✒ 白熱? 囲碁対局
パチ…パチ…パチ…パチ──。
オレの左隣から碁石を打つ音が聞こえる。
弓弦さんと幻夢さんが交互に打っている音だ。
囲碁棋士の頂点と言われる “ 本因坊 ” として囲碁界に君臨していた玄武さんから引き継ぐ形で “ 本因坊 ” となり、玄武さんよりも長く囲碁界の頂点に君臨していた弓弦さんは流石だと思う。
幻夢さんから打たれた後に次の一手を考え込んでしまうオレとは違って、すかさずパチリ──と碁石を盤上に打っているからだ。
空いている盤上の何処に打てば良いのかを瞬時に判断が出来るなんて──、恥ずかしいけれどオレには無理だ。
セロに鍛えられているにも関わらず、オレは何処に碁石を打てば最善の一手になるのか、サッパリ分からない。
セロが此処に居たら、どんな顔で──、何を思いながら盤上を見るんだろう……。
幻夢さんとの対局が終わった後が恐怖で堪らない。
セロが居なくて良かったと心底思う。
弓弦さんは手を休める事なく、パチ…パチ…パチ──と力強く打ち続けている。
弓弦さんと幻夢さんが打ち合っている盤上では、黒石の弓弦さんが押され気味だった。
それでも打てる場所が有る限り、弓弦さんは諦めない。
めげずに食らい付いて打ち続ける。
真剣な気迫が右隣に座っているオレにもビシバシと伝わって来るから、一寸だけ弓弦さんが恐い──。
対する幻夢さんは嬉しそうにニコニコしながら打っている。
余裕綽綽のよっちゃんって感じで──、弓弦さんに対して全く脅威を感じていないのが丸分かりだ。
それだけ幻夢さんも遥かな高見に居るって事だ。
キノコンとの対局で勝てるくらい強いけれど、それでも絶対的な強運で無敗を叩き出して記録を更新中のセロには到底勝てないでいる。
幻夢さんはセロに勝てない事に対して “ 悔しい ” とは思わないらしく、自分を負かしてくれる強者のセロを崇拝している。
自分を超える絶対的な覇者が居てくれる事で、精神が安定して平常心を保っていられるらしい。
早い話が幻夢さんもオレと同様、セロに依存しちゃってる訳だ。
依存仲間って事だから、親近感が湧いちゃう。
主人だからって理由だけじゃなくて、依存仲間として親切にしてくれているなら嬉いんだけどな……。
いけない,いけない──。
弓弦さんの盤上を見ている場合じゃなかった!
オレも次の一手を打たないとだ。
オレの盤上は未だスッカスカだから、何処にでも自由に打てる選り取り見取り状態だ。
マジで何処に黒石を置いたら良いんだろう?
何処に置くのが正解なんだろう??
セロと打つ時には、直感に頼って碁石を置いている。
オレの直感は何処に「 置け 」と言ってるだろうか?
……………………彼処か!
オレは直感を信じて、幻夢さんに近い場所へ黒石を打つ。
オレが打った場所を見た幻夢さんの目付きが変わった!?
ゾクリ──と背筋に悪寒が走った──様な気がした??
獅聖幻夢
「( どうやら私は主人殿を見誤っていた様ですね。
セロ殿が主人殿に一目置いている意味が解りました。
私ですらも臆し、見送る場所に打つとは──。
主人殿に敬意を払うべきですね ) 」
ニコニコしていた幻夢さんの顔から笑顔が消えた──。
少し間を置いていた幻夢さんが盤上に白石を打つ。
パチンッ──と気合の入った強い一手だ。
幻夢さんが恐い。
幻夢さんが打った一手は、まるでセロみたいだ。
何で急に幻夢さんは打ち方を変えちゃったんだろう??
オレ…………変な所に打っちゃったのかな??
打ったら駄目な場所に打っちゃたのかな??
碁石を持つオレの指は震えている。
考えるんだ!
何処に打つべきなのか、ちゃんと考えないと──。
ニコニコな幻夢さんが戻って来てくれる様にぃ~~~~!!
一体何処に──………………あっ、彼処だっ!!
オレは直感を信じて、黒石を打つ。
すると直ぐ様、幻夢さんが打って来る。
返しが速いよ!!
何処に打てば良いのか迷ってしまう。
オレはまた打つ場所を間違えてしまったんだろうか……。
オレが打てば打つ程、幻夢さんは恐さを増している──様に感じる。
相手に対して敬意や思い遣りを感じていたのに──完全に消えてしまっている!?
幻夢さんは全力でオレを潰しに掛かって来ている様に感じるんだけどぉ!?
マオ:厳蒔磨絽
「 …………あ……ありません………… 」
獅聖幻夢
「 有り難う御座います。
マオ殿には驚かされました。
ついつい熱が入ってしまいました♪ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ついつい?
オレを全力で潰そうとしたよね? 」
獅聖幻夢
「 まさか!
私はマオ殿の成長に歓喜していただけです(////)
マオ殿は私が無意識に避けてしまう場所へ打ち続けていました。
マオ殿の果敢さに私の心は打たれましたよ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そ…そうなんだ??
オレはまた駄目な場所に打っていたのかとビクビクしてたよ 」
獅聖幻夢
「 またまた、マオ殿は冗談が御上手ですね 」
冗談じゃないんだけどなぁ~~。
でも、優しい幻夢さんに戻ってくれたから良かった(////)
オレ的にはピリピリしてる囲碁って好きじゃないな……。
獅聖幻夢
「 ささ、マオ殿。
もう一局、打ちましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 オレは幻夢さんと弓弦さんの対局を見ていたいかな~~ 」
獅聖幻夢
「 そう言わずに。
眷属に遠慮は無用ですよ 」
遠慮なんて欠片もしてないんだけどな……。
幻夢さんはオレと打ちたくてウズウズしているみたいだ。
オレは弓弦さんにも勝てた事がないんだけどな……。
幻夢さんは諦めてくれそうにない。
仕方無いから諦めて、もう一局、打つ事にした。
因みに弓弦さんはオレより多く、幻夢さんと対局をしているみたいだ。




