第24話:「火山の影、目覚める災厄」
異世界農家ライフ 第24話:「火山の影、目覚める災厄」
ドラゴン・ヴォルグランの力強い翼が風を切り、陽介たちは火山地帯へと向かった。岩肌がむき出しとなった大地は熱を帯び、空気には硫黄の匂いが漂っている。その先に待ち受けていたのは、不気味な紫色の霧が立ち込める異様な光景だった。
「これは…ただの霧じゃない。」リーナが眉をひそめながら呟いた。霧の中から微かに聞こえる低い唸り声が、陽介たちを不安にさせていた。
割れた巣
ヴォルグランが火山の湖の近くに降り立ち、その巨大な頭を振りながら悔しげに言った。「この下に我が巣があったのだ。しかし、何かが現れて、全てが破壊された。」彼の声には無念の感情がにじみ出ていた。
陽介はヴォルグランに近づきながら尋ねた。「一体何がここで起きたんだ?その“何か”について分かることはないのか?」
ヴォルグランはしばし沈黙した後、低く震える声で言った。「我にも分からん。しかし、あれはただの魔族ではない。邪神だ…邪悪なる存在が目覚めたのだ。我が力ではまるで歯が立たぬ。」
その言葉に、陽介の心は冷たい恐怖で満たされた。「邪神…そんなものが存在しているのか?」リーナもその響きに顔を青ざめさせながら言った。「どうするの、陽介?私たちには戦う力なんてないよ!」
絶望的な状況
陽介たちは火山の麓を慎重に進みながら、その異様な紫の霧に近づいていった。霧の奥に見えたのは、巨大な黒い影が動いている光景だった。それは邪神の一部と思われるものが微かに見え、威圧的な存在感を放っていた。
「戦うなんて無理だ…僕には戦うスキルもないし、武器も貧弱なものしかない。」陽介はそう呟きながら、心の中で焦りと恐れが膨らんでいった。
リーナもその恐怖を隠すことができず、陽介に言った。「私たちの魔法じゃ攻撃もできないし、今の状況じゃどうしようもない。でも、このまま放っておくわけにはいかないよね。」
「そうだ。なんとか対策を見つけるしかない。」陽介は震える手を強く握りしめながら、ヴォルグランに言った。「君はどうする?君にもその邪神に立ち向かう方法はないのか?」
次なる一歩への決断
ヴォルグランは静かに首を振り、「我に残されたのは汝らへの助力のみ。我は汝らを背に乗せ、どこへでも連れて行こう。そして共に影の根源を探る道を歩まん。」
陽介はその言葉に勇気を得ながら、「ありがとう、ヴォルグラン。僕たちで何とか真相を突き止める。」と答えた。そしてリーナに向き直り、「まずはこの影が何者なのかを知る必要がある。それから対策を考えよう。」と力強く言った。
こうして陽介たちは新たな決意を胸に、邪神の脅威とその影の正体を探る旅に出ることとなった。
次回予告
火山地帯に現れた邪神の正体とその力は何なのか?陽介たちは対策を講じるべく新たな知識を求め、さらに深き冒険へ――次回、第25話「影の根源、決意の道筋」で真実と新たな困難が明かされる。