第23話:「森の深淵、目覚める脅威」
ウルカイド大森林の奥深くへ進んだ陽介たち。霧が薄くなり、険しい地形が現れると、彼らは火山地帯の境界に到達した。その場所には岩肌が剥き出しとなり、大地が熱を帯びていた。近くには静かな湖があり、そこには信じられない光景が広がっていた。
陽介が目を凝らすと、湖のほとりに巨大なドラゴンが横たわっているのが見えた。その体は傷だらけで、ところどころ火山の熱によって焼けただれていた。「あれは…ドラゴン?」リーナが驚きの声を上げる中、ガルドも慎重に言った。「どうして火山地帯を離れてこんな場所まで来たんだ?」
傷ついたドラゴン
陽介は慎重にドラゴンに近づき、その様子を観察した。ドラゴンは目を閉じて横たわり、その体の周囲には湖の水が蒸発して薄い煙となって漂っている。「何があったんだろう。こんな姿になるなんて…」陽介はドラゴンの傷を見ると胸が痛むのを感じた。
リーナが隣で心配そうに声をかける。「陽介、近づきすぎないで!ドラゴンは危険よ!」しかし、陽介は決意に満ちた表情を浮かべ、「僕たちは何か手助けをするべきだ。たとえドラゴンでも、この状況を放っておけない。」と答えた。
陽介はカバンから星影薬草を使ったハイポーションを取り出し、それをドラゴンに与えようと試みる。しかし、その瞬間、ドラゴンは鋭い目を開け、咆哮を上げた。その威圧感に、陽介もリーナも思わず後退した。「まずい…彼にはまだ警戒心がある。」
ドラゴンの暴れ
ドラゴンは傷の痛みと人間への警戒心から立ち上がり、大地を揺るがすような勢いで暴れ始めた。巨大な翼を広げると、熱風が陽介たちに襲いかかる。「早く逃げろ!」ガルドが声を張り上げ、リーナが陽介の腕を引っ張った。
しかし、陽介はドラゴンをじっと見つめながら一歩も引かずに言った。「僕たちが敵じゃないことを分かってもらわないと。このままじゃ彼も救えない。」彼は手を広げ、ドラゴンに向かって静かに歩み寄った。
ドラゴンの咆哮が再び響く中、陽介はその力強い視線に負けることなく、ハイポーションを差し出した。「これは君を癒すものだ。信じてほしい。」その言葉にドラゴンはしばし動きを止め、陽介をじっと見つめた。
信頼と癒し
ようやくドラゴンが陽介の差し出すハイポーションを受け入れ、その巨大な口で飲み込むと、驚くべきことが起きた。ドラゴンの体が穏やかな光に包まれ、傷が次第に癒えていった。焼けただれた翼も新たな輝きを取り戻し、ドラゴンの目には感謝の色が宿った。
ドラゴンはゆっくりと頭を下げ、陽介に向けて低い声で語りかけた。「人間よ…汝の癒しの力に感謝を。汝はただ者ではない。我が名はヴォルグラン。汝に誓いを立てる。この命、汝のために捧げよう。」
陽介はその言葉に驚きながらも、「僕は君に命を捧げろなんて言うつもりはない。君自身が自由に生きるべきだ。ただ、君が苦しむことなく生きてほしいと思っただけなんだ。」と答えた。その言葉にドラゴンは静かに微笑み、その巨大な翼を広げた。
新たな謎の兆し
ドラゴンが火山地帯を離れ、傷を負った原因について尋ねると、ヴォルグランは苦しげに語り始めた。「大地に異変が起きている。我が住む火山地帯には新たな影が現れ、我が縄張りを脅かした。その影の力により、我が傷を受けたのだ。」
その言葉を聞いた陽介は真剣な表情でリーナとガルドに向き直った。「火山地帯の影…これは放っておけない。このままでは自然全体が危険に晒されるかもしれない。」
「何をするつもりなの?」リーナが尋ねると、陽介は力強く答えた。「僕たちで調査しに行こう。彼の傷を癒した以上、次は原因を突き止めるべきだ。」
ドラゴン・ヴォルグランはその言葉に頷き、力強い翼を広げた。「我も共に行こう。汝と共に新たな脅威に立ち向かわん。」こうして、陽介たちは火山地帯の異変の謎を追うために新たな冒険を始めることとなった。