01
『約束だ。僕が結婚できるようになったら、必ず、迎えに行く。』
その笑顔はとても眩しくて、けどとても悲しい笑顔だった。
世界は君のために 0
pipipipi
目覚ましの音に驚き目を覚ますとなんと7時にセットしておいたはずの目覚ましが8時だった。
そして夢を思い出す。
そうか、年に一度の悪夢の日がやってきたのか・・・
急いで下に下りると母親が元気に起きていた。
「優衣ちゃんおはよう」
にっこり笑顔のお母さんに殺意が沸いてもいいはずだ。いや、自分で起きなければならないのだけれども・・・
「お母さん!!何で起こしてくれなかったのさ!!」
「あらあ、お母さん起こしたわよ?」
「聞こえなかったよ!!悪夢なんて見るんじゃなかったー!!!」
お母さんに逆切れしながら朝ごはんを口に入れる。
ご飯が喉に詰まりそうになりながらも、2階へ上がり制服に着替え、荷物を持って玄関を開け家を飛び出す。
くそ!全部あの夢のせいだ!!!
走りながら夢を回想する。
「そっか。今日はクレバー様の…」
まさかお母さんがこんなことを呟いていたなんで思いもよらなかった。
あの夢は物心付いた時から年に一度この時期に見る夢だった。
幼い自分と知らない外国人みたいな男の子が出てきて少しだけ話をする。
そして最後に結婚を申し込んでくるのだ。
あんな男の子に会ったことあったっけ?と思うのだが、そんなことが問題ではない。
あの夢を見るとその次の日色々とついていない日になる。
初めて見た幼少時代には雨で水たまりができたところに車が通り私をびしょぬれにさせた。
ある年には階段から落ちた。起きたら病院だった。
本当にこの夢は、私を殺す気か!!!
今回も目覚ましが鳴らないし、しかもみろ。
いつの間にか犬の糞を踏んでいる。なぜ?!
今日もいろいろと覚悟をしとかなければならないなとため息をつくと高校へ向かった。
「…はあ。」
はっきり言おう。今回のついてなさは異常だ。
どうあがいてもやはり遅刻は遅刻だった。
そして昨日確かに今日の曜日の準備をしたはずだ。
しかし何故か違う教科のものばかり入れている。
体育の時間にはボールが当たり即保健室行き。
帰りには鉢植えが真上から落ちてきて危うく、本当に死ぬかと思った。
げっそりしながら家に帰る。
やっとほっとできる。やっと今日が終わる。
「ただいまー」
「おかえり、僕の可愛いユイ。」
ウキウキしながらドアを開けるといかにも王子様という格好をした男がいかにも王子様だと言うオーラをまとい私を迎えた。
一度玄関の戸を閉め再び開ける。やはりやつはいた。
「えっと…誰?」
思わず言ってしまってもいいだろう。はっきり言ってこんなキチガイ男知らない。
現代の日本でこんな恰好するやつなんている…?少なくとも私の知り合いにはいない。
髪の毛も金髪だが、こんな染めている奴なんて近くにいないし外国人も残念ながら知り合いにいない。
とにかく初対面のはずだ。
なのにどうして私の名を知っていて、私の家で私を迎えるの?
頭の中はパニック状態だが王子様(仮)はにこにこと私に中へ入るように促す。
いや、ここ私の家だから。
リビングへ行くとお母さんが座っていた。
「お母さん!!!」
あんなへんてこお母さんでも家族だから安心できる。
ついつい抱きしめてしまった。
何なのこのキチガイ男!!!早くどこかやってよ!!
目で訴えるがお母さんには全く通じていないのかニコニコしているだけだった。
「優衣ちゃんおかえりなさい!待ってたのよ?さあ、陛下もどうぞ」
「ありがとう」
やつは私が座った隣の席に座った。
ん?陛下?
隣を瞬時に見るとやつは先ほどと同じようにニコニコと笑顔だった。
「ユイ、どうしたの?」
「陛下って…?」
眉をひそめその陛下とやらに質問する。するとお母さんがティーセットを持って現れた。
「あらあ、陛下のこと覚えてないの?あれだけ求婚されていたじゃない。」
「は?」
知らないんだけどこんな男。
ますます眉をひそめると私の顔色なんて全く気にしていないのか陛下の笑顔がさらに明るくなる。
「やっと迎えにこれた。さあユイ、結婚しよう。」
やつが私の手を救うと手の甲にキスを送った。
なっなんてことを…!!!
思わずガバッと手を払う。
「なっなにすんのよ!!!突然…!!大体私あなたの事知らないっ!!!」
「まあ、優衣ちゃん。」
「キサラギ嬢、あまりユイを責めないでやってくれ。迎えに行けなかった俺が悪いんだから」
悲しそうな顔でそう言うとさらに私の方へ近づいてくる。いや、近づきすぎ…
「ユイ、俺はサルバハート王国の王、クレバー=ギルティア・・・サルバハートだ。」
え、なに途中の・・・(てんてんてん)そして何その王国名。初めて聞いたんだけど
「ユイを迎えに来た。俺と結婚してください。」
再び私の手を取り優しく唇を落とす彼。
この言葉に頭が真っ白になりながらふと朝の夢を思い出した。
『約束だ。僕が結婚できるようになったら、必ず、迎えに行く。』
え、
も、もしかして夢の中のやつってこいつ…!?
新連載です。よろしくおねがいします。
活動報告にて募集をかけております。もしよろしければ参加いただければと思います。