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プロローグ

今でも覚えている。

俺をイジめた奴等の表情。

素知らぬ顔をする教師。

服を剥がれ写真をばら撒かれた時決意した、感情。


 全てに絶望した。


 何も救いは無かった。何も救ってくれる存在はいなかった。


 友人なんかいなかったし、両親だって俺に無関心だ。


 目一杯泣いて、それでも変わらない現状に絶望した。

 


 そうだ、死ぬか。


 とはいっても苦しいのは嫌だ。

 俺はイジメられる様な人間だから、当然陰キャだしゴミみたいな人間性だ。


 全てから逃げてきたような、クズだ。


 だから苦痛は耐えられない。

 

 暗い部屋の中でうずくまりスマホで検索してみる。


 「楽に死ねる方法」

 

 出てくる物は首吊り・飛び降り・リストカットなど、どれも痛そうだ。

 しかも「これらの死に方は簡単には死ねず後遺症も残りやすい」とのお墨付きだ。

 

 自殺させたいのかさせたくないのか一体どっちなんだよ…

 

 そんな中、ふと思いついた。銃だ。

 

 アニメや映画でも銃で自殺するという例は枚挙に暇がない。

 

 こめかみに銃口を当て引き金を引く。

 その瞬間血がドバッと出て、そのまま倒れる。

 実に楽で簡単な死に方なのだろう…

 しかしなぜこの死に方が推奨されていないのかは簡単だ。

 

 銃は入手しにくい。というよりかは、日本では入手することは不可能だ。

 

 俺はオタクだ。主にアニメと銃の。

 部屋の壁にはアニメの美少女キャラのポスターと一緒に何丁ものモデルガンが飾られている。

 

 だが、実銃はただの玩具と違ってそう簡単には入手できない。

そりゃそうだろう。実銃を持つことは犯罪なのだから。


 素人が入手できるようなルートなんかとっくに想定済みで、入手する前にお縄につくのが関の山だ。

 

 そこでまた検索してみる。


「銃の入手方法」


 もちろん、こんなもんで本当に出てくるとは思っていない。


 案の定出てくるのは某知恵袋に質問して「バカなことを言わないでください。」と一蹴されたリンクや

「銃の所持は犯罪です」と喚起している警察のサイトなど到底役に立ちそうもないものばっかりだ…

 

 まあそんな易々と実銃が手に入ったら日本の治安は今のような治安ではないし、平和である証拠か…


と、思ったら。


「ダークウェブで何が行われているのか!麻薬取引・銃の密売・人間取引etc…」


見つけた。善良な一般市民の俺でも銃を手にする方法が。


---


 いざ死ぬという決意してみたら、後は意外と楽だった。

 

まず所持しているモデルガンやなにやらを売った。


 そんなものでは、少しの足しにしかならなかった。


 所持金はおよそ10万。目標金額は30万なので、まだまだ足りない。

 

 だから、親の金を盗むなどして金を工面した。

 どうせ人生を先におさらばするのだからバレて怒られようが平気だ。


 ネット上の通貨に変え購入した。海外から届くので1か月程度らしい。

 その間の苦であった学校生活も、「死ぬことができる」と思うと大して何も感じなくなった。

 

 むしろ早く苦痛から解放されることに喜びすら感じていた。

 

 どのくらいの喜びかというと、

 俺がトイレをしていたところにイジめている奴らが水をぶちまけたのに、俺が嬉々とした笑みを浮かべるくらいだ。

 

 そんな自分を見たアイツらも気持ち悪さを覚えたのかいじめの苛烈さは増してしまった。が、


 もうそんなことは関係ない。


 今、手にあるのが。


 モデルガンなんかとは比にならない重厚な質感。

鉄の匂い。顔が反射するほどの光沢。


 自分が求めていた「銃」である。


 これはリボルバー式だから、ハンマーを下ろして引き金を引くだけで俺は死ぬことができる。


 たった2つの工程を踏むだけで、おさらばだ。

 

 

 なのに。


 

 自分があんなにも嬉々として求めていた「死」は、唐突に現実味を増し自分の目の前に襲いかかってきた。


 こめかみに当てた銃は震え、呼吸は乱れる。引き金にかけた指に力が入らない。


 浮かんだのは結局「恐怖」だった。


 あんなに死にたいと思ったのに。死にたいと思ってあれだけ努力をしたのに。


 思わず自分で笑ってしまった。

 

 よし、今すぐやめよう。


「──!お金盗ったで…!」

 母がいた。


 緊張のあまり、近づいてくる気配や足音に気付くことができなかった。


そして。


 引き金にかけた指を引いた。


 いや、引いてしまった。


 耳元で鳴った轟音と鼻につく火薬の匂い、驚いた母の顔を最後に、


 俺は死んだ。



 





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