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サザンヒルズ国年代記  作者: 白猫黒助
変わり目
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杞憂?

 二人の話が終わっても、聞いていた三人は驚きで声も出なかった。

 ようやくデノーテが声を上げた。


「精霊は自分のことを”一の兄”と呼ばれていて、元はシャンツ家の丘にいたとおっしゃっていたと?」

「それに、大きな力を持った精霊は六人いたとおっしゃってました」


 ファーナが答えると、マルセルが続けた。


「少なくとも、南の国の四つの丘に一人づつ精霊がいたらしいことはわかったわ」

「じゃ、モードネス家の墓所の番人もその一人だったのね」

「シフォン家では見たことはないのだけど、もしかしたらあの尖塔の石畳に何か秘密があったのかしら」

「私が尖塔に近づけなかったのは、そのせいだったのかも知れない」


 デノーテは合点がいったようだ。

 ジャンヌも口を挿む。


「あの石畳の上にいると、気持ちが癒える気がしましたもの」

「それに、花や野菜がすばらしいのも関係あるのかも知れませんね」

「シバー家は、あの癒しの泉が怪しいですしね」


 ミッシェルもシバー家を調査したときのことを思い浮かべて言った。

 それを聞いているマルセルの顔は晴れない。


「それでも後二人いるのかぁ。何の手掛りも無いので、雲を掴むような話だわ」

「”一の兄”さんは西の森の泉で生まれたと話されていたから、そこにはまだ誰かおられるかも知れませんね」


 ファーナがそう言うと、ミッシェルが続ける。


「南の森には大きな木の下に精霊が住んでいると言う伝説がありますよ」

「でも、あの木の所まで行けた人はいないと言うじゃない」

「ええ、なぜか森に入ってもまた元の所に戻ってしまうんですよ」


 その会話を聞いていたマルセルが口を開いた。


「まだ小さい時にね、南の森を散歩したことがあるのよ」

「そこで道を見つけたんだけど、入っていけなかった」

「座るのに丁度いい石があったのを覚えている」


 それを聞いていたジャンヌは、森でクマに襲われたときのことを思い出して身震いした。

 あの時トールに助けてもらえなかったら、今の自分はいないからだ。


「そこなら知っています。いつもトールと会っていた所だから」

「でも、そんな道なんて無かったですよ」


ーー精霊が見える人が少ないように、その道も見えなくなっているとしたら、精霊が何かしているのかも知れないわね。 

ーー全く、次から次へと問題が増えてくるわね。


 マルセルは頭が痛くなるのを振り切るように、話を打ち切ることにした。


「それはそれとして、目の前のことから少しづつ片付けるしかないでしょう」

「そうだ、デノーテ義母さま。今回のことで、私もファーナの義母となる決心をしました」

「あら、ファーナには三人も母が出来るのね。いいわねえ」


 デノーテが思いのほか喜ぶ様子を見せた。

 自分の精霊の力でマルセルとファーナをどこまで守れるか、デノーテは不安で仕方なかったのだ。


「ファーナ、あなたはこれからが大変なのよ。頑張りなさい」

「はい。ところで話は変わりますが、私の家族を全員集めて、お茶会をしたいと思うのです」

「あら、何か特別なことでもあったのかしら?」

「ほら、一月後に海の国から商人がやってくるでしょう?」

「皆さん、当然この屋敷にお集りになるでしょうから、その時に」


 それを聞いたマルセルとジャンヌは喜びの声を上げる。


「ああ、もうそんな季節かぁ。あの新鮮な魚が届くのね」

「貝やエビも持ってくるし。ああ、待ち遠しいわ」


「不思議ですよね。他にも商人は来るけれど、どこも干した物しか持って来ないですからね」


 一人冷静なミッシェルが首を傾げる。


「海の国から南の山の麓を東に迂回して、東の村から湖沿いに南の森の脇の道を抜けて来ないといけないと言ってたから、ひと月は掛かるものね」

「東の村から船は使えないのかしら?湖を突っ切れば直ぐのような気がするけど」

「東の湖には風が強く吹く所があって、どんな船も沖に出ると東の村の方に押し流されると聞くわ」

「西の湖も、南からの風が強くて船を使えないと聞いてるわ」

「だから湖岸に沿って運ばないといけないとかで日数が掛かるから、新鮮な物を運ぶのは難しいとか」

「でも、あのサンクス商会だけは、まるで取りたてのような魚や貝を運んで来るのよね」

「お陰で、私たちは喜んでるけどね」


 彼女たちがわあわあと騒いでいるのを横目で見ていたファーナ女王が釘を刺す。


「ですから、彼らが海の国の美味しいものを持ってきたときにお茶会を開くのです。皆さん、忘れないでおいてくださいね」




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