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5. 絶望するし、2回目の死は躊躇が無くなるらしい。


 おおよそ30人くらいであろう数の子供が6つの牢屋に分けて入れられた。

 


 俺が入っている牢屋には3人の少年と2人の少女がいる。

 その少年少女達の顔を見ると、どうにも不安げであったり涙を目に溜めている子達が多い。

 

 当然だろう。ここの世界の常識は全くわからないが、この年の子供は外で楽しく遊ぶ経験をするのであって父母以外の見知らぬ怖い人間に乱暴される経験を誰もが経験することとはしていないだろう。


 実年齢がコイツらより10歳は上であろう俺ですら怖い。当たり前だ。

 

 

 それにしてもこの世界の住民は本当に顔が良い。悲壮な顔でさえ一つの芸術品と言われてもおかしくはないだろう。

 西洋系の顔立ちをあまり見たことがないということもあるかもしれないが、全員が芸能人レベルの顔の良さといってもいい。

 

 恥ずかしながら、自分も中々の美少年顔であると自賛させて頂きたい。

 だが、顔が良かろうと牢屋に入れられて挙句奴隷として使われるか、娼婦として使われるか殺されるかという未来を辿るのだから生きていく希望も見出せない。


 第一、展開が早すぎるのだ。目覚めてちょっとしたら盗賊に襲われて眠って、また目覚めたら馬車の中。

 そしてあれよあれよという間に閉じ込められてしまった。


 期待に胸膨らませたにも関わらず、それは針で突かれたかのように破裂しこぼれ落ちたのだ。

 

 もう、正直なところ自暴自棄である。

 自分はこれから自由な人生を送れないことが確定してしまっているし、どうすればいいか思案に耽る。時間だけはあるしな。


 結局俺だけのチートっぽい銃を作り出す?召喚する能力だってそれを行使する身体能力がなければ意味がないし、そんな得体の知れない能力をひけらかしてみたとすれば──


 モノの例えではあるが、中世では怪奇な現象を引き起こす者を魔女として捕らえ、裁判にかけるらしい。

 もっとも、裁判だからといって弁護人はいない。判決は極刑が下され、どう処刑するかだけを議論し排斥する。

 

 少なくともそういった悲劇の結末になりかねない。

 

 

 ではこの状況、私ことダニールはどう動くのでしょうか!


 

 答えは簡単、もう一回死ぬことである。

 

 死ぬことで他の世界に移動してしまうのならば、自分の望む世界に行けるまでガチャを引けばいい。

 死んだら違う世界に行くことは分かりきっているのだ。

 

 今更死の恐怖がどーとかこーとか馬鹿らしい。痛みは感じないから初自殺の前に悩んでいたネックも簡単解決だ。

 

 死んだ結果がどうなったとしても、俺はいじめられている学生だった自分を殺し劣悪な状況下に置かれることになる自分を殺し、自分に降りかかる火の粉から逃げることができる。

 …まあ、地獄とかいう世界が頭をよぎったが、すぐに消した。邪念は無い方が思い切りが良くなるし、恐怖は考えを鈍らせる。


 思い立ったら行動するのは早い方だと自覚している。

 

 手に銃を生成。先程練習したニューナンブM60を出した。

 やっぱり重い。前世の感覚と比べると、やはり重いのだ。

 たしか600g強。増量しているペットボトル麦茶と同じにも関わらず、膨らんだグリップを片手で掴みきれないほどの小さな手では同時に持ち続けることも一苦労だ。

 枷で制限された手でなんとか木材部分に銃口を当てる。

 両手で支えて引き金に親指を添え、枷が無ければ銃口は自分に向いていて撃てばちょうど頭に当たる。そういう位置だ。

 すると、隣にいる少女が俺のやっていることに気づいたのか耳に小声で囁いてきた。

 

 「ねえキミ、一体何をしているんだい?」


 ふと話しかけて来た彼女は、人工的に染められていない、白に近い金色の髪だ。例えるならば、一面に広がりゆらゆらと揺れる黄金色の小麦のような。

 

 しかもめちゃくちゃ可愛い。

 

 碧眼で、精巧に作られた人形のような顔をしている。吊り目で意地悪そうな、まさに俺のタイプだ。


 この出会いは惜しいが、とっとと離れさせてもらう。


 「ごめんね。先に謝っておくよ。僕だけ先に逃げちゃうけど悪いね。」


 ちょっと臭いセリフだが、どうせ会わないのだ。目の前でショッキングな光景を披露することになるが、彼女も何十年も生きたうちの幼少期の不可解な現象として受け止めてくれるだろう。


 当然、彼女は首を傾げた。


「どういうこと?」


 と聞いてくるが、無視した。


まずは木材部分に一発。


 大きな音が鳴り枷が壊れた。音が大きすぎたのか、周りの人間は皆耳を押さえている。撃った当人も結構耳が痛いのだが。


 すぐに見張りが寄ってきた。


 「おい!どのガキだ!」


見張りは音が大きすぎて出どころがわからず、右往左往している。第三者に邪魔される可能性は、ほぼほぼ0に近くなった。



 「みんな、離れて。それから、耳を塞いでね。」


俺は同じ牢屋の少年少女に注意喚起をしたあと、こめかみに銃口を当てた。血飛沫を浴びせるわけにはいかないし、ほんの一死体として扱ってほしい。


 少年少女達は俺の指示通りに動いてくれた。


 そいつらの中には俺が何をするのか興味津々な目で見る少年や、少し口角を上げているように見えるさっき会話した彼女、不安がっているから言われるままにしたという感じの少女と多種多様だが、隅に固まった。

 俺も指示通りに動いてくれた礼に、血の飛び散る側を壁に向けて立った。


 この牢屋だけに流れるおかしさに気づいた見張りが、すぐさま鍵を開けようと近寄ってくる。


 「動くんじゃねぇ!」


 だが、俺の方が早い。

 

 「お疲れ様。」


ゆっくりと引き金を引き、弾丸が自分の頭を貫いた。

 あたりに血が飛び散り、俺は力なくドサっと倒れた。


 自分の死んだ状況を鮮明にわかる違和感を感じながら、意識が沈み込んでいく感覚に身を委ねた。


 だがやっぱりおかしい。これはまるで、疲れ果てたときに寝落ちして、気怠げに目覚めてしまうような予感がある。先程の違和感は、その予感をさらに強めた。


 そしてまた、死んだにも関わらずこんなに考えが回ってしまうことも。


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