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七本槍の道化衆  作者: 熊野文助


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第十一話 宿命の戦い①

 王下聖騎隊の最強の「聖騎士」と言えば、1番隊隊長か目の前にいる5番隊隊長のマーロンと言って過言ではない。

 聖騎隊隊長の中で「聖騎士」の資質を持つのはこの2名だけである。マーロンは王位継承権18番目の資格持ち、聖騎士の中でも、最強技と言われる「聖閃光」と「聖撃昇」の両方を使える騎士。そして、最も知名度を上げているのは、最悪の人格者と言われ、恐帝マーブルと呼ばれている事。王族の中でも目を付けられたら終わりと言われる壊人格者である。

 その人物が目の前にいる。目を合わさないと言うより、存在を消す様に大人しくしていた。

 ここは冒険者連合支部長キグナスの部屋、キグナスを中心に聖騎隊4番隊隊長カール、6番隊隊長フェアラー、そして、5番隊隊長マーロンが僕達の対面していた。キグナスは立っていたが他の3人は椅子に座りガンを飛ばすかの様にこちらを睨んでいた。いや、睨んでいる様に見えた。

「なぜ、お前がここにいる。」

 真っ先に恐帝マーロンが話し出した。

 その視線の先にストナがいた。

 そして恐帝はストナの言葉より先に話を進めた。

「お前、王家側だと思っているかもしれないが、好き勝手出来ると思うなよ。聖騎隊の任務を全う出来ないヤツにいる場所はない。消えろ。この国から。」

 攻撃的口調でもストナは黙っていた、ただひたすら耐えている様だった。

 でも良く考えると、初めて会った時ストナと似ている。王家の人間ってこんな連中ばっかなのか?と思えてしまう。

 恐帝マーブルは座っていた席から立ち上がる。ゆっくりと僕の隣にいるストナの前まで歩いてきた。そして、いきなりストナの髪の毛を右手で上に引っ張り上げた。

 その腕が上へ上かりきる前に、自然と僕の身体も反応した。マーロンの腕を制して止めた。

「やめろ。女性に失礼だぞ。」

 次の瞬間、マーロンの鉄拳が僕を目掛けて振り下ろされる。素早い動きだが、通常の「開眼」で見切れるスピードだ。一応手加減しているのだろう。しかし、避けるつもりはない。一撃受けておけば、この男の怒りを少しは納める事が出来る。それにライガかキグナスがそれ以上は止めてくれるだろう。ストナへの理不尽な攻撃はやめさせないと。


 僕はその拳に合わせて歯を食いしばった。ただ、マーロンへは思いっきりガンを飛ばしてやった。僕、いや僕達はお前のその権力的暴力には負けない。その表明だった。幸いにも鉄拳は僕の頬まで到達しなかった。僕の頬に当たる前にライガがマーロンの腕を止めたのだった。……。助かった。

 マーロンはライガを睨んだ。一触即発の緊張が部屋中に充満したが、マーロンがライガの手をほどいて、椅子に戻っていった。

「で?」

 ドスの効いた声でキグナスに進行を促した。キグナスが話し始めた。

 

 キグナスは全員の前に紙を広げた。

「今回、聖騎隊4、5、6部隊と七本槍の道化衆で再度死狂の館を攻めてもらいます。ご存知とは思いますが、4番隊は魔法使いが多く、6番隊は槍の名手が揃っている。そして、5番隊は聖騎隊資質の方が多く集まっている。」

 キグナスは白紙の上に「館」と書かれた石を置き、その周りに6と書かれた石を置く、更にそれを取り囲む様に中心に5の石、5の石より少し離して5の石から左右に分けて4の石を置いた。

「まず、館は小高い丘の上にある。ご存知の通りですが。東北には愛宕山山嶺、西には有栖川に囲まれ、防備力は高い。攻めるは南一択。考えられるパターンは2つ。攻めて来るか、来ないか。敵が迎え打って来ない場合、6番隊が先陣を取り、死狂の館を包囲する。次に南側に5番隊、左右別れて4番隊が包囲します。一時的に包囲状態を維持して、それでも敵が出て来なければ、中へ突撃する。」

 そう言うと、キグナスは6の石を右へ、5の石を中央へ、4の石を左に置き直した。

「このまま死狂の館に攻め込む。館に入れば扉は3つ。右扉担当は6番隊。左扉は4番隊。中央は5番隊。ここまでは良いですか?」

 僕達は頷いた。そして僕の顔を見て言った。

「迎え撃てきた場合はこのまま6番隊を先頭に敵を崩して、死狂の館まで向かう。出てきた敵を倒して再度隊を整えてから死狂の館に攻め込みます。今回、七本槍や他の冒険者部隊は各部隊に分散して配置します。冒険者部隊の役割は支援と死狂の館から出る事です。」

 出ること?

「各部隊の目標はバンパイアの殲滅。全て殲滅させてから死狂の館から出る。死狂の館は出口が別空間と繋がっている為、一度出ると戻れない。殲滅させるまで戻れないと中の状況を知ることが出来ない。苦肉の策となるが、出口へ戻る度に1人づつ脱出させる。最悪、全滅してもどこまで戦ったのか分かる状況を把握して、援軍等を検討しなければならない。」

 ドンと机をマーロンが叩く。

「死ぬ気で付いてきな。クズから逃げさせてやる。生きていたらな。」

 そう言って、出ていってしまった。ストナの方から殺気を感じるが、あえて彼女を見なかった。

 すると、もう1人の隊長が近寄ってきた。

「隊長お久しぶりです。」

 と、6番隊隊長のフェアラーである。

「俺はもう、お前の隊長じゃない。隊長はお前だろ。」

「厳しいなー、私の心の隊長はあなたですよ。」

「キモい、近づくな。」と、ライガに言われて、しょぼくれて僕のところに来た。

「初めまして、私はフェアラーです。現6番隊隊長、元3番隊でライガ隊長の下にいたんですが、厳しい隊長ですよ。今も。」

 そう言って、フェアラーは僕に握手を求めて右手を差し出してきた。僕も右手を前に出して、握手をした。

 ……。何かが違う。何だろうこの違和感は。

 僕は目の前にいる、この6番隊隊長に不思議な感覚を覚えた。むしろ、不吉な感覚と言っていいのだろうか?分からない。……。「バーブル?」一瞬頭の中にその単語が浮かんだ。なぜ?

 その不思議な男は僕達に一礼をして去っていった。

 その後に付いて4番隊隊長も僕達に一礼をして出ていった。彼からは特別な雰囲気は感じられなかった。


 3人の隊長が去っていって、キグナスの部屋は静まり返っていた。

「本題に移るとしよう。」

 そう言うと、キグナスは僕達に椅子へ座るように促した。

「今回の戦い国王軍とバンパイア3体。こちらだけが、バンパイア軍団にかなりの痛手を受けた。どうしてだと思う?」

 キグナスは不思議な質問をした。どうしてか?まず、考えられるのは、バーブルの強さは桁違いの強さであると言う事。リトダにしろ、バンパイア達の強さは桁が違う。ゾンビ化した人達も人間の頃より強くなっている様に感じた。まともに戦った事がないから、何とも言えないけど。ただ、確かに疑問は残る。全滅するだろうか?いくら相手が強くても、こっちもそれなりの戦力なのに。

 9番隊は副隊長不在、隊長と3番手がバンパイアに殺されて戸惑う中をほとんどのメンバーが殺された。完全に不意打ちにあったからだ。しかし、国王軍1軍2軍連合を全滅させるのは至難の技だ。戦いが終わり、撤退準備中だった油断状態にあった9番隊とは違う。戦闘前の大軍団に不意打ちを仕掛けて全滅を狙う事が出来るのか?僕なら出来ない。

「内通者がいるのか?」

 ライガが答えた。その答えにキグナスは口元を緩めて答える。

「私もそれを疑っている。立証できる証拠はないが。」

 僕は2人に質問した。

「でも、バンパイアに内通して何の得があるだろう?」

「さあな、俺は内通者の気持ちはわからん。が、リトダいや師匠は昔王下Bランクだった。あの人は知識とマナの扱いに長けていたが、戦闘的な力はDランクと言って過言ではない。あの強さはバンパイアとなった事に起因するのか、その後の鍛錬か分からんが強さを欲する者には魅力的かもな。」

 キグナスは手に何かを持っていて、それを開いた。そこには見た事もない不思議な石があった。

「最近出回っている魔増石と言うものだ。マナを10%増幅させる事の出来る石だ。」

 僕はその石を手に取ってみた。その瞬間、脳裏に「バーブル」の文字が浮かんだ。怖くなってすぐにキグナスに渡してしまった。キグナスはその様子を見て聞いてきた。

「どう感じたかい?」

「バンパイアのバーブルと対峙した感覚になりました。」

「なかなか鋭い感覚をもっているな。この石は魔吸石に魔王の瘴気を意図に組み込んである。」

 魔王?キグナスは魔増石を箱に入れた。

「この石は持つ者のマナを引き上げるがマナが弱いと逆に瘴気へと呑まれてしまう。先の戦いでバンパイアの出現と同時に仲間割れが至るところで発生したと報告があった。その時、襲ってきた仲間の懐からこの石が見つかっている。作為的に誰かが忍ばせて、混乱を引き起こさせたか、自発に裏切ったかは分からない。しかし、バンパイアの攻撃は既に聖京都の中に入ってきていると言って過言ではない。」

 ライガがキグナスに向かって言う。

「それで本題とは?」

 キグナスが何名かのリストを出した。

「このリストに載っているメンバーはある勉強会に参加した者達だ。」

 その勉強会とは「マナ研究会」というものだという。一般的にはどこにでもある勉強会らしい。マナや資質を研究するグループは聖京都内で多く、そのほとんどが部隊間を超えての集まりである。しかし、この勉強の問題はそこには登録されている人物達だ。

 レパート、ボウアローが首席として登録されていた。偶然か必然か?そして、そのメンバーを確認がてら指で追っていくと、僕は指を止めてしまった。ユウの名前が載っている。しかも、アイカまで。どうして?

 グロスやコハルの名前が無かった。僕は少し胸を撫で下ろした。

 そして、さっき会ったばかりの人物、フェアラーの名前も載っていた。あの時の感覚はフェアラーも魔増石を持っている事になる。魔増石なんて今まで聞いたこともない。

 キグナスが僕の方を見た。

「本題だ。君達七本槍の道化衆には、3部隊に別れて配置してもらう。最終目的は死狂の館、バンパイアの殲滅。その前に裏切り者の炙り出しに協力して欲しい。」

 ストナが怖いくらいの笑みを浮かべた。

「裏切り者なら、即殺してもいいよね。私5番隊に配置を希望する。」

 いやいや、恐帝からは威圧感は半端なかったけど、不穏な気配は感じられなかったから。さっきの怒りをどう発散させようかしか考えてなさそうだった。

 問題は6番隊フェアラー。

 間違いなく内通者だ。

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