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第二話「迷いの森へ」④

 冒険者が戦いで生き残っていくのは、簡単な事ではない。

 絶対的な指標はない。

 しかし、現在小さな指標は出されている。上級冒険者と言われる人達の持つスキルは最低でも4つ以上となっている。

 簡単に言うとスキルが多いほど、生き残りやすいという事だ。この指標が正しいかどうかはさて置き、ひとつ言えることは、スキルにバリエーションがあれば戦いは優位になる。

 この前のナスとの闘いでも分かった事だけど。ユウの様にスキルが多彩だと、戦いに幅を持たせることが出来る。相手の攻撃や、防御に対応が出来る。

 でも、僕のスキルはまだひとつ。

 だからって、簡単にスキルは手に入らない。誰より僕がよく知っている。

 4年間剣を振りまくったんだから。だから、無理なんだって。

 


「火炎球」

 アイカの火炎球が僕を直撃する。僕は威力には耐えたが、力尽きてその場に倒れ込む。

 ユウが倒れた僕に近づいてくる。

「そんなんではダメだ。これからの戦いで生き残れないぞ。」

 地面にて倒れている僕に語りかけた。

 僕は何をしているのだろう。自虐者か?いや、向こうが嗜虐者か?分からないが、旗から見たらかなりの変人達の集団だ。昨日のナス達と今会っていたら、無視されていただろう。

 

 ダメージの回復が間に合わない。一応コハルがさざ波の唄を掛けてくれているので、徐々に体力と傷は回復しているが、アイカの火炎球の威力が遥かに上で、ダメージが治りきらない。

「ユウ、ナギトはEランクなんだよ。いきなりスキルを覚えよって言ったってすぐには出来ないよ。」

 アイカがユウを説得しようとする。僕も心の中でその通りと賛同する。

「だから、お前は甘い、明日は館に入る、それが何を意味するか。分かるのか?油断すれば死ぬかもしれない。死にたくなければ、死ぬ気で強くなれ。」

 とアイカから僕の方へ向きを変え、倒れている僕に指を指して言った。

「10分後に再開だ。死ぬ気で体力を回復させろ。」

 そう言い残してどこかへ行ってしまった。「死ぬ気」が好きだな。何回使えば気が済むのか。


 昼間、僕達は世紀の発見をした。少し言い過ぎたが、あの封印された森の中に館を発見したのだ。人が造った館ではない。間違いなく、魔王かその部下のものだろう。部下のものであれば、今も中にはモンスターがいる可能性もある。存在しているのはモンスターだけではない、お宝も眠っている可能性が大いにある。お宝を手に入れれば、隊の資金に充当出来る。アイカが探そうとしている亜空間魔法が使える人を仲間に引き込む事も出来る。

 僕達は考えを巡らした挙句に、明日、日が昇ってから館を散策する事になった。

 素直にこのまま帰って、館の存在を冒険者連合へ報告するだけでも、大きな功績になる事は間違いない。

 今回の任務「迷いの森の地図作成」は終わっている。それに加え、未発見の館を発見しただけでも、任務としてはお釣りがくる出来である。僕の初冒険として、合格点と言っても過言ではない。

 未開のダンジョン程危険な場所はない。判断を一歩間違えれば死ぬ。通常の冒険より、遥かに死と隣合わせとなる。ユウやアイカも冒険者としてCランクに達しているが、冒険者としての経歴はまだ数年。本来なら、この事を冒険者連合に報告して、上の判断を仰ぐべきだろう。しかし、僕達は冒険者としての血が騒いだ。館を見つけて、潜入せずに帰る事なんて出来ない。冒険者は常に先駆者となるべき存在だから。


 

 夕食の時、アイカが一言つぶやいた。その一言が今回のバカみたいな訓練を引き起こした。

「ナギト、敵のマナもマナ寄せ出来るのか?」

「可能だと思うけど。距離によるかな。マナ寄せはある程度近くないと出来ない。マナ寄せしている間に斬られたら意味はないから、簡単ではないと思う。」

「なら、相手のマナ系攻撃ならマナ寄せして無効に出来ない?」

 僕は少し考えてみた。やったことはない。でも、理論的には可能かも。

「理論上は可能かもしれないけど、やったことないからな。」

 その時、黙々と食事をしていたユウが急に立ち上がった。

「ナギト、アイカやるぞ。」

 僕は何を?と思ったが、ユウがその気になったら止められないのは百も承知である。僕達はアイカの火炎球をマナ寄せして無効にするという訳の分からない訓練に取り掛かった。

 アイカが火炎球を僕にぶつける。僕はその火炎球をマナ寄せして無効にする。コハルはさざ波の唄を絶えず使って、ダメージを受けた僕を回復する。

 ユウは指示。グロスは食後の片づけ。

 この狂気の特訓が始まって、かれこれ1時間くらい経つ。

 最初2回は無理で避けた。当たり前だ、目の前に火炎球が来たら本能で避けるだろ。しかし、ユウが怒ってダメージを食らってもいいからやれというスパルタ訓練になった。

 そして、5球の火炎球を食らった。身体はボロボロである。僕はコハルに問いかけた。

「コハル、さざ波の唄と水滴同時に使えないか?」

 僕は無理なお願いをしたが、答えはあっけなく、「出来るよ」だった。早めに頼めば良かった。


 休憩時間が終わり、再度特訓が始まる。

 休憩中にアイカがポーションをくれて、一応体力と傷は回復した。

「マナ寄せ開眼」

 コハルの水滴のスキルに合わせて、開眼にマナ寄せをする。アイカのマナの動きが見えて来た。アイカが火炎球を使おうとしている。ロッドにマナが集まる。炎系のマナがロッドの中央に集まり、一瞬、マナが凝縮された。それと同時にアイカをロッドを僕の方に向けて、「火炎球」を発動した。

 マナは一瞬にしてロッドから離れ、僕の方に向かって放たれた。集中、火炎球を見ない。マナの動きだけを見て、マナの中央を狙う。その中央のマナを吸収。

 いや無理だ。かなりの攻撃エネルギーがこっちに向かっている。ダメだ。いや、方法はある。跳ね返すことなら出来る。

 その時、僕の脳裏で「マナ返し」という言葉が響き渡った。

 身体の中心から力が全身を駆け巡る。その力が剣先に集まり始めた。

「マナ返し」

 その言葉を発した瞬間に剣は何か不思議な力が集まり、見えない渦を作りは始めた。剣先を火炎球のエネルギーの中心に向け振り抜く。

 火炎球の中心を剣で当てた瞬間、火炎球の方向がアイカの方へと向きを変えた。火炎球がアイカの方に飛んでいく、成功だ。と思った瞬間、尋常ではない、衝撃波が僕を襲った。

 僕は火炎球を真正面から受けた時同じで後ろに吹き飛ばされた。

 しばらく、地面に叩きつぶされて動けなかった。そのまま広場と一緒に空を見上げていた。

 あれ、この光景どこかで、見たぞ。デジャヴ?いや、昨日ナスの攻撃を受けた後だ。

 なんで2日も連続で吹き飛ばされないといけないのだ。

 今日はナディがいないから、この傷はポーションとさざ波の唄で治すしかなさそうだ。

 

 スキル「マナ返し」はマナを弾き飛ばす事が出来るが、その時に発生している力エネルギーは自分が受けないといけない、ダメスキルだった。

 下手には使えない。

 即死系スキルも返す事が出来そうだが、その衝撃で死ぬ可能性はありだ。せっかく手に入れた2個目のスキルだが、「死にスキル」になりそうである。


 「スキル」はどんなスキルでも使い方次第。

 冒険者学院の先生の言葉だ。本当かよ。このスキルでもお前は使うのか?と言いたい。使えないだろう。

 これなら、避けた方がよくない?

 僕には「マナ寄せ開眼」がある。もちろん、コハルがいる事と言うことが前提となるが。マナ寄せ開眼で敵の攻撃を避けて攻撃なり、防御なり、撤退なりをした方が良い様に思う。

 やっぱり「死にスキル」決定だな。

 「開眼」はスキルではないから、僕が使えるスキルは現状「マナ寄せ」「マナ返し」の2つとなる。そして、「マナ寄せ」だけが僕のスキルだ。

 

 ユウのがっかり感はかなりのものであった。これ以上やっても無駄と思ったのか、訓練は終わりにして休むことになった。僕は悪くないぞ。そもそも無理だと言っておいたはずだから。

 

 明日は初めてのダンジョンへ潜る、楽しみであるが、不安も大きい。せめて、手伝えることがあれば良いのだが。

 森とダンジョンではやはり緊張感が違う。明日は少し大きな冒険になりそうである。

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