のその言葉にロイのお父さんは笑みを浮かべる。
「話はロイから聞いている。こちらこそ、ロイの話相手をしてくれてありがとう。とても感謝している。」
そしてロイの頭を撫でるお父さんを見て少しだけ照れる。
感謝することは会ってもあまり感謝されることはなかったからだ。
「具合はどうかね」
「はい、だいぶん良くなりました。」
「それはよかった。回復するまでゆっくりしていってくれ」
にっこりとこちらを向いてくる。
とても温かい笑みでこちらまで心が温まってくる。
しばらく話しているとロイのお父さんがさてとと立ち上がる。
「私は今から仕事へ行ってくるから、外へ出ないように。」
「まあ今からお仕事?」
ロイの驚きっぷりから推測すると今はもうお父さんが働く時間じゃないのだろう。
ロイの心配そうな顔がうかがえる。
「ああ。王からの直属命令が出された。くわしくはこれから行って聞くがどうやら迎えに行った王妃が行方不明らしい。」
”王”その言葉に心臓がドクンと高鳴る。
「まあ。お父様のところまで来ると言うことはよほど捜索を拡大されているのね。」
「ああ。いつ帰れるかわからない。けど良い子でお留守番していなさい。」
「大丈夫かしら…お風邪をひいていなければよろしいのですが…」
「ロイ…」
「なに?って顔真っ青ですよ?!どうしたのですか?」
ロイが私を心配して私を揺するがそれどころではなかった。
もしかしなくても、クレバーが私を探してる…?
ドクン
心臓が突然大きく鳴り始める。
どうしたんだろう?どんどん音の早さが早くなっていく。
「ユイさん!?」
「ユイ?どうしたんですか?ユイ!?」
「わか、らな、」
「ユイ!!!」
突然うつむいて胸を抑えた私をロイは支える。
ロイやロイのお父さんは何度も私に呼びかけるがもはやそれにこたえる元気もなかった。
ロイは急いで人を呼びに行っているがそれを見ることすら億劫なぐらい今の状況はとてつもなく苦しかった。
ヴィレも心配そうに私の周りを浮いている。
【ユイさん!!これはもしかして結婚印では!?】
ヴィレが結婚印の近くを示す。
「結婚印だと…!?」
ロイのお父さんまで覗いてくる。
言葉も出なくなってきて顔だけでうなづく。
「ユイさん、これをいつどこで!?」
【これを封印した方はどなたですか!?早く探さないと浸食されています!!】
浸食…?
どういうこと?
「もしかして、ユイさん、君が…」
ロイのお父さんが言葉を述べようとすると突然私の体の上に黒い光ができて一瞬目を瞑る。
そして再び目を開けるともう一人精霊が現れていた。
【おぬしか。我が主の愛しき者は】
その精霊は様々なアクセサリーをつけていた。
ピアスやネックレス、はたまた腕輪。そして様々なところに入れ墨。
なにより黒い服装やその灰色の長い髪の毛が奇妙さを醸し出していた。
その精霊は私の結婚印のもとへやってくるとそれに触れるか触れないかのところで手を重ねる。
何かを呟くと少しだけ胸の苦しさがなくなった。
「あなたは…?」
【今から転移操作を行う。あとは主がいなければ治らないからな。】
再び何かを口にすると
ベッドのそばに魔方陣みたいなものができた。
そこで光が輝きだす。
眩しくて再び目を閉じる。
そして次の瞬間クレバーが現れていた。
「ユイ!!!」
ずっと探していてくれたのか、クレバーの顔からは疲労感が感じられる。
クレバーは額の汗を拭うとすぐに私を見つけ私の傍へやってくる。
私はできうる限り後ずさる。
ところがヴィレにさえぎられる。
【ユイさん!?何をしているんですか!?早く施してもらわないと!】
施すって何!?
いつの間にか出ていた涙が止まらないまま首を振る。
しかし目の前にいるクレバーが優しく両手で頬を掴む。
「ユイ、すまない。」
優しい行動に反し切なそうに言葉を発した口は
次の瞬間その結婚印にかみついていた。
久々に書きましたが、難しいですね…
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また見ていただければ幸いです!