第22話:「迫る危機、大地が呼ぶ声」
柔らかな朝日が農地を照らす中、陽介はいつも通り作物の成長を確認していた。しかし、その日彼が目にした光景は、彼を驚かせ、動揺させるものだった。畑の一角が荒らされ、作物が散乱している。近くには獣の足跡が深く刻まれていた。
「これ…どうして?」陽介は畑にしゃがみ込み、作物の残骸に目を落とした。これまでハルス村周辺の野獣は、人々や作物を襲うことはなかった。彼らは基本的に森に留まり、人の領域に入り込むことは稀だったのだ。
リーナが急いで駆け寄り、不安そうに言った。「陽介!見て、あっちの方も荒らされてる。いったい何が起こったの?」陽介は深呼吸をして答えた。「わからない。でも、このままじゃ農場全体が危険だ。まずは被害を食い止めないと。」
農場の守備
陽介は急いで村人たちを集め、被害を最小限に抑えるための対策を話し合った。ガルドと鍛冶屋の仲間は農場の周囲に簡易的な柵を作り、リーナたちは村人と協力して作物を守るための見回りを始めた。
「今夜も襲われる可能性がある。みんなで協力して見張ろう。」陽介は疲労を隠しきれない声でそう呼びかけた。村人たちもその言葉に頷き、農場を守るべく動き始めた。
しかし、その夜も野獣たちは現れ、柵を突破して作物を荒らした。獣たちは驚くほどの力と執拗さを見せ、陽介たちはただ被害を食い止めるだけで精一杯だった。
「これじゃ、埒が明かない…」陽介は荒れ果てた畑を見つめながら呟いた。
野獣の行動の謎
翌朝、陽介は錬金術師のもとを訪れ、相談を持ちかけた。「どうして急に野獣たちがこんなにも攻撃的になったんだろう。今まで彼らはこんな行動を取らなかったのに。」錬金術師は深い溜息をつきながら言った。「彼らの縄張りに何か異変が起きたのかもしれない。野獣は通常、人間の領域に近づかない生態を持っている。」
「異変…?」陽介はその言葉に思案を巡らせた。村の周囲を取り巻く自然は、これまで平和で安定していた。だが、何かが彼らの住む環境を変化させた可能性がある。
錬金術師は地図を広げながら続けた。「ここから北に広がる『ウルカイド大森林』を調査してみてはどうだろう。そこは野獣たちの主な生息地だ。何か手がかりが見つかるかもしれない。」
陽介は迷いながらも、心の中で決断を下した。「わかりました。僕が調べに行ってみます。」
ウルカイド大森林への決意
リーナとガルドに調査の意図を話すと、二人はすぐに陽介についていくことを申し出た。「あんた一人で行かせるわけないでしょ!」リーナは腕を組んで言い、ガルドは力強く笑いながら「俺の力が必要だろ?」と背中を叩いた。
こうして三人はウルカイド大森林へと向かう準備を整えた。錬金術師からは「この薬草を使えば野獣を一時的に落ち着かせられるかもしれない」と、特製のポーションを託された。陽介はそれを受け取り、「ありがとう。必ず何か解決の糸口を見つけてくる。」と答えた。
農場を村人に託し、三人は深い緑が広がる大森林へと足を踏み入れた。その静けさと薄暗い光景は、どこか不穏な気配を漂わせていた。「ここで何が起きているんだろう…」陽介はそう呟きながら森の奥へと進んでいった。
ウルカイド大森林は彼らに新たな試練を突きつけることになる。野獣の異常な行動の裏に隠された謎とは?陽介たちは自然の異変の真相を追い求める中で、さらなる危機に直面することになる。