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七本槍の道化衆  作者: 熊野文助


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第十話 マナの戦士②

 迷いの森での死闘の翌朝早く、僕達は聖京都に向けて出発した。

 七本槍の道化衆は王下聖騎隊8部隊と別れて、聖京都に戻る事となった。

 王下聖騎隊8番隊は元々の任務を遂行し、迷いの森を見張りを含めて滞在を決めた。王下聖騎隊の9番隊の3名も8番隊が引き受けて合流する運びとなった。

 

 僕達七本槍の道化衆は北の聖京都を目指して進んでいた。迷いの森から北上して街道に沿ってひたすら歩いた、当たり前の様で当たり前でなかった光景を目の当たりにしていた。迷いの森を目指して旅に出たのは3回目、過去2回は死狂の館経由で聖京都に戻ったので、歩いて戻るという当たり前の行為が今まで無かった。不思議な感覚である。不思議な感覚と言えば、目の前を歩く彼女もその1つだと思う。

「そこ、2名、送れてるわよ。タラタラ歩かない。お昼前には聖京都に戻るからね。分かってる?足を動かしなさい。はい、1,2、1、2。」

 ストナはそう言って、手でリズムを取り始めた。手をリズミカルに叩いて、膝を突き上げて歩き出した。まるで軍隊かマーチングバンドだよ。と思っていると、その動きにつられて、ドラゴンのゴン太がリズミカルに歩き出した。

「あ、偉い。」

 そう言ってストナはゴン太を撫でてやる。その後、こっちを見て、リズムを上げて「やる気が足りない、やる気が」と言いながら、リズムを取るのを辞めない。

「おい、ナギト、あのお嬢さんの口と手を閉じさせてくれ。」

 マルマルがなぜか僕を睨み付けてくる。勘弁してください。前方を見ると、ライガとゴアは既にかなり前を歩いていた。あの二人逃げたな。


 そもそもなぜ彼女がここにいるのか、まずはそこから説明した方が良さそうである。話はまず昨日の夕方に遡る。

 僕達は体力の残っているメンバーで9番隊の遺体を片付けていた。遺体は隊長ともう1人だけが遺骸としての形を残し、あとの隊員は言い方は良くないがミンチ状態であった。僕達はその遺体をかき集めて墓を作り、そこに葬った。

 リトダとの戦いで亡くなった2名も一緒に。この戦いで亡くなったのは、8番隊、9番隊で16名。遺体はゾンビとなって消えてしまったが、ほぼ全滅の3番隊と11番隊を含めると40名近い犠牲者が出た。

 奇妙な事は、僕達が遺体を葬る為に丘へ戻ると、あれだけ流血の惨劇となった丘の上であったが、血のあとは全く無くなっていた事だ。何が起こったのは分からない。肉塊からも血の気が無くなっていた。血と言うか、赤黒さが無くなっていた。


 夕食の時、七本槍の道化衆は8番隊とは別に食事をしていた。

「ナギト、明日の朝の一番に聖京都へ向かう。いいか?」

 ライガにそう聞かれて、僕は頷いた。早馬で聖京都に向かった9番隊副隊長が無事かどうかは分からない。その為、僕達も急いで聖京都へ向かう事になった。僕が明日の段取りを話していると足音が近づいてきた。

「ナギト!水臭いな、こっちで食べなよ。」

 ストナが少し食料を、持ってやってきた。そして、僕の隣に腰をかけた。それを見て、ライガが話出す。

「ナギト達にはまだ話していなかったが、明日からお嬢ちゃんが七本槍の道化衆に加わる事となった。」

「え?」僕とマルマルが同時に声を発した。

 ストナは立ち上がり、全員に軽く頭を下げて、挨拶をした。

「どうして?」

 僕は突然の内容にそう声を出した。

「あれ?本当は嬉しいくせに。」とストナは僕の横腹をくすぐってきた。

「からかうのはやめてくれ、でも、どうして?」

 ストナは真面目な顔をして、答えた。

「理由は2つよ。1つはバンパイアと戦うには聖のマナが必要でしょ、力を貸してあげる。」

 やっぱり、上から目線。

「もう1つはマナの戦士の警護よ。」

「マナの戦士?」

 ライガが僕を見て答える。

「ナギトにはいつか言うべきだと思っていた。せっかくだから説明する。ナギトの資質は魔法剣士だな。どうして、ナギトは自分が魔法剣士だと分かった?」

「どうして?資質検査装置で資質が分かったけど。」

「それなんだ。」

「それ?」

 ライガは続けて説明を始めた。

 「それが問題なんだ。資質の分かる方法は資質検査装置と資質が変わった時に頭の中に響く音だけ。基本資質の研究はかなり進んでいる。しかし、生まれつき持つレア資質の研究はまだ未開の地だ。この資質検査装置は何によって判定するか知っているか?」

 僕は首を横に振る。

「過去の統計からの推測でしかない。推測外の資質は一番近い値を示す資質に振り分けられる。前にも言った4番目の英雄エディの資質も魔法戦士。しかし、俺の師匠、リトダはこの間違いを指摘した。通常一般の資質は各自が持つ属性に縛られる。」

「属性ってあの」

 隣でストナが答える。

「そう、私が教えた事よ。属性は内4属性と外4属性。得て不得手があるから、一般的に内1属性と外1属性から内2属性と外2属性まで、2から4属性を持って生まれて来ると言うのが通説。でも、この属性は何かで調べられる訳では無いから、資質とスキルからの推定でしかないの。」

「師匠はこの属性に当てはまらない人が数人いる事に気がついた。その1人はマナの英雄エイディ。伝承では彼は4体の外属性を持つマナ獣を従えて、7人の仲間(3人英雄と4人の従者)と一緒に魔王を倒した。しかし、これはあり得ない記載である。マナ獣を使役するには逆属性の獣魔は使役出来ないとされている。また、普通の支援魔法の「魔法付与」のスキルも自分の属性を付与するスキルの為、多くて4個とされている。エイディは全てのマナを扱えたという記載も残っている。その為、エイディの他に魔法戦士が数人いて、彼ら数人でマナ獣を使役し、マナ寄せをしていた。そして、エイディが代表者と言うのが一般的な考えだった。しかし、師匠の提唱はエイディの資質は通常の魔法戦士資質とは別物、マナの戦士資質だったと論じた。マナの戦士は全てのマナを持つか、あるいは全てのマナを持たない資質者だと仮説を立てた。師匠は全てのマナを持たないと明言していたが。結局、師匠はマナの戦士を探し出す事が出来ずに、仮説は仮説のままで消えていった。」

「そして、ナギト、あなたが現れたって訳ね。私もリトダ教授の論文は読んだわ。面白い仮説だけど、生まれつき、属性を持たないなんて、信じられなかった。でも、「聖回復」で全快した人始めて見た。」

「属性を持たない資質が他にもあるの?」

 ストナは首を横に振り、ライガを見た。

「師匠は一度だけ会ったことがあるらしいが、北の都近くにある村で、本人は無刀剣士と自称したそうだ。」

「無刀剣士?」僕とストナが同時にツッコむ。それってただの格闘家?

「その無刀剣士は柄だけの剣を手に取ると、見えない剣身の回り外4属性のマナを螺旋状に纏わせて、魔炎熊の大集団を一閃で消し飛ばしたところを見たと言っていた。」

「ないない、それはない。」ストナがツッコむ。

「目撃者は師匠だけではない。そこで寝ているおっさんもだ。」

 そう言うと、ライガは完全に寝落ちしているマルマルを見た。

「マルマルは師匠の旧友だ。2人で世界中を旅していた時期があったそうだ。マナの剣士を探しに。」

 その話を聞いていたゴアが笑い出した。

「それはリトダに担がれているぞ。あいつが世界中を旅していたのは単なる現実逃避だ。仕事をしたくないから逃げていただけだ。だが、その無刀剣士がマナの戦士の発想の元になったのは確かだ。あいつは無刀剣士とエイディを重ね、マナの戦士と言う資質を提唱し、それからあいつは研究に取り憑かれたのんだ。」

「ゴアさんもリトダさんの事詳しいですか?」

 ゴアは更に笑いながら答えた。

「この歳まで生きてくると、色々な噂が入ってくる。不思議と最近の記憶はすぐに無くなるのに、昔の記憶は無駄に覚えているものだ。リトダは発想に富んだ男だった。あいつとしては探し求めたマナの剣士と弟子に葬ってもらえて幸せだろうよ。」

 ちょっと話がナーバスになってきた。

「ふーん。」

 突如として、ストナが僕の方をジロジロと見た。なんでこっちを見るんだ。

「やってよ。」

「何が?」

 そう言うと、立って剣を振る様な動きをした。

「剣身の回りに螺旋状のマナを纏わせるヤツ。」

「それは無刀剣士の技だろ、僕はマナの……、魔法剣士資質です。そんな事はできません。」

「やってみないと分からないでしょ。今から特訓よ。」

 そう言って僕の体をくすぐりながら、立たせようとする。やめろ!

「1人座ってくつろいで。少しは先輩達にお茶くらい配りなさい。そうでないとストナ様特製くすぐりマッサージをプレゼントするわよ。」

 やめろー。

 その後、ストナを自分のテントへ帰らせるのに1時間近く掛かった。笑ったのか、怒ったのか、分からない時間だった。

 


 そう言う訳で、どういう訳で?ストナは七本槍の道化衆の仮メンバーとなった。

 結局、現在メンバーは正規メンバーの僕だけ。仮メンバーのライガ、マルマル、ゴア、ストナ。あと、ドラゴンのゴン太。一週間近く前に迷いの森に向かったメンバーとはガラリと変わってしまった、けど、心強い仲間が出来た。

 あいつらが見たらどう思うだろうか。怒るだろうか。いや、笑って喜ぶだろうな。

 

 和気あいあいと聖京都に向かっているが、誰一人警戒を解いていない。いつ奴らが現れるか分からない。戦いに備えながら、北上した。

 


 警戒をしていたが、以外に何事もなく、聖京都に到着した。

 逆に聖京都、死狂の館討伐部隊は混乱、いや、混迷の中にあった。偵察も兼ねて国王軍第1軍、第2軍の連合で死狂の館を取り囲んでいたが、昨日の午前中にたった3体のバンパイアに壊滅させられたと言うのだ。

 両隊長は不在だったが、国王軍司令部、最高顧問が指揮にあたり、死狂の館を包囲した。しかし、前日最高顧問含め80名近く壊滅、数10名の新人隊員だけが逃げる様に帰還した。最高顧問は高齢ではあったが元王下Sランク(聖京都の中でもトップクラスのランク保持者)。軍隊員も王下Aランクから王下Bランクまでかなりの高ランクが揃っていた。それなのに……。

 また、3体のバンパイアはそれぞれ、1体は大剣、もう1体は片手剣の2刀流、最後は弓使いだったそうだ。そして、3体のバンパイアは南の空に消えていったという目撃証言もある。南と言えば、迷いの森。

 ボウアロー、レパード、ユウ、この3人いや3体だろう。彼ら、いや、バーブルも含めたバンパイア軍団との戦いも近い。そう感じてならなかった。


 僕達は急いでキグナスの待つ冒険者連合へ向かった。

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