✒ いざ、貴族院へ 3
厳蒔弓弦
「 [ 東対 ]からは[ 寝殿 ]へ入れるのか? 」
獅聖幻夢
「 いいえ、入れない様にしていますよ。
キギナ殿は賑やかですから、透渡殿と渡殿の中央には、通れない様に仕切り板を立てています。
キノコン殿にしてもらいました 」
厳蒔弓弦
「 賢明な判断だな。
半分で仕切るとは、幻夢も中々優しいな 」
獅聖幻夢
「 嫌ってはいませんから。
マオ殿,弓弦、昼食は[ 中島 ]で頂くのはどうでしょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 うん!
[ 庭園 ]を眺めながら[ 中島 ]で食べたい! 」
獅聖幻夢
「 ではキノコン殿へ伝えますね 」
幻夢さんが何かをするとパッと式神が現れた。
式神
「 お呼びですか、主人様 」
獅聖幻夢
「 昼食を3名分、[ 中島 ]で頂く事にしました。
キノコン殿へ伝えて来てくれますね 」
式神
「 畏まりました 」
返事をした式神の姿がパッと消える。
幻夢さんの式神は人型をしていて喋るんだな。
パッと現れてパッと消えるなんて、まるで手品みたいだ。
マオ:厳蒔磨絽
「 昼食にキギナを誘わなくて良かったのかな?
今からでもキギナの分を頼んで来よっか? 」
何でキギナの事を忘れていたんだろう。
主人なんだから、キギナの事を忘れたら駄目なのにな──。
仲間外れにしたらキギナも可哀想だし?
厳蒔弓弦
「 呼ぶのか? 」
獅聖幻夢
「 キギナは呼びませんよ。
貴族生活の体験中ですから。
私達は邪魔をしない様に距離を置いて過ごしましょう 」
厳蒔弓弦
「 それが良いな 」
幻夢さんの言葉に対して、弓弦さんは「 うんうん 」と頷いている。
幻夢さんも弓弦さんも、どうやら必要以上にキギナとは関わり合いたくないみたいだ。
幻夢さんったら、さっきは「 嫌ってる訳じゃない 」みたいな事を言っていたのに──。
昼食の時間になる迄、時間が有るから3人で[ 庭園 ]を見て回る事になった。
チラホラと[ 庭園 ]で作業をしているキノコンの姿を見掛ける。
植物に囲まれながら土いじりをしているキノコンの姿は実にイキイキしていて楽しそうだ。
≪ 日本国 ≫では見掛けない草や花も多く見られる。
似ている草や花も有るけど、名前が違っていたり、毒を持っていたり、素手で触ったら駄目な植物も余裕で植えられているから≪ 和國 ≫の方が物騒に感じる。
《 獅聖邸 》に人間は居ないから特に問題は無いんだろうけど──。
マオ:厳蒔磨絽
「 毒を持っていたり、素手で触れない花の方が綺麗なのって不思議だよな…… 」
分身体:キノコン
「 人間には害でもマオ様に害は有りませんエリ。
好きなだけ愛でてくださいエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 有り難な 」
幾ら害が無いとはいえ、毒を持つ花を愛でる趣味はオレには無い。
セロなら喜びそうだけどな……。
毒花を集めて作ったブーケをプレゼントしたら喜ぶかな??
何はともあれ[ 庭園 ]の手入れをしているキノコン達を見てると心が癒されるぅ~~♥️
“ 可愛い ” と[ 庭園 ]のコラボレーションは正義だと思う!
弓弦さんも幻夢さんも[ 庭園 ]を楽しんでいるみたいだ。
──*──*──*── 正午
キノコン達が準備をしてくれた後、3人で[ 庭園 ]と[ 池 ]を眺めながら[ 中島 ]で昼食を済ませる。
昼食に出された料理は、キノコン達が腕に縒りを掛けて作ってくれた御馳走だった。
オレの為に張り切って作ってくれたらしい。
昼食が終わったら、食後の運動に──と蹴鞠遊びを体験した。
蹴鞠も貴族の嗜みの1つらしい。
蹴鞠は上級貴族が楽しむ高貴な遊びで、大会が開かれる程に浸透しているみたいだ。
何でも毎年開催される蹴鞠の大会を帝も観賞を楽しみにしていて、“ 天皇杯 ” なんて厳かな名前が付けられているらしい。
幻夢さんは帝から声が掛かった時には、“ 天皇杯 ” の前座として舞いを披露する事も有るそうだ。
帝の囲碁の指南役,水墨画の講師も担当していて、舞いも踊れるなんて多才だよな。
鞠を地面に落とさない様に隣の人へ上手に渡す様に蹴るんだけど、本来の蹴鞠には細かい決まりが有るらしい。
今回は細かい決まりを気にしないで鞠を蹴る。
幻夢さんは慣れているのか上手い。
優雅と言うか──、上品と言うか──、鞠を蹴っているのに高貴な気品が漂っている。
弓弦さんもオレと同様に蹴鞠に苦戦している。
隣へ渡す為に蹴るって案外難しい。
サッカーボールを使うボール遊びなら余裕で出来るんだけど、蹴鞠には何回も失敗している。
弓弦さんも苦戦していたけど、オレより先にコツを掴めたみたいだ。
オレも頑張ってコツを掴むぞ!!
結局、夕暮れまで蹴鞠遊びは続いた。
夢中になっていたから、キノコンが声を掛けてくれなかったら暗くなる迄、続けていたかも知れない。
夕食は[ 寝殿 ]で食べる事になった。
夕食の料理もキノコン達が張り切って作ってくれた。
就寝する迄に時間が有るから囲碁を打つ事になった。
幻夢さんが弓弦さんとオレを相手にして打ってくれる。
幻夢さんと打つのは久し振りだ。
幻夢さんの打ち方は、セロとは全然違った。
強いんだけど、その強さの中には柔らかさと言うか──、優しさと言うか──、対局相手に対する敬意や思い遣り──みたいな “ 何か ” を感じるんだ。
セロと打っていても感じられない “ 何か ” が幻夢さんには有るみたいだ。
オレの棋力では幻夢さんに勝つ事は出来ない。
それを踏まえて、幻夢さんは主人のオレに対して手加減をしてくれている──って事だろうか?
勝たせてくれたりするのかな??
オレに合わせて手加減をしてくれるセロも優しいとは思うけど、打ち方は鋭く刺して来る様な感じなんだ。
上手くは例えられないけど……、幻夢さんみたいに相手に対する “ 尊重 ” や “ 敬意 ” や “ 思い遣り ” なんてモノは欠片も感じられない。
静かに隅へ追い込んで、逃げ道を絶ち切った所で、心の臓を深々と突いてトドメを刺すみたいな──。
オレより棋力が高くて強い弓弦さんですら、セロと打ち合う事を躊躇するくらいなんだから、余程なんだと思う。
シュンシュンも子供みたいに駄々を捏ねて嫌がるし、逃走しちゃうもんな!
だけど、玄武さんと幻夢さんはセロと打てる事を心から喜んでいるんだから、オレには理解が出来ない。




