⭕ 秘密のキギナ
──*──*──*── 翌日
朝食を終えるとキギナは、さっさと部屋へ戻ってしまう。
弓弦さんとオレが出掛けた後も、昼食の時しか部屋から出て来ないらしい。
食事の時間以外はずっと部屋に籠りっきりなんだとか。
幾ら何も心配だな……。
引き籠るのは勝手だけど、少しでも良いから日向ぼっこでもして、日光を浴びてほしい。
全くキギナは、部屋に籠って何してんだか──。
オレは久し振りにキギナの部屋の前に立つ。
襖に耳を近付けてみるけど、何の音もしない。
キギナは部屋に居ないのか??
もしかして、こっそりと《 厳蒔屋敷 》を抜け出して外出でもしてるのかも??
キギナには悪いと思いながらも、オレはキギナの部屋の襖の凹に指を掛ける。
今回は部屋に籠りっきり眷属が心配で堪らない主人の特権を行使して、襖を思いっ切りを開けた!!
──*──*──*── キギナの部屋
マオ:厳蒔磨絽
「 キギナ、居るか? 」
襖を開けるとキギナが、木製机に向かって “ 何か ” をしていた。
熱心に “ 何を ” しているんだろう??
オレの声にも気付かないみたいだ。
オレはキギナの背後から木製机で何をしているのか覗いてみる。
木製机の上には真っ白い紙が置かれている。
キギナは熱心に絵を描いているみたいだ。
意外と上手いじゃんかよ。
慣れた手付きで絵を描いている。
頭の中にイメージした構図(?)を走り描きしてるみたいだ。
綺麗な線で描かれている絵も数枚有る。
マオ:厳蒔磨絽
「 もしかして……漫画を描いてるのか?? 」
思わず声を出してしまった!
キギナに気付かれてしまう。
勝手に部屋に入って、漫画を描いているのを背後から覗いてる事がバレて怒られる!!
だけど、キギナは余程集中しているのか、オレが呟いてしまった言葉も聞こえて無いみたいだ。
セーフぅ~~~~。
取り敢えず、キンキン声のキギナにキャンキャン煩く責められる事は無いみたいだ。
キギナが熱心に描いている用紙には、男の絵が描かれている。
裸同士で何かをしようとしているみたいだ。
数日前の衝撃的な依頼が脳裏に蘇る。
鮮明に蘇った記憶が、オレの脳裏で勝手に上映会を始めた。
思い出したくないのに脳内でリピートされる。
キギナに描かれている裸の男達も、尻穴に凶器を突っ込まれて激しく動かされたりする行為の描写が描かれるんだろうか……。
背筋に悪寒が走る。
オレは物音を出さない様、慎重に “ そぉ~~~~と ” キギナの部屋から出た。
どうやら、最後までキギナには気付かれずに済んだみたいだ。
ホッと胸を撫で下ろしたオレは、[ キギナの部屋 ]から離れた。
[ 玄関 ]へ向かうと出掛ける仕度を済ませた弓弦さんが待っていてくれた。
草履を履いたオレは、弓弦さんと一緒に[ 玄関 ]を出た。
──*──*──*── 退魔仲介所
《 退魔仲介所 》に到着すると、出入り口でキノコンが「 おかえりなさいませエリ 」と笑顔で出迎えてくれる。
キノコンが玄関戸を開けてくれると《 退魔仲介所 》中は退魔師でごった返していた。
こんなに退魔師が居たんだ……。
マオ:厳蒔磨絽
「 凄い数だね、弓弦さん… 」
厳蒔弓弦
「 《 退魔仲介所 》に退魔師が押し掛けるとは珍しい事も有るものだな 」
マオ:厳蒔磨絽
「 どうしたんだろう??
何か慌ててるね 」
厳蒔弓弦
「 キノコンに事情を聞いてみるか。
キノコンなら大体の把握をしているだろう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうだね 」
名簿に名前を書いた後、[ 座敷 ]に移動する。
[ 座敷 ]の近くには割烹着を着たキノコンが忙しなく動いている。
動いている割烹着キノコンは生き生きしていて実に楽しそうだ。
弓弦さんとオレは、草履を脱いで[ 座敷 ]に上がる。
掘り炬燵に足を入れて、座布団に腰を下ろして座ると割烹着キノコンが手拭き用のオシボリを持って来てくれた。
オレは割烹着キノコンに話し掛けた。
割烹着キノコン
「 退魔師が多い理由ですかエリ? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 うん。
こんなに退魔師が居るのは初めて見るからさ── 」
割烹着キノコン
「 依頼中の退魔師が “ 何者か ” に襲われましたエリ。
別の依頼を終えた退魔師が、首なし死体を発見しましたエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 えっ?
退魔師が襲われた??
首なし死体!? 」
割烹着キノコン
「 退魔師の犠牲者は1人では無かったですエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 えっ?
他にも居たのか? 」
厳蒔弓弦
「 キノコン、詳しい事を知っているなら聞かせてくれ。
退魔師を襲った輩の情報は上がって来ているのか? 」
割烹着キノコン
「 現在、諜報員が調査中ですエリ。
真相が判明したら壁に貼り出されますエリ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そっか。
それ迄は待ちか…… 」
弓弦さんとオレは、メニュー表を見て、お茶を注文した。
厳蒔弓弦
「 退魔師を襲そい、尚且つ殺せる奴は、そう居ない 」
マオ:厳蒔磨絽
「 確かに……。
1人で怪異を退治する事が出来る退魔師だし、強いのは間違いないよね。
怪異を倒せるくらい強い退魔師を殺せる奴って言えば……陰陽師?? 」
厳蒔弓弦
「 確かに、退魔師試験を合格した陰陽師も居るからな。
式神を使えば可能かも知れない 」
マオ:厳蒔磨絽
「 シュンシュンじゃなければ良いんだけど……。
シュンシュンは相手が陰陽師だろうと退魔師だろうと容赦無く売られた喧嘩を買うからな~~。
加減を誤った弾みで殺っちゃう可能性も有るし…… 」
厳蒔弓弦
「 それは否めないな。
諜報活動に長けているキノコンが調査してくれているなら安心だ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうだね!
何か掴んだらミニマムキノコンが知らせてくれるもんね 」
割烹着キノコンが和茶と一緒に依頼帳を運んで来てくれる。
和茶を飲みながら、弓弦さんと一緒に依頼帳を見る。
受ける依頼書を物色して選ぶ。
1番にシュンシュンを信じないといけない立場なのに、真っ先にシュンシュンを疑っちゃうなんて、オレって最低な主人だよな……。
シュンシュンだってセロみたいに少しずつだけど、変わって来てるんだ。
其処をちゃんと評価して、認めて、受け入れて、誰よりも信じないといけないってのに──。
シュンシュンに再会したら、疑った事を謝らないとだ。
怒るだろうし、許してくれないだろ。
眷属を信じられない主人だから、シュンシュンとの信頼関係が築けなくなるかも知れない。
言わなければバレやしないけど──、それって主人として眷属に対して不誠実なんじゃないのか──って思う。
シュンシュンに打ち明ける前に、キーノに相談してみようかな?
セロが居てくれたらセロに相談する事が出来るんだけど──。
弓弦さんにも相談──いや、弓弦さんも眷属だし……。
シュンシュンの事も良く思ってないし……。
そうなんだよなぁ……シュンシュンと仲良いのって、オレかキギナくらいなんだよなぁ……。
シュンシュンとキギナの共通点って、オレを財布扱いしてる事とBL系に抵抗が無いって所くらいかな?
後は、ナンパ野郎を逆に痛め付けて金品を奪うくらいか──。
あっ──そう言えば、ナンパ野郎を真っ裸に剥いて瀕死の状態で電信柱に逆さ吊りにしてた事が有ったよな!
電信柱は辛うじて生きてだけど、神社の木に吊るしたナンパ野郎達は死んでたっけ……。
もしかして、シュンシュンじゃなくてキギナが……??
でも≪ 和國 ≫で魂を刈り取らない様に釘を刺されてるし、首だけ落とすなんて事を死神がするかな──??
キギナに確認してみる必要が有るかも知れない。
≪ 和國 ≫には死神は存在しないみたいだけど、死神の勘で何か分かるかも知れないし??
よし、帰ったらキギナと話してみよう!!
依頼帳の中から受けたい依頼書に付箋を貼る。
依頼帳の中で陰陽師が何者かに襲われる事件の解決依頼を見掛けたけど、弓弦さんもオレも見なかった事にして無視した。
[ 受け付け ]で付箋を貼った依頼帳を職員に手渡して、依頼書を受理してもらう。
《 退魔仲介所 》を出てキノコンに見送られながら、近くの依頼現場へ向かう事にした。




