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七本槍の道化衆  作者: 熊野文助


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第五話 死狂の館と魔女②

 3魔女の次女、暗闇の魔女バーブル。

 彼女達が何者かは謎のままである。ライガの個人的調査の結果では、魔王の部下のバンパイア以外の事は分かっていない。聖京都の文献からもそれ以上の事は載っていない。

 魔王バンパイアロードの妻とする説や、子供とする説もあるが、正式には全く分かっていない。魔王討伐後、ほとんどのバンパイアが消えていった中で生き残っていた生き残り。確かな事は魔王の力を最も濃く受け継いでいる事と、3魔女はそれぞれ得意分野が違うという事だけだった。

 魔王大戦に初期から登場している彼女達だが、聖京都に残る聖の英雄の文献では、最終戦近くで登場する記述がある。アタゴ山麓に建てた館を根城として、魔王城に近づく者を片っ端から餌にしていた。そして、最終決戦前に、英雄連合によって館ごと葬られたと記されている。



 マナ寄せ開眼でバーブルを見ると、恐ろしいくらいのマナが心臓を形作っていた。初めて会った昨日、実際に戦っていないが、戦闘が行われていたら、僕達は一瞬で全滅させられていただろう。あの時は不意打ちでユウを失った。しかし、全員が万全の状態で挑んでもとても勝てない相手だろう。でも、今、僕には強い味方がいる。

 僕は隣にいるライガを見上げた。この人と一緒にいると安心する。相手が強敵でも、力強さをもらえる気がする。


 バーブルが僕の隣にいるライガの存在に気が付いた。一瞬で目の色が変わる。

「あら?ライガ?そう、老けたわね。もういい歳だからかしら。これだから人間は嫌な生き物よね。」

「久しぶりだな。覚えていてくれて嬉しいよ。」

 ライガを警戒心を解かずに返答する。バーブルは突如として上着を脱ぎだした。

 ノースリーブの紫に発光しているドレスの露出した両肩に奇怪な跡が付いている。バーブルはその跡をゆっくりと触った。

「覚えている?この跡を?」

「ああ、あの時、引き裂いてやったのに、もう治っているとは残念だ。」

「治っている?」

 その言葉にバーブルは反応した。一瞬ライガを睨め付けた様にも見えた。

「これが治っている?30年、30年も経つのに、この傷だけは癒えない。なぜだか分かる?」

「さあね。」

「この傷が貴様を殺せと言っているのよ。」

 バーブルが攻撃態勢に入った。こちらも光の石のマナ寄せを使って、戦闘準備に入る。

「同感だ。俺もこの槍と腕が、あんたを殺せなかった事を30年、悔いている。今日、ようやく、誓願が叶うな。」

 バーブルが動いた。早くて、目では追えない。マナが僕を狙っている事を示す。いきなり心臓か。僕はマナの動きだけを読み、攻撃をかわした。その瞬間、右肩に激痛が走る。

「痛い。」

 避けきれなかった。右肩をえぐる様に表面を持っていかれた。ただ、致命傷ではない。

 ライガが僕への攻撃の後にバーブルへ槍を突き立て為、バーブルは一旦離れた。空を飛べる様で、少し上の空間に浮いている。

「ふん、小僧もなかなかやるわね。私の攻撃をよけるなんて、生意気よ。」

 そう言って、右手に付いた僕の血をなめた。

「あら、美味しい。懐かしい味ね。」

 そう言って、もう1回舐めまわした。

「決めたわ。あなた達はゆっくり殺してあげる。ゆっくり殺して、全ての血を啜ってあげるわ。」

 高らかに笑い声をあげる。ライガゆっくりと構えた状態でバーブルと距離を取り、僕をかばう様にバーブルとの間に立った。肩の傷が痛くて上手く剣を持てない。コハルが残してくれたさざ波の唄の効果はまだ継続している。徐々に回復出来ている。でも、油断は出来ない。バーブルはゆっくり殺すと言っているが、さっきの一撃をまともに食らっていたらアイカの様に心臓を一突きされていてもおかしくない。

 彼女の手刀は今まで戦ったどの剣閃よりも鋭く感じる。

 ただ、ライガの槍も同様に鋭い。この人に掛けるしかない。こういう時に支援魔法が使えればと悔やむ。でも自分が出来るのはマナ寄せとマナ返しだけ。圧倒的な力に対しては無力でしかない。マナ寄せ、そうだ。と僕は自分の懐に入っている光の石を見つめた。その時だった。

 バーブルが仕掛けて来た。出遅れた。

 目で確認出来なかったが、ライガとバーブルのマナが激しくぶつかった。その後、僕に衝撃が来て吹き飛ばされた。前方からものすごい圧力が掛かり、壁に何度も打ち付けられる様な衝撃が背中にあった。

 気が付くと倒れていた。気を失っていたのか?何が起こったか分からないが、僕は倒れ込んでいた。肩に加えて、腹の下辺りと、背中に激痛が走る。痛みを抑えてゆっくりと立ち上がる。ライガが戦闘態勢で立っていた。

「ナギト、大丈夫か?」

「なんとか、何があったんですか?」

 僕は周りを見回した。

「ここは?」

「出口側のエントランスホールだ。」

 見覚えのある風景だった。入り口とまったく同じ作りではあるが、はっきりと出口の扉ある。

「あの怪力魔女に吹き飛ばされた。不幸中の幸い、出口に来られた。ナギト、ゆっくり出口に行け、あの魔女は俺が抑える。」

「でも。」と僕が一言返そうとすると、こちらの考えを読んでいるように。

「お前は逃げろ。その「マナ寄せ」はレアスキルだ。あいつらを倒すにはお前の力がいる。でも今ではない。勝機を待て。無駄死にするな。ここから出て、キグナスに報告すれば、あいつは必ず動く。」

「はやく、そろそろ、魔女がくる。」

「ライガさん。……」


 魔女はゆっくりと歩いてエントランスホールにやってきたなぜが僕を睨みつけて来た。僕は彼女との距離を一定に保つ振りをして、エントランスホールの出口の方へゆっくりと進んでいく。ライガが彼女を引き付けておけるのは3秒。その瞬間に出られる位置まで行かないとこの作戦は失敗する。あと、少しだ。

 しかし、彼女に気づかれた!?

 一瞬で彼女のマナが移動する。天井側にマナが移ると、出口を塞ぐように立たれてしまった。

 作戦失敗。


 いや、予想的中だ。



 数分前の会話に戻る。

「はやく、そろそろ、魔女がくる。」

「ライガさん。……。僕に作戦があります。」

「作戦?」

「僕達が出口にいる事は分かっている。それなのに急いで来ない。多分、こちらの動きを把握している。僕が今急いで逃げようとしたら、多分、瞬間的に移動して殺すと思います。」

「…………、そうだな。」

「でも、ゆっくり移動したら、ライガさんならどうします。」

「出口を塞ぐ?」

「今、コハルが残した「さざ波の唄」のスキルが僕の中に流れています。このスキルに光のマナを寄せて、バーブルにマナ寄せするとどうなるでしょうか?光の回復波がバーブルに押し寄せる。必ず隙が出来ます。その時、あいつの心臓めがけて攻撃してください。そして、扉を抜け出れば、太陽の光であいつにとどめをさせます。」

「おまえ……。分かった。俺があいつを引き付けられる時間は3秒。あいつもそれを分かっている。その合間に必ず、動く。油断するな。」

 僕達はお互いを見合った。


 予想的中。

 僕はコハルの「さざ波の唄」に光のマナを寄せて、マナ寄せをする。

「コハルの恨みを食らえ。マナ寄せ、光さざ波の唄だ。」

 マナ寄せはうまくバーブルに的中した。バーブルの中に光の攻撃波が流れている。顔が痛みに歪む姿が確認できる。

 1回目は耐えたようだが、2回目に隙だ出来た。

 ライガはその隙を逃さなかった。

「突撃の槍」

 槍はバーブルの心臓付近を貫き、ライガはそのまま、扉をこじ開けて、消えて行った。

「やった。勝った。」

 本当はコハルの石を持ち帰りたかったが、さざ波の唄をあいつにやってしまったので、回復機能を失った。今にも気を失いそうな痛みが全身を襲う。その痛みに耐えながら、僕はコハルの方を向き、一礼をした。

「終わったよ。ありがとう。コハルのおかげだ。必ずもう一度来る。」

 そう言って、僕はこの館を出た。



 太陽の光が燦燦と顔を照らす。今日も最高に良い天気だ。全てが終わった。

 光り輝く大地の様に太陽の光を輝かせていた。雲1つない青空。壁伝たいに心地よい風が通り抜けていく。ふと、空を見上げると、空に1つの影が浮いていた。終わったはずだった。

 太陽を背にバーブルが浮いている。なぜ生きている?

 空中に浮かび、心臓の付近を押されているが、死ぬ様子ではない。誰かを抱きかかえている。ライガ?違う、明らかに別の人だ。ライガは?僕は辺りを見回すと、僕より少し北側でバーブルと向かい合っていた。しかし、槍の穂が取れている。

 キグナス達もいる。どうやら、壁の調査中に出くわした様だ。それにしても、何があったんだ?

「やってくれたな。お前、名前は?」

 バーブルは僕を見て言った。

「ナギトだ。なぜ生きている。死なないのか?」

「は?太陽の光で死ぬと思ったのか?太陽の光で死ぬのはゾンビくらいよ。私達には心臓にコアがあるの。太陽の光くらいで死ぬと思うわない事ね。まあいいわ。名前は覚えたわ。ナギトとライガ、お前達は私がゆっくりエキスを吸い尽くして殺してあげるわ。楽しみにしていないさい。」

 そう言って、抱きかかえている男性の首に歯を当てたと思うと、一瞬で全てを吸い尽くした。吸い尽くされた男性は骨と皮だけになって、落ちて来た。

「じゃあね。」

 そう言って、迷いの森の方角へ飛んで行った。


「ライガさん、大丈夫ですか?」

 僕はバーブルの姿が見えなくなってから、ライガさんに近寄った。

「大丈夫だ。しかし、油断した。一撃を喰らってしまった。」

 そう言ったかと思うと、ライガが倒れ込んだ。

「ライガさん。」

 倒れ込むライガを起そうとしたが、いつの間にか、僕も気を失っていた。

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