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サザンヒルズ国年代記  作者: 白猫黒助
最強の聖女たち
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トリオの出会い

 シャンツ王家の皇太子として生まれたジョセには悩みがあった。

 ジョセにはファーナという妹がいる。

 ファーナが生まれた時、光の粉が盛大に舞い、シャンツ家の次期王候補はファーナだと誰しもが確信していた。

 ジョセは絶望し、自暴自棄になって我が儘な生活を始め、使用人や家来に辛く当たるようになってしまった。

 特にファーナを見かけたときは、些細なことで大声で罵倒したり、近くに寄ってくると小突いたりして虐めていた。

 そばにいたお付きの者が身を挺してファーナを庇うと、持っていた剣を振り回して怪我をさせることもあった。

 そんな光景を見かねた王と王妃は相談して、ジョセを早めに王立学園に行かせることにした。

 寄宿制の王立学園で少しは礼儀を学んでくれたらと思ったのである。

 王立学園に入ったジョセは、寄宿舎でシフォン家のアスク、元ウイルドン家のシャークと同室になった。


「僕はシャークだ。三人の中では年長のようなので、寮規則により、部屋のリーダーを務めさせてもらおう。いいね」

「はい」

「じゃ、君たちも自己紹介をしてくれたまえ」

「アスクです。7歳になります。シフォン家の長男です」


 ふくれっ面をして黙っているジョセにシャークが促した。


「君は?」

「ジョセ。7歳。シャンツ家の皇太子だ」

「ああ、あなたが皇太子ですか。どうぞ、これからよろしくお願いします」


 ジョセが皇太子と知ると、シャークはジョセにすり寄っていった。


「シャーク、お前はどこの家の者だ?」

「ウイルドン家の遠縁の者です」

「ああ、ウイルドン家の。あそこも災難であったと聞いているぞ」


 シャークの遠縁であるウイルドン家は、代々王家の宰相をやっていた。

 信頼も厚く国の重鎮として皆から認められていたのだが、今の王の変わり目の混乱の中で、宰相の地位を狙う他の貴族たちの陰謀にはまってしまった。

 そして罪を問われ、廃家とされてしまったのだ。

 すぐに無実であったことが判明して廃家は取り消されたのだが、政敵の仕打ちはすさまじく、直接の血筋の者は皆行方不明となってしまい、再興は叶わなかった。

 シャークが、かろうじて遠い親戚であることがわかったが、ただそれだけで地位の高かったウイルドン家を継がせることは憚られた。

 何か名誉なことを成せば考えようということになり、まずは王立学園に入学させて教養を身に着けさせることにしたのである。

 何か功績を残さないとウイルドン家は継げないことはシャークにもわかっていたが、そんな機会がそう簡単にあるわけでもない。

 焦っていたところに、皇太子のジョセが同室になったのだ。

 ジョセと仲良くしていれば、ウイルドン家再興の旗頭になれる可能性が強くなると計算したのである。


 アスクはそれまでデノーテの盲目的な愛に包まれて育ってきた。

 そのため我が儘もやり放題で、屋敷の外の人と付き合うことなど全く無かった。

 特に、マルセルとジャンヌがシフォン家の庭にいることが許せなかった。

 マルセルは、異母兄妹と言えるにも拘わらずである。

 もしマルセルが五歳になって”聖女の証”を得たなら、マルセルがシフォン家の当主になる可能性がある。

 母のデノーテが、アスクを抱いて泣きながら愚痴を言っていたのをはっきり覚えていた。


「マルセルが当主になったら、私たちはどうしたらいいのかしら」

「アスク、私は最後まであなたを守るわよ」


 アスクは、母を泣かせるマルセルが憎かった。

 それからは、事あるごとに嫌がらせをするようになった。

 マルセルやジャンヌは気にしていない風だったが、野菜のことで、さすがにシフォン家に関わる問題を引き起こしたことは無視出来ず、デノーテはバッセにアスクを王立学園に入れるよう頼んだのである。


 部屋が一緒になったジョセが皇太子だと知ったアスクは、ジョセに王になってもらい、自分がシフォン家の当主になれるよう尽力してもらえればと考えた。


 同室の二人が、ジョセに対して臣下のような行動をとり始めたので、ジョセは有頂天になっていった。


 ジョセは長男で皇太子と言われてはいるが、その地位を維持するには他のどの家よりも強力な精霊の力を後ろ盾に持つ必要があった。

 それには他家の強力な”聖女の証”を持つ娘を娶る必要があるのだが、側近の話だと、まだ国内にはその条件に合う娘は見つかっていなかった。

 それにも関わらず、シャークとアスクから受ける心地よい扱いに、自分が王になると増々確信していったのである。




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