俺にとって学校は負の象徴だし両親との別れは寂しいらしい
10歳の誕生日を迎えるということ。
それは重要な節目の一つを迎えたことを意味する。
この世界の子供は、10歳になると学校へ行く。
まあ学校に行く前に幼稚園的な所もあるらしいのだが、それは置いておくとして。
この世界の学校には2つの種類がある。
一つは学術院。いわゆる前世での学校だ。
文化や教養、算術や化学など賢い人間が研究者や哲学者、政治家などの道を目指すための学校だ。
二つ目は冒険学校。冒険者として必要な剣術や魔術の技術養成、さらに冒険者として生きていくための最低限の知識を与え冒険者を育成する学校だ。
俺が行く学校は後者だ。
両親はどちらに行っても構わない、というスタンスだった。
あの誘拐事件までは。
あれは両親の教育方針を大きく変えることになったのか家でも剣術や魔術の指南を受けたし、自分で自分の身を守れるようになってほしいという思いが心の内にあるらしかった。
今では冒険学校に行って欲しい、だけど冒険者にならなくてもいいから守る術というものを学んで欲しいと両親に言われた。
まあ俺の目標的には、冒険者となった方が情報収集などの自由は効くから願ったり叶ったりだが。
それにしても、ディエゴとアシュレイには頭が上がらない。
剣術と魔術の指南までしてもらい、叱る時は叱り一緒に笑うときは一緒に笑った。
常に子供のことを考え寄り添うということは親としては当然の義務かもしれないが、実際に出来るかどうかは別だろう。
俺は、そんな両親と離れる必要がある。
冒険学校は、生徒の自主性の成長、自律を促す為に寮に入るというルールがある。
前世は高校二年生として死ぬまで親元を離れなかったし、実質的にはこれが初の親離れである。
正直なところ、少し寂しい。
俺がダニールとして生きているのは精々2年くらいだが、俺が転生してくるまでの記憶や、転生してきてから過ごした記憶は頭に焼き付いている。
実際の年齢は20に近づいているのだから親離れしたくないなんて寝言を言うのも気持ち悪いと思うし、親離れする必要があるとも思う。
年に数回、休暇によって家に帰ることができる制度があるから絶対に冒険学校に行きたくない訳ではない。
だけど。
今生の別れでもないのに、なぜか寂しい。
そういえば、もう前世の母さんや父さんとは会うことが出来ないのか。
そう思うと、より寂しく、悲しくなってきた。
もうあの2人には会えることが出来ない、と思うと無力感を感じる。
だからといって帰りたいわけでもないが、もう一度会って、自分の感謝を伝えたい。
そういう発想が出てくるのは、やはり自分がディエゴやアシュレイのおかげで変われたからなのだろう。
前世の親への感謝の分も両親に伝え、俺は冒険学校に行くことになった。
話は変わるが、シグもどうやら冒険者志望らしいので一緒に行くことになった。
知らない土地に1人で投げ出される所だったので、少し安心した。
それに、学校という場所は怖い。
良い思い出は少ないし、学校という単語だけで恐怖に震える。
だけど、 この世界で前世の俺を知っている人間は誰もいないのだ。
精一杯チャレンジして、それでもダメならダメだったと納得しよう。
シグという友人もいるのだし、決して悲観する事はない。
俺は決意を胸に、冒険学校の門をくぐった。




