第六話 ひとときの休息②
「最も輝く光の鉱石」、通称「幻吸鉱」通常マナを吸収する鉱石は魔吸石と呼ばれる石にマナが付着して出来る。地下をめぐるマナのうねり魔吸石の鉱山が出会うと、マナの鉱石が取れる鉱山となる。こういった鉱山は各地に存在する。
通常魔吸石は質量に対して吸収量は一定でそれ以上のマナは吸収できない。実験などで、無理やりマナを吸着させようとすると許容値を越えた瞬間に、鉱石は粉々に割れてしまう。しかし、伊吹鉱山、光の坑道で取れる「最も輝く光の鉱石」は最高の吸収値を100%とした場合、500%を越えるとも言われている。故に、幻の吸収力を持つ鉱石「幻吸鉱」と言う俗名が付けられている。
なぜ、不思議な鉱石が出来たかというと、仮説ではあるが、光る坑道直下に光のマナのうねりがあった。そして、もう1つ、この地が何百年と魔王の支配下になり、魔王が放つ闇の力で覆われっていた事が影響したと言われている。
光を嫌う魔王の闇のマナが光の鉱石を包む様に覆う。そして魔吸石から光のマナを奪おうとする。すると、魔吸石ももっと光のマナを吸収しようとしてマナを取り込む。この繰り返しで、幻吸鉱は生まれたとされている。その証拠に幻吸鉱の周りには闇の瘴気がまとわり付いており、取り出す瞬間に瘴気を処理して取り出さないと、瘴気にあたって死ぬ事もあるという。
キグナスは「幻吸鉱」採取についての心得を淡々と僕に説明した。
「説明は一通り終わったけど、何か質問はあるかな?」
「その瘴気の処理ってどうするのですか?」
「簡単に言うと、ゆっくり出す。」
「ゆっくり出す?」
「幻吸鉱と闇の瘴気は岩の中にある。その岩を掘って空気に触れた瞬間、闇の瘴気は飛び出す。大切な事は一気に掘らないという事。ゆっくりと小さな穴を明けて少しずつ瘴気を出せば大丈夫。元々、光の坑道内にも闇の瘴気はあるからね。」
ただし、とキグナスは僕やライガに再度目線を置いてから再び語りだした。
「幻吸鉱に限らず、光の鉱石は王下鉱石に認定されている。1回の採取で5個までと決まっていて、5個以上の採取はこちらで回収することになっているから、忘れないよに。」
「5個というのは、申告制ですよね。仮に申告しないとどうなりますか?」
「いいえ。申告制ではありません。」
そう言うと、キグナスは手を叩いた。病室の隅にいきなり人影が現れた。そしてその人はキグナスの隣へ歩いて来た。身長は180程、年齢はフードを被っていてはっきりと分からないが、60近いと思われた。夜中の病室でと突如現れたら、ホラーだなと思う。
「爺、まだ生きていたか。」
ライガがその人に声を掛けた。
「お前は何をしている。王下聖騎隊を辞め、自分で部隊を作るのではなく、人の部隊にちょろちょろと節介だけ掛けて、もう40過ぎだろ。こんな所で時間を無駄にするな、将来を見据えて仕事をしろ。」
「うるせー爺、お前だって、大人しく引退してろ。」
ライガと言い争いとしたその人はゴアと名乗った。
元王下聖騎隊の指南役として何十年と王下聖騎隊に入って来た新人の教育担当をしていたいう。二人の様子からライガさんが入った頃、すなわち、死狂の館の戦いの頃には既に指南役をしていた事になる。年齢は72歳、Cランク、密偵資質。
先程までは隠密系のスキルで部屋の隅に隠れていた事になる。まったく気が付かなかった。マナ寄せ開眼なら分かるのだろうか?ゴアは今回、七本槍の道化衆に同行して光の坑道を案内してくれる案内人である。正確には案内と監視。
光の坑道は一般的には地下6階の洞窟とされている。しかし、実際に幻吸鉱が発掘されるのは地下7階。通常は一般人が入れない様に封印がされている。そんな話、聞いたこともないし、聴きたくもなかった。
翌日、退院するとゴアの七本槍の道化衆登録を行い、光る坑道へ向けて出発した。ゴアの登録は再登録という形であった。僕が入る前、水脈を発見した任務の際にも案内人を勤めたのがゴアだったらしい。ライガ、ゴア、僕と3名になった七本槍の道化衆は北西にある光る坑道を目指してビワの湖沿いを北上していった。
途中、コネ村まで来ると、この付近で少し休憩しようとライガが言い出した。ゴアがまだ早いと反対をすると、会いたい奴がいると言って、無理やりライガは隊の方向を街道から細道へと向きを変えてしまった。最初は文句を言っていたゴアも、途中で言うのを止めた。言っても無駄と思ったらしい。無口で後を着いて行った。
小さな山の麓に洞穴があった。
「マルマル、いるか?」
ライガがその洞穴に向かって大声を上げるが、中からは何の返事もない。音も聞こえなかった。ライガはその大声を何度も繰り返した。
ゴアが中に石を投げる。その石の反響音を広い。
「ここには居ないぞ。この洞窟そこまで深くない。もし奥にいるならすぐに気づく。」
とゴアが言ってもライガは止めず、何度も大声で呼んだ。10分程繰り返していると、近くの石が動いた。そして、そこから一人のドワーフと思われる種族が顔を出した。
「うるさい、ここだ。入って来い。」
そう言って、入り口を開けたまま、中に入っていった。ライガが後に続いて入っていく。僕達も後に続いた。
その洞窟?家は不思議な壁で出来ていた。岩と土を掘って造られているのに、土臭くない。土との間に何か不思議なものが練り込まれている様だった。手で触っても汚れないが、見た目と手触りは土である。
「あんまり触っていると、気を悪くするから、何も触るな。」
ライガに注意された。椅子も、テーブルも変わっていた。座り心地は悪くないが、切り株の椅子なのに座るとソファーの様なふわふわ感に最後まで慣れなかった。茶菓子を出してくれたが、毛虫の素揚げの様な物と匂いがキノコの匂いがする飲み物も一切口を付けられなかった。ただ、ゴアは気に入って飲んでいたので、食べらない物では無いようだ。
僕達を座らせて、少し経って、マルマルがライガを見て言った。
「で、何の様だ。」
「仕事を手伝ってほしい。」
「断わる。」
ライガの話が終わる前に瞬殺で断わって来た。
「報酬はそれなりに出す。」
「要らない。人間の報酬に興味はない。」
「光る坑道、幻吸鉱、どうだ。5個採取する権利を得た。上位3つを渡してくれれば、残りはお前にやる。どうだ、悪くないだろ。」
ライガが幻吸鉱という言葉を出すと、興味を持ったのか、今までとは態度が変化した。
「そういう事か。俺の鉱石サーチのスキルを利用する代わりに、幻吸鉱をくれるという事か。」
「そうだ。取引として悪くないだろう。」
マルマルは少し、止まって考えていたが、そのうち、何を探し始めた。
「残念だが、光の鉱石は持っている。」
と、光の鉱石を手に持って、こっちに見える様に向けて来た。
「幻吸鉱だぞ、マナの力が根本的に違う。」
マルマルはライガを見て少し、馬鹿にする様に笑った。
「お前は何も知らないな。どうせ、欲に負けて、高い金を出して、発掘の権利を買ったのだろう。幻の石だぞ、知らないのか?幻吸鉱は闇の瘴気が光の鉱石に取り巻いて出来る鉱石だ。」
「そんな事は知っている。」
「だから、闇の瘴気が無くなれば、徐々に光のマナを放出し始めて、10年後くらいにはこの光の鉱石と同じマナ量に戻る。保管が難しい上、コレクションには不向きの石だ。だから、私がお前達に手を貸す必要性がない。」
「そこは何とか頼む。お前の力が必要だ。他に必要な物があれば、何でも用意するから」
ライガはマルマルの腕を両手で握った。
「離せ、そもそも、そんな幻吸鉱なんか何に使う。魔法使いやマナの戦士が使わないと、宝の持ち腐れだ。お前の師匠も言っていただろう。」
ライガは僕を指さした。
「居るよ。マナの剣士が。」
マルマルは僕の方を見た。いきなり、僕の方へ駆け寄って来て、目の前に来て、勝手に人の顔や髪を触りだした。僕は何が起こっているのか全く分からず、なすがままにされた。
「あんた。マナの剣士か?」
「マナの剣士?」
「マナの剣士資質かと聞いている。」
「違います。僕はナギト、魔法剣士資質です。」
と否定したのに、マルマルはライガの方を向き、魔法剣士資質だってよ。と大はしゃぎしていた。人の話を聞いているのかこのおっさん達は。
「あんた、いや、ナギト、「マナ寄せ」ってスキルは使えるか?」
「使えますよ。」
すると、再度ライガを見て同じようにはしゃいでいる。
結局、マナ寄せまでやらされて、結局、僕とゴアは外に出て待つ事なった。
「なんなんですか?あの人達は。」
すると、ゴアが笑いながら言った。
「男の趣味は時として時空を越える。考えない方がいい時もある。レア資質好きや、資質狂は世界中どこにでもいる。ナギトはそう言った輩と気が合うかもな。」
いや、僕は合わないです。と思う僕であった。
1時間後、マルマルとライガが出て来た。どうやら、マルマルは一緒に来てくれる事になった。レア資質好きの心を掴み、僕達はメンバーを1名追加して、伊吹鉱山、光る坑道を目指して進み始めた。
マルマル、土ドワーフ族 (50歳くらい)人間に当てはめると、鉱山守資質 スキルは鉱石サーチ、鉱石割、鏡合わせ。
人の事レア資質と言った割には本人の方がレア資質だと思ってしまう。鉱山守で鉱石サーチのスキルを持っていれば一生食っていけるだろう。
更に歩くこと半日、目の前には光の鉱山がすでに目で見え始めていた。




