連載になるかもしれない、ネタ。5
連載最有力候補ノミネート作品!!(笑)
いや、本気で楽しかった。
鼻孔をくすぐるいい匂いに、くぅっとお腹が鳴く。
ふわふわのパンと、美味しそうなシチュー。
ハーブの利いた香ばしい芳香のお肉がなんとも食欲をそそる。
横目にそれらを確認して、そして・・・
金の髪に、純金を彷彿とさせる金の瞳。
高い鼻梁と形の良い唇。
ビスクドールのような美形が、目の前に居た。
「・・・・冷たい・・・」
「・・・だろうな。ワインが台無しだ」
お気に入りのワンピースの太腿あたりにシミを作った赤い液体は、ワインだったようだ。
豪華絢爛、と言う言葉がこれでもか!というほどピッタリな、だだっ広い部屋の、これまた何人座れるんだ、というぐらい無駄にデカいテーブルの上。
食欲をそそる美味しそうな芳香立ち込める食事の席に、ナゼか私は、居た。
それも、テーブルの上。
ぺたん、と座った形で、太腿にはワインの洗礼。
唯一の救いは、料理が無事、というコトだろう。
そろっとあたりを見回せば、これまた美形な面々が、驚愕をその顔にのせて、こっちを凝視していた。
「ここは、どこでしょう・・・?」
「ピラカンサの宮殿、そこの食堂だな」
「ピラカンサ・・・?」
「知らないのか?」
「知りません」
じっと見つめ合う私たち。
目が合った瞬間、ナゼだか、目の前の美形の黄金の瞳が驚愕に見開かれた。
ごくり、と固唾を飲む音が回りから聞こえた。
「あ、あの・・・ 取り敢えず、そこから降ろして差し上げては・・・?」
恐る恐る、という感じで声をかけてきたのは、ふわふわの茶色の髪の、優しげな茶金石の瞳の、可愛らしい男の子。
「あ、あぁ・・・」
男の子の言葉に我に返ったのか、目の前の金の男の両手が私の体を抱き上げた。
「あ・・・」
抱き上げられた衝撃で、被っていた帽子が落ちる。
『あーーーーー!!!!』
「っっ?!」
突然の周囲からの大音量に、びっくりして体がこわばった。
屋敷から内緒で出てきたため、顔を晒さないようにつばの広い帽子を選び、そこにに髪を押し込めていた。
その、押し込めていた髪を指さし、口をパクパクさせているイケメンたち。
――――な、なんなのぉっ?!
厳格な家柄のせいで、18年間染められることなくきた真っ黒な髪。
本当は、栗色に染めて、パーマをかけてみたかったがそれも叶わず、ストレートに伸びた腰までのロング。
無理やり帽子に押し込んでいたせいで少しクセがついているが、そこまで驚かれるほど酷い有様では無いはず。
―――で、でも、それよりもっっ
「あ、あの・・・ 降ろしてください・・・」
子供のように両脇を持たれたまま、宙ぶらりんはちょっと・・・・
「あぁ、悪い・・・」
ゆっくりと降ろされ、やっと地に足を着ける。
ホットして見上げれば、このイケメン、ものすごく背が高い!!
抱き上げられた時も思ったけど、こうして見上げてよくわかった。
私が160ちょっとぐらいだから、多分、200はあると思う。
それで、やっぱり、イケメン。
顔は前述の通り、ビスクドール並み。身体も、モデル並みに均等が取れている。
長い手足としなやかな肢体。それでいて程よく筋肉も付いているのが、抱き上げられた腕の感触でわかった。
「カッコイイ・・・・」
無意識に漏れた言葉は、静まり返った部屋の中、思いの外よく響いた。
「姫!! 僕は?!」
「きゃぁっ」
いきなり後ろから肩を捕まれ180度反転させられた。
目の前には、先ほどの可愛らしい茶金石の男の子・・・と、同じ顔の、モスグリーンの髪と、エメラルドの瞳の男の子。
―――すごい色だ・・・
「姫、僕は?! カッコイイ?!」
じっとその瞳に魅入っていたら、焦れたらしい男の子が口を開いた。
「綺麗・・・」
同じぐらいの身長のこの美少年は、カッコイイというよりも可愛い感じ。
でも、それよりも。
私は、このエメラルドの瞳がとても綺麗だったから、そう告げた。
「綺麗?」
「そう。その瞳。エメラルドみたいで、すごく綺麗」
同じぐらいの身長だから、正面から見つめられる。
だから、その美しさが良くわかった。
「えめらるど?」
「知らない? 綺麗な緑色の宝石」
「姫は、それが好き?」
「うん、大好き。私の誕生石なの」
「それも、えめらるど?」
「そう。綺麗でしょう?」
指さされたネックレスに軽く触れて言えば、大きく頷かれた。
四葉のクローバーをかたどったソレは、今年の誕生日プレゼント。
毎年、誕生石の装飾品を贈るのが我が家の慣例だ。
「こら、いい加減離れろ」
至近距離に居た緑の子を引っ張ったのは、赤い髪と鮮やかな赤い瞳の、これまた長身の美形。金の人よりも精悍な顔立ちで、身体もどこか武人のような印象を受ける。
それよりも、ルビーの最高級、ピジョン・ブラッドのような深みのある鮮やかさに目を奪われる。
「姫、ご無礼を」
赤い人の隣に立つのは、アクアブルーの髪にサファイアの瞳の、中世的な魅力のある美しい人。
多分男の人であるだろうことは、その身長で判断した。赤い人よりも少し低いが、それでも200近くある。
冷たい色にも関わらず、透明感のあるサファイアの瞳は惹きこまれそうなほどに美しい。
「まずは落ち着かれよ・・・ 姫のお召し物を汚したままにしておく気か?」
並み居るイケメンの一番後ろから声をかけてきたのは・・・・
「大天使様・・・・」
うっかり口に出した言葉だけど、高潔な雰囲気を醸し出すこの人にはそうとしか表現が出来なかった。
角度によっては多彩な色彩を放つシルバーホワイトの髪と、白い・・・パールの瞳。
最高級の真珠のような、とろりとした瞳は、まさに至宝。
「だいてんしさま?」
「大天使様。神の御使い。美しくも尊い、天上人・・・」
近づいてきた白い人は、180ぐらい。
少し見上げて告げれば、目を細めて笑った。
「これは奇なことを。神の御使いは姫でしょうに」
「・・・・私・・?」
――― ・・・あれ?
しかし、何でさっきから、名前を呼ばれてるんだろう・・・?
私、まだ名乗ってない、よね・・・?
黒髪黒目は、統べる者の象徴で。
『全能の姫』とか呼ばれちゃって。
このイケメンたち、実は精霊の長だったりして。
なんていう設定もあったりして。