✒ 鬼人、現る? 1
──*──*──*── 夕刻
マオ:厳蒔磨絽
「 何で≪ 平安京 ≫に《 カジノ 》を作らせたんだよ… 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 良いだろ、別に。
楽しめただろ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そりゃ楽しめはしたけど── 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 ≪ 平安京 ≫でもキノコンは式神なのね。
キノコンがホストしてる《 カジノ 》なんて斬新だったわ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 何より健全に遊べる《 カジノ 》で安心したよ 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 不正はキノコンが許さないからな。
《 カジノ 》の売り上げで《 児童養護施設 》の運営もしてるんだ。
身寄りの無い子供を集めて、キノコンが調教してる 」
マオ:厳蒔磨絽
「 調教を “ きょういく ” って読むなよ… 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 身寄りの無い孤児を拐って来て、洗脳してる──って事でしょ。
何させるつもりなのよぉ~~ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 キギナ、言い方! 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 間違ってはないでしょ~~ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 確かに目的が気になるな。
表向きは良い事してるけど、所詮は建前だもんな…。
本来の目的は何だよ? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 そんなのキノコンに聞けよ。
元締めをしてるキノコンは《 丗呂ッ夛商会 》に居るからな 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 《 丗呂ッ夛商会 》って《 セロッタ商会 》の事よね?
捻りの無い名前ねぇ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 漢字を当てただけだろ。
オレ達には分かり易いけどさ──。
折角だし行ってみるか? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 《 丗呂ッ夛商会 》の本部は《 厳蒔屋敷 》の中に有るんだ。
支部は東西南北に一軒ずつ在るがな 」
マオ
「 支部が有るんだ? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 《 駆け込み相談所 》も兼任していて、平民達に支持されている。
キノコンが上手くやってくれてるって事さ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ≪ 平安京 ≫でもキノコンはすっかり溶け込んでいて身近な存在になってるんだな 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 何か起きたら《 丗呂ッ夛商会 》の支部に駆け込めば良いのね! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ≪ 平安京 ≫でキノコンが経営してくれてる施設の地図をキギナに渡した方が良いな。
《 厳蒔屋敷 》に帰ったらキーノに用意してもらうよ 」
日も暮れている事も有り、オレ達は《 厳蒔屋敷 》へ帰る事にした。
──*──*──*── 橋の手前
キギナ:厳蒔喜姫
「 大きな橋ねぇ~~ 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 立派な橋だろ。
この橋を渡った先に《 貴族院 》と《 陰陽院 》が在るんだ。
エリートしか入れない区間さ 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 嫌な響きよねぇ~~。
エリートってぇ~~! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 オレ達には関係無い場所だよ。
この橋を渡るのは貴族くらいだし。
シュンシュンは陰陽師だから渡る事も有るだろうけど── 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 渡るかよ…。
《 陰陽院 》の奴等とはなるべく関わりたくないんだ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 へぇ?
シュンシュンは《 貴族院 》に勤めてる陰陽師が苦手なのか? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 奴等は低レベルで幼稚だからな 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 そりゃ霄囹に比べたら低レベルで幼稚に決まってるでしょ!
人間なのよ~~ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ははは…………。
──何だ?
空気が変わった!? 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 嫌な気配がするわ!
人間じゃないわね 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 日暮れになると人が “ 行方不明になる ” っていう予兆か? 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 人が行方不明になる?
そう言えば《 カジノ 》で客が噂してたわね 」
マオ:厳蒔磨絽
「 あんな奴、居たかな? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 あれは人間じゃない 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 妖怪ね!
≪ 和國 ≫に来て初めての遭遇ね★ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 キギナ、死神の武器って魂を狩るのに使うんだよな?
怪異や異形も斬れるのか? 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 本来は “ 狩る ” じゃなくて “ 刈る ” って言うのよ。
人間狩りしてるから “ 狩る ” って方を使っちゃってるけどね! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 へぇ~~そうだったんだな 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 怪異も異形も斬れるわよ。
但し、魂は刈れないの。
怪異や異形の魂は特殊だから担当部署が違うのよね 」
マオ:厳蒔磨絽
「 へぇ?
怪異担当とか異形担当とか在るんだ? 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 其処迄は知らないわ。
私は人間担当だから、他部署の事はサッパリなの 」
マオ:厳蒔磨絽
「 兎に角、キギナも戦えるって事だな 」
オレは腰に提げてる魔具刀の柄に手を添える。
霄囹:厳蒔霄囹
「 彼奴、僕等を狙ってるらしい。
結界を張ってやがる。
初めて見る結界だな 」
マオ:厳蒔磨絽
「 初めて?
結界に種類なんて有るのか? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 そりゃ、素人に結界の区別なんて付かないよな。
結界ってのは本来、用途に分けて使い分けるもんなのさ。
色んな種類が有って覚えるのが面倒なんだ。
僕は天才だから、大抵の事に対応したオールマイティーな結界を作って使ってるがな。
僕は凄んだぞ! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そんなシュンシュンが初めて見る結界なんだろ。
破れるのか? 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 やってはみるが、手っ取り早いのは結界を張った張本人を倒す事さ。
マオ,キギナ──、彼奴を僕に近付けるなよ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 分かった 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 良いわよ! 」
キギナは死神の鎌を何も無い空間から出すと、背中から黒い翼を生やした。
死神の翼は衣服を破る事なく、透けて出ている。
不思議な現象だ。
オレは鞘から魔具刀を抜いて構える。
離れた場所に突っ立っている人の姿をした妖怪は、全身をユラユラと揺らしながら、少しずつ近付いて来ている。
向こうに戦う気は無いのか??
マオ:厳蒔磨絽
「 オレ達の存在に気付いてる筈なのに何で向かって来ないんだ? 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 近付いては来てるわよ。
此方から行っちゃいましょうよ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 下手に近付くのは危険だ。
先ずは魔法で攻撃してみよう。
効果が有れば遠距離攻撃が出来るしな 」
オレは元素魔法を発動させる。
先ずは単体攻撃の元素魔法だ。
火,水,風,土,雷,氷の6属性を合わせて敵に放った。
元素魔法は敵に命中し、後ろに吹っ飛ぶと背中が地面に付く。
効かない訳じゃないみたいだけど、ダメージを負わせる事は出来たのかな?
元素魔法が当たるなら、魔具刀に元素魔法を纏わせて攻撃する事も可能って事だ。
キギナ:厳蒔喜姫
「 やったわね!
吹っ飛んだわよ!
魔法が効く妖怪なのね! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうみたいだな。
起き上がらないみたいだし、トドメを刺しに行くか 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 賛成よ★
バラバラに斬り刻んで殺りましょ★ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 斬り刻むのは無し!
彼奴の死体はキノコンに調べてもらんだ 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 分かったわよ~~。
でも、首と胴体は斬り離すでしょ? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そだな。
念の為に斬り離すよ 」
キギナとオレは地面に倒れた敵に近付く。
敵はピクリとも動かない。
キギナとオレは互いに顔を見合わせた後、魔具刀を使って首と胴体を斬り離した。
首はコロリと転がる。
胴体からも首からも血が出て来ない。
どゆことだよ!?
マオ:厳蒔磨絽
「 おかしい……。
どんな妖怪だって斬ったら血が吹き出す筈なのに──、コイツからは血が出ないぞ 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 別に良いんじゃないの。
倒せた事には変わりないんだから。
それより結界よ。
どうなったのかしら? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうだった!
キーノ、居るか? 」
分身体:ミニマムキーノ
「 はいですエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 やっぱり、監視してたんだな 」
分身体:ミニマムキーノ
「 御免なさいですエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 居てくれて助かるよ。
コイツを回収して調べてほしいんだ 」
分身体:ミニマムキーノ
「 畏まりましたエリ!
隅から隅まで調べ尽くしますエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 うん、頼むよ 」
敵の回収と諸々の事は忍んでオレ達を監視していたミニマムキーノに任せるとして、オレはキギナと一緒にシュンシュンの傍へ戻る。
ミニマムキーノなら結界もキノコン砲で壊しちゃえそうな気がするけど──、先ずはシュンシュンの話を聞こうと思う。
シュンシュンは結界に御札を貼って何かをしている。
マオ:厳蒔磨絽
「 シュンシュン、結界は破れそうか?
彼奴は倒したよ。
今、ミニマムキーノが回収してくれてるんだけど── 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 この結界は僕の闇呪術を使っても破れない。
彼奴が張った結界じゃない──って事だ 」
キギナ:厳蒔喜姫
「 じゃあ、私達は結界から出られないって事ぉ?
嫌なんだけど! 」
霄囹:厳蒔霄囹
「 黙ってろ。
キーノ、この結界を破れるか? 」
分身体:ミニマムキーノ
「 この結界はボクにも破れませんエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 えっ!?
キノコン砲でも駄目なのか?
どうするんだよ、このままじゃ帰れないぞ 」
分身体:ミニマムキーノ
「 困りましたエリ 」
ミニマムキーノの顔を見る限り困っている様には見えない。
何か策が有るんだろうか?
分から~~んっ!!
キギナ:厳蒔喜姫
「 はぁぁぁあん!?
そんなの困るんですけどぉ!!
何とかしなさいよぉ! 」
分身体:ミニマムキーノ
「 今、分身体が来てくれますエリ。
暫く御待ちくださいエリ 」
ミニマムキーノは至って冷静だ。
大丈夫なのかも知れない。
オレ達はキノコン達の到着を大人しく待つ事にした。




