第11話:「王国の召喚」
静かな夜、ハルス村の農場に月明かりが差し込む中、陽介は作業を終え、一息ついて星空を見上げていた。この村での生活にも馴染み、収穫を成功させる喜びを味わいながら、次の季節に向けた新しい挑戦を考えていた。そんな時、村長の家から使者が訪れた。
「陽介さん、王国から急ぎの使者が到着しました。村長が今、広場にあなたを待っています。」その言葉に陽介は驚きつつも、「王国から?」と疑問を浮かべながら急いで広場へ向かった。
王国からの召喚
広場に到着すると、そこには立派な鎧を纏った騎士と王国の紋章を掲げた馬車が待っていた。騎士は陽介を見ると、深々と頭を下げて言った。「陽介殿。貴殿が育てる魔法作物の噂を耳にし、王室より貴殿に力を貸してほしいと要請がありました。」
陽介はその言葉に戸惑いながらも、「一体、何があったのですか?」と尋ねた。騎士は神妙な表情を浮かべながら答えた。「実は、王国の姫が重い病に倒れました。何人もの医者や魔法使いが治療を試みましたが、効果がありません。しかし、古い文献によれば、ある特殊な魔法野菜がその病を癒す力を持つとされています。それが貴殿の農場で育てられている作物だと知り、急ぎここに参りました。」
「私の作物が…姫を助ける?」陽介は一瞬考え込み、そして静かに頷いた。「分かりました。できる限りお力になります。」その言葉に騎士は安堵の表情を浮かべ、「ありがとうございます。では、すぐに王宮へお連れします。」と伝えた。
王宮への旅路
陽介は急ぎ準備を整え、魔法作物をいくつか収穫して馬車に乗り込んだ。リーナも彼に付き添い、勇敢なガルドも護衛として同行することになった。「陽介、あんた一人に全部押し付けるなんて許さないからね!」リーナが笑いながら言うと、陽介も感謝の笑みを返した。「ありがとう、リーナ。君がいると心強いよ。」
旅の途中、陽介は騎士から姫の状況について詳しい話を聞いた。「姫は数週間前に突然倒れました。高熱と衰弱が続き、どんな魔法も効果がないのです。ただ、この魔法野菜『癒光カボチャ』は古い王家の記録にその効能が記されており、最後の希望となっています。」
陽介はその言葉に気を引き締め、「僕の育てた作物で本当に助けられるなら、全力を尽くします。」と力強く答えた。
王室との対面
長い旅の末、一行はついに壮麗な王宮へ到着した。陽介は緊張感を感じながらもリーナとガルドと共に大広間へ案内された。そこには国王と王妃、そして病床に伏せる姫の姿があった。姫の顔は青白く、息も絶え絶えの様子だった。
「貴殿が陽介殿か。」国王は重々しい声で話し始めた。「この度は、我が娘を助けるために尽力していただき、感謝している。」陽介は一礼しながら答えた。「この作物が姫君を癒す助けになるのであれば、喜んでお力添えさせていただきます。」
陽介が持参した癒光カボチャを見た宮廷魔法使いは驚きの声を上げた。「これが伝説の作物…!実際に見るのは初めてです。この果実を調理し、魔法薬を作れば姫君を救えるかもしれません。」
姫の治癒
癒光カボチャはすぐに宮廷の料理人と魔法使いの手によって調理され、特製の魔法薬が作られた。その薬が姫に与えられると、不思議な光が体を包み込み、青白かった姫の顔色にわずかだが血色が戻り始めた。
「これは…効いている。」宮廷魔法使いがつぶやき、周囲に安堵の声が広がる。陽介はリーナの肩に手を置きながら、小さく息をついた。「本当に助かったのかもしれない。」
翌朝、姫は弱々しいながらも目を開け、初めての言葉を口にした。「お父様…お母様…」国王と王妃はその言葉に涙を浮かべながら陽介たちに感謝を述べた。「あなた方の勇気と努力に救われた。我々はこれを決して忘れない。」
村へ戻る陽介
王宮での歓待を受けた陽介たちは、無事に村へ帰ることができた。その旅の間に感じた責任感と達成感が、彼にとって新たな原動力となっていた。農場に戻った彼は再び土に触れながら思った。「どんなに離れた場所でも、この作物が誰かを救えるなら、僕はそのために頑張る。」
リーナが隣で微笑みながら言った。「あんた、王様からいっぱい褒められてたけど、村でもちゃんとその調子で頑張りなさいよね!」陽介はその言葉に苦笑しながら、「もちろんさ。次の作物も絶対に成功させるよ。」と答えた。
こうして陽介の異世界農家ライフは、一層深い意味と新たな目標を得て、次のステージへと進んでいくのだった。