第3話：「初めての収穫祭」
澄み渡る青空の下、陽介はハルス村の農場でいつものように作業に励んでいた。村での生活にも馴染み始め、少しずつ村人たちとの絆が深まってきたことを感じていた。彼は魔法農業を通じて、この村に役立つ存在になりたいと考えていた。そんなある日、村長が彼を訪れた。
「もうすぐ収穫祭だよ。君もぜひ参加してほしい。祭りは村全体で楽しむイベントで、君の育てた作物も披露してほしいんだ。」と、村長は微笑んで言った。陽介はその話を聞いて戸惑いを感じた。魔法農業を始めたばかりの自分が、祭りにふさわしい成果を出せるのか心配だった。
彼の不安を感じ取ったリーナが励ますように言った。「大丈夫だよ！収穫祭はみんなで楽しむものだから、陽介の作物も絶対喜ばれるはず！」その言葉に勇気づけられ、陽介は収穫祭への参加を決意した。
陽介の農場では、「癒しのミント」や「陽光麦」といった魔法作物が順調に育っていた。水路を整備したことで土壌も安定し、作物はみずみずしく成長していた。リーナも収穫の手伝いにやってきて、「このミント、収穫祭でみんなきっと喜ぶよ！」と興奮気味に言った。
陽介は地球での経験を活かして、作物を使ったアイデアをいくつか試してみた。「癒しのミント」を使った爽やかな飲み物や、「陽光麦」を使った特製のパンを作り、それらを収穫祭で提供することを決めた。彼のアイデアは村での祭りに新しい彩りを加えるものだった。
ガルドも力を貸してくれた。「陽介、俺も手伝うぜ。このパンの焼き方、ちょっと楽しいじゃないか！」と陽介の作業に興味津々な様子で協力した。こうして準備は順調に進み、収穫祭の当日を迎えた。
祭りの日、村の広場は活気に満ちていた。各農場から持ち寄られた作物が色とりどりに並び、村人たちは楽しげに交流していた。陽介のテントにも多くの村人が訪れ、彼が提供する飲み物やパンを口にして「これは爽やかで美味しいね！」「このパン、食べると元気が湧いてくる！」と絶賛した。
陽介は不安でいっぱいだったが、村人たちの笑顔を見て少しずつ緊張が解けていった。「こんなに喜ばれるなんて…自分の作物が役に立っているんだな。」と胸の中で思い、達成感を感じた。
リーナも嬉しそうに言った。「陽介、大成功だね！みんなすごく喜んでるよ！」彼女の言葉に、陽介は心からほっとした。
祭りの終盤、村長が陽介を呼び寄せた。「君に見せたいものがあるんだ。」村長は陽介を広場の奥にある大きな木の下へ案内した。そこには村の伝統である「収穫の祝福の石」が置かれていた。
「この石には村の豊穣を願う祈りが込められている。村の新しい仲間が収穫祭に成功した時、この石に触れることで村の守り手として認められるんだ。」村長の説明を聞いて、陽介は驚きと共に誇らしさを感じた。
彼が石に触れると、温かさを感じた。そしてその瞬間、村人たちが拍手を送り、「ようこそ、ハルス村へ！これからもよろしく頼むよ！」と声を上げた。陽介は感動で胸がいっぱいになり、この村での生活が自分にとって特別なものになりつつあることを実感した。
その夜、祭りの余韻が広がる中、陽介は星空を眺めながら静かに考えた。リーナがそっと隣に座り、「今日の君、すごく格好良かったよ！」と笑顔で言った。陽介は少し照れながらも、胸の中にある充足感を隠せなかった。
「俺、この村でまだまだやれることがある気がする。この村をもっと支えたい。」彼がそう言うと、リーナは微笑みながら答えた。「その気持ちがあれば大丈夫だよ。これからも一緒に頑張ろう！」
陽介の異世界農家ライフは、新たな挑戦に向けて歩みを進めていくのだった…。
