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七本槍の道化衆  作者: 熊野文助


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第十二話 決戦魔王城①

 魔王城はアタゴ山の中腹に建造された山城。

 いや、山そのものを城にしてあると言っても過言ではない。中腹にそびえ立つ岩の巨大な門、そこから巨人族でも容易に入れるほどの大広間?(回廊)なのか分からない部屋を3部屋過ぎると、謁見の間がある。謁見の間には魔王の巨大玉座、20段の壇上にそびえ立つ圧巻の景色が待っている。その巨大な玉座に座る事がCランクに上がった冒険者の嗜みとされている。

 ここまでが聖京都冒険者ガイドに写真付きで載っている魔王城の紹介文である。推奨ランクはCランク以上、アタゴ山中腹までには中ランククラスの魔物と遭遇する可能性もあるため、それなりに高めな設定となっている。しかし、魔王城の中で魔物と出合った報告例はない。比較的に安全な冒険と言われている。

 ユウやアイカは聖騎隊時代、先輩に付き添って行ったと自慢していた。一般人が行くには勇気のいる場所ではあるが、冒険者に同行すれば不可能ではない。

 

 魔王が退治されて100年、世間一般には退治された。と言われているが、ライガ達の話では封印と言う方が近いという見解もある。

 聖の英雄ウリエルの手記(正確には手記の写本らしい)には4英雄と4従者(手記には8勇士となっている)と4匹のマナ獣は100年前に魔王と対峙した。場所は魔王城の謁見の間から更に奥へと続く「遊楽の間」と言われる場所。

 8勇士は死闘繰り広げるが、魔王の「死の手」と呼ばれる魔法で、4名がダメージを負った。受けたダメージが深く、戦線離脱を余儀なくされた。(この離脱した4名が従者と言われている)

 エイディが奥の手を使い、魔王を遊楽の間にある巨大な柱へ剣ごと突き刺した。しかし、それ以上は無理と考えてか自分の命を犠牲にして、魔王を柱ごと石化させた。魔王城は魔王共々石、いや岩と化して、山のようにそびえ立ち、のちにアタゴ山と呼ばれる様になった。(昔は丘の上に城があったと書かれているが。)

 

 この手記、帝国史と異なる上に写本でしか残っていない為、信憑性に欠けると聖京都でも賛否が分かれている様だ。また、アタゴ山の部分の手記がいつ書かれたのかウリエル自身か写本職人か誰が入れたのか?そこも研究者を悩ませている。

 帝国史には3英雄が謁見の間で魔王を倒した。とだけしか書かれていない。真実は時間と共に埋もれていく。

 魔王城は入口の巨大門から謁見の間までの通路以外に入る事はできない。なぜなら、他の部屋への扉は岩で出来ているので開かないのだ。元々岩の扉の様なオブジェなのか?封印の際、岩になったのかは分からない。謁見の間の奥に遊楽の間があるのか?今では誰も分からない。

 今も多くの人の心を引き付ける魔王城と英雄の歴史。

 その歴史の世界に足を踏み入れようとしていた。


 巨大な門が眼前に迫るように感じた。

「でか!」

 ストナの心の声が漏れた。

「ストナも来たのは初めて?」

「来たことって、こんなところ好き好んでこないわよ。」

「聖騎隊は初めの頃、度胸試しに来るって聞いたけど。」

「誰よそんなもの好きは?」

 と、周りを見る。ライガ、マーロン、カールと行くよって目でストナを見た。

「イタタタ」

 いきなり、ストナが僕の腕をむしる様につねった。

「なにすんだよ。」

「なんとなく。」

 なんとなくでつねるな。


 ライガが仕切り直した。

 「行くぞ。いいか、ここからは以前の魔王城では無い。バンパイアの巣穴と化している可能性もある。油断するな。」

 僕はもう一度城門を見上げた。恐ろしく巨大な城門だった。僕達を軽々と飲み込むかの様に造られていた。

 魔王城は門も含めて一切の物が動かない。エイディの封印なのかは分からないが、開いている扉をただ突き進むだけの構造となっている。魔物は待ち構えているか、後から襲ってくるかのどちらか。

 今回、魔王城に踏み込むのは「七本槍の道化衆」のみ。正確には臨時七本槍の道化衆と言うのか、元々、臨時部隊と言えば臨時部隊となるが……。

 僕、ライガ、マルマル、ストナ、マーロン、カールそしてゴン太の6人と1匹が臨時七本槍の道化衆を組み、魔王城に消えていったバーブルを追って城内へ入って行く事となった。

 この戦い一番の懸念ははさみ撃ち。全員が入った後で魔物の群れからさみ撃ちにあった場合、全滅する危険がある。その為城門を取り囲む様に4、5、6番隊(6番隊はほぼ半壊状態ではあるけど。)を配置し、全指揮をゴアに託した。七本槍だけでは、危険であるため、マーロンとカールが同行。

 そもそも、七本槍の道化衆の名前を前面に出さなくてと思ったけど。

 ストナの彼女の考えでは、何かあった時責任を全て七本槍の道化衆になすりつければ良いと判断に至ったと推測していた。

 大人って怖!

 七本槍の道化衆ってここまでくると何?と思えてしまう。

 

「行くぞ、隊長。油断するなよ。」

 そう言って、カールが僕の背中を叩いてライガに続いて魔王城に入った。

「遅いぞ、ぼやぼやするな隊長なら隊の動きを常に気に留めろ。俺様が最後を守るから早く行け。」

 マーロンの激が裏から飛んで来る。

「文句があるなら、来なければ良いのに、行こ。」

 そうストナは小声で言って、僕の手を引っ張り城の中に引き込んだ。その後にマルマルゴン太と続き、マーロンが入ってきた。

 

 入った瞬間に息が出来ない様な感覚に襲われた。尋常でない瘴気の量だ。死狂の館や迷いの森で感じた瘴気とは桁が違う。

 ようやく瘴気に慣れてきて、前を見上げた。巨大な回廊が奥深く続いていた。岩の回廊いや、巨大な石で出来た回廊が岩に閉ざされたというべき作りだった。エイディの封印説が生まれたのにも納得がいく。

 ライガが足を止めた。

「気を付けろ、瘴気の量が明らかに異常だ。何が出てくるか分からないぞ。」

 僕達はゆっくりと前進していく。ただ、瘴気の濃さ以外、特に異常はない。先程からマナ寄せ開眼を使っているが、この回廊には魔物がいる気配はなかった。


 門を越え、2部屋目の回廊を進む。そもそもここが回廊なのか良くわからない。バカデカく、縦長な空間の為、第2回廊と名付けられているらしいが、何に使われてきたのかは謎である。ただ、魔王討伐の時はここで死闘が行われた事は嫌でも分かる。

 門を越えると瘴気も一層濃くなった。

 突然、ゴン太がわめき出した。

 犬の様にキャンキャンと吠えなが広い回廊を走り出した。僕はゴン太の方へ行こうとすると、ライガが左腕を出して、行くのを制した。

「止まれ。完全に俺のミスだ。ゴン太は連れてくるべきではなかった。」

 ライガがそう言いながら、ゴン太に向けて槍を構えた。

「気を抜くな!ゴン太、あいつはもう敵だ!」

 僕達は呆気に取られながらも、ゴン太を見る。ゴン太は吠え哮りながら、走り回る。今までの時より見せていた犬の様に走り回り甘えてくる仕草と何かが違う。マナ寄せ開眼でゴン太を見た。ゴン太を取り巻くマナが少しずづ暗く、黒くなり始めた。周りのマナがゴン太に集まる。それにつれ、身体が大きくなっていった。一度だけゴン太と目が合った。僕の記憶が鮮明に蘇る。あの目は完全に光る坑道で戦ったあのドラゴンの目だった。

「ゴン太!」

 僕は大声で叫んだ。しかし、声は届かない。

「無駄だ。手遅れだ。」

「でも、ゴン太も仲間だ。」

 僕の肩をストナが手を置き、首を横に振った。隣でマルマルも同じ表情を見せていた。

 諦めるしか無いのか?考えろ。考えろ。

 諦めるな。諦める=倒す、殺す事になる。当たり前だけど、このままゴン太を置いて奥に進めば、ゴン太が追ってきた場合、それこそ、バーブル達バンパイア軍団と挟み撃ちにされる。倒すか、前のゴン太に戻らせるしかない。

 光る坑道でゴン太と戦った時、僕は無心でマナ返しをした。その時、聖の石をマナ返しにマナ寄せした事で、ゴン太の中に溜まっている瘴気を吐き出させる事が出来たんだと思う。

 もう一度マナの返しで……。いや、衝撃波のダメージか大き過ぎる。マナ回転返しなら……。これもだめだろう。多分、違う。マナ返しとマナ回転返しでは返すマナの質が違う。


 僕はここに来て、自分のスキルの事を知ろうとしていなかった事に気づいた。

 ライガやストナ、カールもスキルに繊細さを感じる(マーロンは見てないけど)。多分、自分のスキルを知りそのスキルの利点、欠点を知り使いこなしているからだろう。ライガは更にその上をいく様子に芸術的に高めている。

 僕達、七本槍の道化衆はどうだろう……。敢えて言うならコハルの水滴だけがその域に達していたかどうか?

 ごめん、ゴン太、僕には無理だ。

 ゴン太を助ける方法が思いつかない。

 ゴン太は口にマナを集め始めた。これはブレス。この場でブレス攻撃はやばい。

「ゴン太!」

 ただ大声を出すしか無かった。なぜか涙も止まらない。これはゴン太に向けられたものか、自分の不甲斐なさからかも分からない。今、目の前にいるのはモンスター、敵だ。倒さないといけない。ブレスが来たらマナ回転返ししかない。出来れば意識を取り戻してくれ。

 口元にマナが集まった。ブレスがくる。僕は構えた。

 ……。止まった。ゴン太が躊躇した。ゴン太は思い出そうとしている。

 ゴン太。

 しかし、次の瞬間、いや、その一瞬、ライガの槍がゴン太の心臓を貫いた。

 一瞬の出来事だった。ゴン太はもう一度マナを口元集めた瞬間に巨大な身体が前のめりに崩れ、そのまま全身が倒れ込んだ。僕とストナはゆっくりと倒れたゴン太に近づいた。もう息をしていなかった。ライガのせめてもの計らいだろう。一瞬で葬る。これしかなかった。僕はそう必死で思い込もうとしていた。

「ごめん。」

 そう一言付け加えて、ゴン太の巨大な鼻先を撫でた。ストナも何を語らなかったが、同じことをした。


 次の瞬間、ゴン太がゆっくりと光の粒になる様に消えていった。いや正確に表現するとゴン太の肉体だけが消え、骨だけが残された。そして、肉体をなくした骨は再び大きな音を立てて崩れ落ちた。

「嫌な予感がする。」

 そうライガ言った。「嫌な?」僕は目の前を拭き、ライガに聞き返した。ライガはゴン太の骨を見て行った。

「ここ最近、あり得ない事が起きている。戦場の遺体から血がなくなり、バンパイアやゾンビの身体が消え、そして、このゴン太の肉体も消えた。」

「採取の結界陣か?」

 ライガにカールが答える。そして、カールが僕を見て説明するように言った。

「採取の結界陣とは通称「収集の陣」と言われるものだ。ある条件をつけてその陣を敷くと、その条件を満たした物を取り寄せる事ができる。」

「聞い事ないけど。」と、ストナが話を挟む。僕も初めて聞く言葉だった。

「かなり珍しい結界陣だと思う。一般的な見解になるが、仮にこの魔王城で陣を作り、収集物を武器とした時でも、魔王城にある武器を全て採収集出来る訳では無い。意図的置いてある物や、持ち主がいる物は採取出来ない。ただ、捨てられた物や放棄した物のみを採取するだけ。たぶん、いまこの聖京都全体に血や肉などを採取する収集の陣がかっているじゃないかな。」

 ライガか付け加えた。

「魔王大戦以前からあると言われている。戦争時にその陣を敷く事で味方敵の武器一瞬で回収する為に作られたものらしい。そもそもはゴミ拾いの為に作られたとも言われている。奪い取る系の陣と違い、広く薄く作る事が出来るなが特徴ではある。それでも、陣の手順がかなり複雑で膨大なマナを要するので、この広範囲の陣なら1時間が限度だろうな。」

 ライガはゆっくりと前進してゴン太の骨の前に行き、その骨に触れた。そして、静かに目を閉じた。

「バンパイアならマナの量も陣を練り上げる時間もある。しかし、バンパイアにこの陣を作る知識があるかは別だ。」

「リトダ教授。」

 カールがボソッとつぶやく。

「そう、師匠なら可能だ。」

「まだ生きているの?」僕とストナが同時に返した。

「いや、陣というものは練り上げるのにマナを必要だが、出来てしまうと手がかからない。城や街などにかかっている魔除け陣と同じだ。死んでも良いように事を進めていたのだろう。そういう人だ。とにかく、今は進むしかない。」

 カールが魔王城の回廊全体を見渡した。

「魔王の復活。」

 全員が顔を暗くした。

「ふざけるな、それを阻止する為に来てるんだ!俺は死んでも魔王の復活は阻止する。進め!」

 マーロンが僕達を進ませる。

 その時、回廊に遠吠えが響いた。次の第3回廊から火の粉が吹き荒れた。

「ドラゴンか!」


 第3番目の回廊。

 そこにはゴン太の2倍近いドラゴンが待ち構えていた。

「ゴン太ママ?」

 僕が呟くとストナが「パパかもね。」と付け加えた。すると、カールが話に入って来る。

「あれはメスだよ。火炎ドラゴンのオスとメスの見分け方は知っているかい?」

 カールの質問にもストナは「結構です。」と、即答した。カールの悲しい目はドラゴンより、更に遠くを見つめている様だった。

 

 

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