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02

「ユイを迎えに来た。俺と結婚してください。」





ちょっと待ってちょっと待って…

意味がわからないんだけど、わけがわからないんだけど、

「お、お母さん」

「優衣ちゃんやっぱり覚えていなかったのね。結婚印を封印した仲なのに。」

ぐずぐずと泣きまねをするお母さんに呆然とする。

結婚印…!?なにそれ!?

「昔首筋に変なほくろできたって言ってたでしょ?それが結婚印よ。」

とっさに首筋を触る。

これが結婚印だったのかー!!

ってこんなことしたの全く覚えてないんだけど!!

「それよりも優衣ちゃん実はね…」

久しぶりにお母さんの真剣な顔を見たかと思うと突然家中に地震のような揺れが起こり始めた。

「なっなにこれ!?」

必死にお母さんにしがみつくがお母さんはにっこりと笑うと私を某陛下に差し出す。

すると後ろから足音が聞こえてきた。

「陛下、キサラギ嬢。もうお時間かと。」

「ああ。」

「わかってるわ。」

なんの話?わけがわからないとお母さんと某陛下の方を行ったり来たり見渡しているとお母さんが突然私のおでこにキスをする。

「お母さん!?」

「この国での結婚印は必ず結ばれなきゃならない”運命”になる。だから優衣ちゃん、あなたは行かなければならない。」

「なんでっ」

なんでお母さんがそんなこと知ってるの!?

「優衣ちゃん、ずっとあなたに謝らなければならないことがあったの。」

「おかあ、さん…?」

「ママはね、この世界の住人じゃないの。違う国の住人。今はクレバー様が治めているサルバハートの人間なのよ。サルバハートからの逃亡者。」

何を言っているのか全く分からなかった。

「私はもう行くことができない。私には呪いがかけられているから。今まではクレバー様の魔力で守られていたけれど、また逃げなければならない。だけどね、優衣ちゃん、あなたはあの国に祝福されている。だから大丈夫。」

再びおでこにキスをされる。しかし目の前が涙で全く見えなかった。

そしてお母さんがいつも肌身離さず持っていたペンダントを私の首にかけた。

「優衣、あなたにだけは幸せになって欲しい。そのペンダントが壊れない限り、私はずっと生き続ける。あなたは必ず生き続けることができる。」

ふわっとお母さんの体が宙に浮かぶ。


待って、私


「大好き、ずっと、ずっと。大好きよ。」






その瞬間に私の視界からお母さんはいなくなった。







「ユイ」

陛下が私を支えてくれるが涙が止まらなかった。

「陛下。私たちもそろそろ。」

「・・・ああ。ユイ、私たちもそろそろ行かなければならない。」

しかし私は首を振る。いやだ、嫌だよ。

「おかあさんといっしょに、いきたい。」

あんな変な人でも私の大好きなお母さんなのだ。

突然見知らぬ土地に連れていかれるなんて御免だった。

「だめだ。この運命は逃れられない。ユイ、一緒に行ってくれ。でないと…」

突然自分の体がふわっと浮かびあがった。

どういうこと!?

陛下が必死に私の方へ手をのばしてくる。

しかし


「いやだ!!!」


陛下の手を振り払う。

するとさらなる浮遊感を感じる。

そして光の中へ消えて行った。











『陛下、本当に、よろしいのですか?』

『僕はユイの事を愛している。その覚悟はできている。』

『あいしている?』

『ああ、僕はユイの事を愛している』









―し、もし?

何?

目をうっすらと開けるとり○人形が私の目の前で浮いていた。

え?り○ちゃん人形が私の目の前をういている…!?

「ぎゃああああ!!!!!」

どどどど言うこと!?

後ろには普通の…いや、とても可愛い女の子が立っていた。

「あ、あのこれっこの人形…!!!」

【人形!?違いますっ!私は精霊のヴィレですっ!】

「喋った!!!!」

もう呆然とするしかない。精霊ってあんた…まじで?

確かに目の前で小人が宙に浮かれると納得せざるを得ない気もする。

【ろい様ぁ~】

うるうると精霊は後ろの女の子の方へ向かう。

「突然行くからびっくりしてしまったのよ。えっと、大丈夫でしょうか?」

「は、はい。」

「よかったです。先ほどあちらのベンチで読書をしていたらヴィレが突然倒れている女性を見つけたと言ってくるものだから駆けつけたのです。今いる場所は私のおうちです。」

「ごめんなさい・・」

そして私は今まで起こったことを思い出した。

私、光の中に吸い込まれて、そして…

「あっあのっ!!!」

「はい?」

「ここはどこですか!?」

「どこ?サイーユ地区の…」

「地区じゃなくて国!」

「国は…サルバハートです。」

「!?」

やっぱり来てしまっていたのだ。

「あの…」

「サルバハートだあ…?知らないよ。そんなの。私を帰してよ…」

へたりと崩れると女の子が私の体をぎゅっと抱きしめてくれた。

「その、昔よく母にこうしてもらっていたんです。そしたら、安心できたから。」

「うっ…」

そして私は泣いた。

今までに起こったことへの苛立ち、これからへの不安。

全部全部詰まった涙だった。







「落ち着きましたか?」

「うん。」

目をごしごしとこするとふと我に返る。

「ごっごめん!!!見ず知らずの人なのにこんな看病なんかしてくれちゃって、ほんと、ってかあれ?なんで言葉通じてるの?」

一人で勝手にしゃべっていると女の子がくすくすと笑い始めた。

恥ずかしい。

「すいません。あなたのような元気な方を見たのは初めてで…」

「ごめん、迷惑だったよね。」

「いいえ迷惑だなんてとんでもないです。私も久しぶりに同年代の方とお話できてとても楽しい思いをさせていただけました。」

【ヴィレもっ☆おねーさんのアクアが凄く気持ちが良いから元気出ました!】

アクア?よくわからないんだけど。

「けど申し訳ないな…あ、そうだ!できることがあれば何かするよ!」

「いいえ、そんな、」

すると突然彼女はうつむいた。

「こんなに楽しい思いをさせていただけただけで十分です。」

「じゃっじゃあわかった!いっぱいおしゃべりしよう!」

私はとても一生懸命だった。

ただただ、この子を悲しませたくなかったのだ。

「あなたが寂しい時、つまらない時、おしゃべりに来る!どうかな?」

はははと苦笑いすると彼女の目から涙があふれた。

「えっごめん!!うざかったかな!?」

「いいえっ…嬉しいのです。私こんなこと言われたの初めてで…家が下級貴族だからずっといじめられていて、だから、学校にも行けなくて」

「え?」

「だからこんな風に接してもらったの初めてで…」

いつの間にか今度は私が彼女を抱きしめていた。

「よし、じゃあおしゃべりいーっぱいした後はそいつらをやっつけに行こう。だから、大丈夫。」

「・・・はいっ」

「あっそう言えばお世話になってるのに名前言ってないね。」

「そういえば。」

二人でくすくすと笑う。

「私ユイって言います。キサラギ…あ、こっちでは逆かな?ユイ・キサラギ」

「ユイ、ですね。私はロイ・ストラクスです。」

そしてお互いに握手をした。





お母さん、なんでかわかんないけど、とりあえずこの国にきちゃったよ。

某陛下に会う前に友達が出来ちゃった。

これからどうなるかわからないけど、少しだけこの国の優しさに触れたよ。




まだ納得できていないけれど、それでも今自分がいる場所を少しだけ理解した気がした。





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