ラーメンを作るのである
今日のお昼はラーメンにする。お気に入りの店に行くのも悪くないが、自分で作ったラーメンにかなうものはない。満足感が違います。
スープを仕込む。野菜と鶏ガラと煮干しを寸胴鍋に入れた。沸騰させないように気をつける。時々アクを取ることを忘れてはいけません。
スープを作るその間に麺を打つ。さすがにラーメンマニアでもそこまで凝ってるやつはいないだろうね。小麦粉と鹹水、塩少々をこね麺玉を作った。
ちょっと何かが足りない気がする。そうだ、根性が足らない。人生はガッツが大切だ。僕はほんの少し根性を麺に練り込み、延ばしてやや細めに切り始めた。細く長い生き方がいい感じデスヨネ。
こうなってくるとスープにも自分なりの工夫をしたいところだ。夢や希望をチョイスするのは高校生までだ。人生に必要なものは愛と勇気とお金が少し…と喜劇王も言っていた。
愛をふたつまみ、勇気をひとつまみ、スープに足してから、アクと一緒に怠惰や偏見をすくい取って捨てていきましょう。
麺を休ませ、スープの目途もついたので僕はトッピングの具を考える。チャーシュー、煮卵、ナルト、ほうれん草、メンマを載せることにしよう。
チャーシューは奮発してうんと厚切りにしたい、豚肉の塊をたこ糸で縛って醤油で煮込んでいく。ちょっとクセありですけど、八角と好奇心で風味をつけます。
ふと、麺を見ると何だか色が変色している。そうだな…根性を込めすぎた気もする。頑張りすぎは疲れちゃうし、周囲もしんどい。ああいうのはそこそこに控えた方がいいのかもしれません。麺から根性を半分ほど抜いて、かわりに温厚と茫洋をフワリとまぶします。
煮卵は半熟が基本だ。『夢』では気恥ずかしいので『夢の卵』を茹でることにした。ナルトはグルグルの模様が好きだ。迷走するのも悪いことじゃない。でも報連相は大切だよね。メンマは…えーっとメンマはメンマですな。
煮えたチャーシューを取り出して、厚切りにする。切り口から余分な脂と嫉妬が流れ出た。全然無くなったら駄目だけど、たくさんはいらないものなのです。
スープに足すタレは醤油と塩と情熱を一煮立ちさせ作り置きしたショーユだれだ。冷蔵庫から取り出して、人間の器に取り置いておく。よく見ると実に小さな器で、お恥ずかしい限りです。
そろそろ麺を茹でよう。熱湯に『てぼ』を使って、打ち立て人間力成長中の麺を投入する。すぐにゆだった麺を取り出し『てぼ』を激しく振り、余分な水分と傲慢と飽食を振り落としましょう。
丼にタレを入れ、スープを足した。優しさの香りがする。
そこに茹でたて、成熟した大人の麺をそっと入れた。
具を添えれば完成である。用意した煮卵とナルト、チャーシュー、メンマ、ほうれん草、そして自由を愛する心でトッピングを施します。
「…というわけで、出来上がった会心のラーメンだが、どうだい?」
僕は自分の前と、奥さんの前に一杯ずつのラーメンを置いた。
彼女は黙ってラーメンを啜り、具を囓り、スープを飲む。そしてため息をついて、微笑みながら一言。
「あなたそのものの味だわ。刺激が足りないわね」
途中、書いてて何となく恥ずかしくなってしまいました。




