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七本槍の道化衆  作者: 熊野文助


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第十二話 決戦魔王城③

 魔王バンパイアロード直属の部下、3魔女の生き残りと言われる、次女バーブル。資質は戦士系と言われている。

 伝承では、バンパイアロードは処女を捕えて血を吸い、バンパイアの仲間を増やしていったとされている。魔王大戦以前ではバンパイアと言えば、若い女性というイメージ強く残っており、肖像などでも女性のモンスターとして描かれてある事が多い。バンパイア化とは俗に言う不老とされる類に属し、彼女の身体的年齢は僕と変わらない事になる。

 しかし、何百年と生きているモンスター、貫禄・マナの量・威圧感、全てにおいて誰よりも上を行く。更に付け加えるなら、玉座からこっちを見下ろす姿は魔王そのものと言っも過言ではない。


 バーブルはゆっくり笑顔で笑った。

「まだ紹介してなかったわね。あなた達のお友達よ。」

 そして、ゆっくりと天井を見上げた。その天井には奇妙な4体の化け物がグラスの周りを静かに周っていた。僕にはそれが何か検討も付かない。

「この儀式はね。教授が調べてくれたの。4つの捧げ物にマナ獣のマナの力でグラスを注ぐと闇の彼方へと封印されし者の封印が解ける。」

 彼女は立ち上がり、その大げさな程のグラス4杯を抱く様に天仰いだ。

 再びこっちを見た。

「でも、私はマナ獣は扱えないわ。だから、ゴーストにマナを持つ者の魂を掛け合わせて見たの。どう?傑作でしょ。」


 僕は天井に目を注いだ。まさか?

 赤色に光るゴーストのお腹の部分に女性の顔が泣き叫ぶ様に動いている。見覚えのある顔だ。アイカだ。死狂の館でバーブルに腹を突き抜かれた、まさにあの時の表情の様だ。黄色のゴーストにはグロス、白色のゴーストにはユウがこちらから見える部分に顔が出ていた。藍色、水のマナを持つゴーストはコハルではなかった。コハルは魔石化したから魂を奪えなかったのだろう。しかし、見たことのある顔がこっちを見下ろす。教授ことリトダだ。

 ライガは一瞬、黙祷をするかのように静かに目を瞑った。そして、バーブルを睨めつけた。

「あら、そんなに嬉しかったかしら、大好き人達に見守られて死んでいくのは悪くないわよ。あら、ごめんなさい。あなたはあそこよ。」

 バーブルは僕を見つめてから、後ろの空のグラスを指差した。

「最低ね。反吐が出るわ。」

 ストナが大剣を構える。ストナがこっちを見た、落ち着けと言っている目だった。僕は彼女を見てから、深呼吸をして高鳴る鼓動を落ち着かせようとした。込み上げる怒りをかき消す為、ゆっくりと心を奥底に置く。ライガも……いや全員が同じ気持ちだろう。武器を握る手に力が入る。

「聖流剣」

 ストナが最初に動いた。しかし、ここから聖流剣を使ってもけっこう距離があるぞ。と思った瞬間、僕達の上に網が被さった。

「な、何よ。」

 ストナが止まった。僕とマルマルも網に絡まり上手く動けない。何が起こった?この網はカールの網だ。僕はカールの方を見た。

「お前達はここで待っていろよ。ここからは隊長の仕事だ。」

「グズは邪魔だ。そこで見ていろ。」

 ライガが僕達の前に戻ってきた。

「悪いな。お前達には荷が重い。ここで見ててくれ。ここからは俺もお前達を守る自信はない。」

 そう言うと、ライガは僕に槍を差し出した。

「これに聖と光のマナ寄せを頼む。なんだ、その目は、別に死にに行くわけではないからな。」

「そうそう、結界はもう少し大きくしてその中は動ける様にすらから、私の武器にも頼むよ。」

 カールは縄と一緒に手を差し出した。その横から無言でマーロンも剣を差し出した。

 カールは僕達を縛っていた投網を一度解いてくれた。僕は聖と光のマナを出来るだけ、3人にマナ寄せした。その後、カールはもう一度、3人が入れるくらいの小さ目の網結界を作っってくれた。今度は3重になっていた。

 その一連の流れが終わると、ライガ達はマーブルと対峙した。

 マーブルもゆっくりと王の壇上から降りてきた。彼女にとって最重要事項は僕を殺して、魔王復活の儀式を始める事、それなら、僕らが網結界の中に入る前に攻撃するはず。

 しかし、彼女はそれをしなかった。多分、早かれ遅かれここにいる全員を殺すから気にして無いのだろう。ある意味で騎士道精神と言うか、どことなく闘う事を楽しんでいる様に感じる。


 謁見の間には巨大な円柱の柱が8本そびえ立っている。玉座横に2本、その後出入り口まで等間隔に並ぶ。この城の荘厳さを象徴している様だった。

 バーブルは壇上から降りるとその柱に近付いた。そして柱に手を掛けてライガ達を見て、笑顔で笑った。いや笑った様に見えた。次の瞬間、バーブルは柱を2本いや4本を屈曲して飛び跳ねながら天井まで登っていった。飛び跳ねるたびに柱にバネがついているかの様にスピードが増していく。天井に届く頃には目では姿を認識出来ない程のスピードになっていた。バーブルの身体が一瞬天井に届いた。その直後、バーブルのマナがマーロンを捉えた。危ない。

「マーロンさん、気をつけて。」

 マーロンは気付いていない。バーブルが上空から来る。バーブルの動きは目では捉え切れない。マーロンは動けてない、だめだ。やられる。

 ライガが動いていた。槍を構え、バーブルがマーロンの頭上直前に来た時に百段激突を放った。しかし、バーブルは空中でその百段突撃を避けた様に見えた。

「何なんだ?」

「どうしたの?見えるの?」

 ストナが僕の近くに来た。

「見ないけど、バーブルの動きはマナだけが見えると言うか、マナを感じる。さっき、ライガさんが突きを出した瞬間、バーブルが空中でマナを爆発させて、動きを変えた?」

「陸宙演技かもね。」

 陸宙演技、聞いた事がある。格闘家タイプの上級スキルと言われている。空中でマナを爆発させる事で蹴りなどの攻撃方法を変幻自在に変えられる。通常の攻撃で1回が限度と言われている。


 バーブルとの激闘が続いている。バーブルはゆっくり獲物の力を削ぐ鷲の様に、柱からの上空攻撃をし続けている。ライガはそれを防いでいが、マーロンとカールは殆どバーブルの動きを捉え切れていない。2人は上空を見上げているだけだった。このままではライガの体力が先に尽きる可能性がある。2人を守りながら格上の相手と戦っては、完全に不利な状況であった。

「陸宙演技なら、基本1回、その後の方向が分かれば、勝機は見えるわ。」

「もし、単純な空中浮遊なら、その考えは危険だぞ。」

 マルマルがストナの考えを否定した。確かにバーブルは元々飛べる。空中浮遊の一種なら、陸宙演技とは異なり、何度でも移動が出来る。するとマルマルが僕達を見上げて、提案をしてきた。

「お前さん達、死ぬ気はあるか?」

 提案は単純だった。ストナの陸宙演技案に賭けると言うものだ。その案に掛けて、僕達も参戦する。参戦するなら、このカールが作った結界を解く必要がある。結界を解く方法は聞いている。カール達がやられた時に逃げる為の手段として教えてもらった。この結界、通常攻撃、マナ攻撃を受けない代わりに、こちらからも攻撃を仕掛ける事が出来ない。戦うならこの結界を解く必要がある。

「マルマルさん、やりましょう。」

 僕はマルマルの案に乗った。ストナも同意見だった。結界を解くタイミングはライガ達がバーブルの攻撃を躱して、再びバーブルが上空に登る瞬間。解く事で標的が僕達になる可能性もある。でもやるしかない。


 バーブルが再び登っていく。今だ。僕達はカールの結界を解いた。

「鉱石サーチ、鏡合わせ」

 マルマルが2つのスキルを使う。僕はそのスキルをマナ寄せ開眼する。

 賭けだった。マルマルの鏡合わせは鉱石サーチを共有するスキル。僕の開眼に鉱石サーチと鏡合わせを同時にマナ寄せすると、僕のマナ寄せ開眼が共有出来るのか?

 確認する暇はない。バーブルの攻撃が来る。

 バーブルのマナの方向が……ストナだ。来る!早い!横で見ていた時とは体感的に違う。目では方向が分かるが、身体が反応出来ない。その時、カールとマーロンが反応した。カールがストナの上に網を張った。そこへマーロンが聖閃光を放った。バーブルは聖閃光が放たれると同時に空中で向きを変えた。陸宙演技ならここがチャンス。方向は後ろ側へ避ける。でも、身体が反応しない。いや、出来ない。頭の中ではバーブルの攻撃を読めても、身体は動かない。動けないと言った方が正しい。くそ。

 バーブルが陸宙演技を使った瞬間、ライガが亜空間閃破を放った。バーブルの核を破壊した。完全に破壊した音が響いた。


 バーブルの悲鳴が謁見の間中に響いた。

「終わった。」僕の声が漏れた。

「良い目だ。」とライガが僕の背中を叩いた。

「最高のアシストだった。思った以上にいいな。」とカールは僕の頭を撫でた。

「スキルだけは認めてやる。」とマーロンがぼそっと呟いた。

「俺のスキルなんだがな。」とマルマルが後ろから呟く。

「帰ろ。」ストナが僕の右腕を取った。僕はストナの方を向いて頷いた。

 終わった。長い戦いだった気がする。


「ウ、ウォー……許さんぞ。貴様ら。」

 バーブルのマナが復活した。生き返った。不死身なのか?

 全員が身構えた。一瞬で空気が凍りつく。僕の脳裏に途方もない戦いが連想された。このまま戦っていっても、僕達のマナが先に尽きる。僕は天を見上げた。そこには魔王城の天井が広がっている。そこに4杯のグラスの上をマナ獣もどきのゴーストが浮かんでいた。

 マナ獣!

 エイディはマナ獣を従えて魔王に挑んだ。4つのマナ……。迷うな。やるしかない。

「マルマル、光、火、水、風、土の鉱石を割って、ストナ聖波動」

 僕は6つのマナを剣にマナ寄せする。だめだ。反発し合うマナを合わせられない。いや、合わせる必要はない。合わせるのはバーブルの核を砕く時だけ、だから、マナを剣の周りに纏わせる。

 出来るか?反発する力を利用する。それを剣の周りで回すようにする。

 ……。

 出来た。

 僕の剣の周りに6つのマナが回転している。でも長くは扱えない。

「ライガさん、もう一度だけ、チャンスを下さい。」

 ライガ達は構える。

「何度でもチャンスをやる。俺は最初からお前に掛けている。」

 そう言って、ライガ達は飛び出した。バーブルはもう一度柱を登っていった。僕は最後の一撃に備える。

 マルマルが僕の姿を見て言った。「無刀剣士だ。」

 ストナは僕を見て言った。「七本槍。」

 言われてみると、剣の周りに6個のマナが回っている、七本槍と言うより、七本剣だけど。と、そんな事考える余裕はない。バーブルの攻撃が来る。僕達は構える。今度はどこを狙って来る?僕だ。

 カールが僕の上に網を掛ける。思ったより早く、バーブルは陸宙演技を使った。方向をマルマルへ移動した。カールがマルマルに網をかけ、マーロンが聖閃光でバーブルを狙う。もう、袋のネズミだ。いや、違う。何か違う。

 マルマル瞬前で陸宙演技を使った。やっぱり奥の手を隠していた。マルマルから標的を僕に変えた。

 来る。

「亜空間閃破」「聖閃光」

 ライガとマーロンの攻撃が重なる様にバーブルを裂いた。バーブルの身体は真っ二つに裂けた。僕の目の前にはバーブルの核がある。さっきは分からなかったが、バーブルの核は破壊されても、ゆっくり戻ろうとしている。この核にゆっくりとマナが回る剣を差し込むように突き付けた。(ゆっくりとしか身体が動けなかった。)

 核に剣を当てると、マナを一気に剣先に集めた。

「これで終わりだ。」

 核にヒビが入った。核自体が内部崩壊するかのように、内側から亀裂が入る。

 ビリビリと異音を響かせている。

 …………。

 

 何が起きているのか、気づいた時には遅かった。内部崩壊の亀裂は核から剣、剣から腕に現れた。縦の亀裂が数本核から剣を伝わって腕に伸びていたが、次第にその縦の亀裂が横に伸び始め核、剣、両腕の表面をウロコのような亀裂で覆った。

 亀裂が全体に回ると、その瞬間に核が割れた。核は粉々砕けた。勢いそのまま、剣も粉々に砕けた。そして、僕の腕に内部の砕け散った音が響き渡る。

 「うわーーーー!」

 何が起こったのか、分からなかった。見た目は腕が砕けている訳ではない。しかし、割れた瞬間、手が粉々に砕けた様な激痛が体全身に響いた。僕の叫び声も謁見の間に響いていた。

 そして、手が一切動かなくなった。

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