陽だまりに猫
刻が静かに、はらはらと流れている。
微かに蘇ってくる樹の香り、蒼い草の匂い。蝶が音もなく、不規則に飛んでいる。
はたはたとそよぐ風が心地よい。静かに目を閉じて、伸びをする。
背中に、とく、とく、と刈り込まれた芝の鼓動が伝わってくる。虫はカサカサと這っている。
気持ちの良い午後だ。
陽だまりが、まるで何かを招くかのようにひらひらと全てに降り注ぐ。
なんて穏やかな日なんだろう、今日は。
ごろん、と寝返りを打ってみる、そのまま、ごろんごろん、と庭を転がってみる。
目は閉じているのだけれど、周りの景色がきゅるきゅると回る様子が手に取るようにわかって、
ほんの少しだけ滑稽でもあり、ずっと回っていたくもあった。
けれど、へばっちゃうからすぐに目を回す……うん、目を回したんだ、と自分に言い聞かせ、
そのままぺたん、と最初のように横たわる。
なんだかとてものんびりしていて、今までのことが嘘みたいに思えてきた。
ふぁーあ、こういう日はゆっくり寝るのが一番だよね。
もう一度、思いっきり伸びをして、仰向けになる。そして、まぶた越しの光を、
改めて直に見渡した。
清々しいほどの青空だ。淡い、淡い蒼い色に、ほんのりと千切った雲がゆったりと覗いている。
その中を、鳥がたった一羽で、雲よりもゆったりと飛んでいる。とても自由な感じがする。
もちろん僕も自由な生き物だけれど、こうやって空を見ていると、鳥も大変すばらしく感じる。
大きく翼を広げ、遥か下を見渡す景色はどんなものだろう。
今の僕はまだ高い所は苦手だから身震いしてしまうけれど――といっても実際はまばたきを
しただけだけれど――鳥はどう思っているんだろうか。
ああ、こうやって見ると、鳥もなかなかいいものだなあ、とぼんやり考える。
次に生まれ変われるなら、僕は鳥にでもなりたいな……。
僕はそうやって呑気にあくびをすると、もう一度目を閉じた。
その日、どこかの猫が陽だまりの中で、穏やかに死んだ。
穏やかに、のんびりと。
猫はきっと悔いがなかったから、ゆったり死ねたんだ、うん……。