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家族  作者: さがらみさこ
1/1

蓮華の花飾り

 エピソード1 長女 ゆかり



「まったく、あんたのお母ちゃんは」


町工場のわきの 緩やかだが長い坂で

祖母のこぐ自転車は ペダルを回す度に

きいきいと いちいち 音が鳴った。



祖母が私を自転車の後ろに乗せながら

毎朝つぶやく その一言に

母に対するネガティブな気持ちを

感じてはいたが 


その感情のすべてを推し量ったり

ましてや それを解決するなんて


自分には到底無理な事だと 私は幼心に よくわかっていた。


だから ネガティブなそのつぶやきの続きを 

祖母に問うこともせず 


私はいつも さっきまで見ていた

TVのキャラクターを思い浮かべ

胃のあたりの ちいさな不快感を 

ぼんやりとやり過ごしていた。



月曜日

昼寝布団と私を乗せ 汗だくで

ペダルをこぐ祖母の後ろで 私はぼんやりしていた。


保育園の場所を示す看板が 祖母の背中越しに見えて

にわかに思い出す。


今日はリハーサルだったっけ



「サメは、らばれんぼうなんだよ」

「らばれんぼう‥あばらんぼ‥あれ?」



先週 運動会が終わったと思えば 

次はお遊戯会だ 年中組は劇を披露することになっていた。


私はサカナの子どもその③ の役を与えられたのだが

ら行の発音が苦手だった私は

『あばれんぼう』という言葉を 

スムーズに発音することができずにいた。


その上先週、サメ役であるヒロのお節介な提案により 

新たに振り付けが加わったのだ。


''あばれんぼう’‘


という言葉から連想された

拳を作り 両手を前に突き出してパンチをするという

安易で、いかにもな振り付けだった。


セリフが出てこない上に この恥ずかしい動き。

私にとっては罰ゲームでしかない 彼の提案を

若い担任の保育士は手をたたいて賞賛し、採用した。


他人ひとの手により 勝手に上げられてしまったハードルを 簡単に超えられる訳もなく


案の定 


劇はいつも同じ場面で中断してしまった。








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