第六話
「シュウヤは女物の服のセンスがないですねー」
「うん、そもそも男に選ばせたらロクなことにならんて大昔から言われてることだから」
ジャケット、シャツ、スキニーフィットのジーンズ。
格好はあまり気にしないからと安過ぎず高すぎない店に来た結果、選んでみてくれと言われて選んだのがその三つだ。
しかし服なんて最低限着れて、よほどダサくなければ良いだろうというスタンスだから根本的にふぉっしょんセンスが多分皆無である。
「ダサくはないです。けど女の子に着させますかね? 普通女の子に着させるのはこういうカッコいい系じゃなくてカワイイ系でしょうに。しかもジャケットとジーンズは黒でシャツは白って……」
「良いだろ、白黒。場所を問わずに着れて彩度がないから人目も牽かない。あとセラは全体的に細くて胸囲も細すぎず太すぎなくてカワイイ系もカッコいい系も着れると思った。ぶっちゃけ言えばカッコいい系の女の子を見て見たかった」
「うわ、マジでぶっちゃけましたよこの人」
ガンジーも助走をつけて殴るレベルで現代女のファッションはあざといから正直な所あざとくないカッコいい系の女が見たかったという本音。
あとついでにいえば、現代の最先端ファッションは色が多すぎて目がチカチカする。
他の奴らが勝手に着てるならともかく、俺の隣を歩くセラがそんな服を着るのは絶対にお断りだ。
俺が金を出す以上は元々ダメ出しをするつもりだったが、やはり流石に彩度は欲しかったらしい。
「でも、くれるなら貰ってあげましょう。こういう服を着て欲しいならちゃんと着ますし」
「よし買おう、決まりだ」
「なんだか少し闇を感じますね」
街を歩いているとだんだん目がチカチカしてくるから人混みは嫌いだ。
たまに一人でアホみたいにカラフルな奴がいるから目が弱い俺としてはホントにやめて欲しい。
「じゃあ次は…………コレ。ほーら、彩度があるぞ」
なんとなく選んだのは白いワンピースと落ち着いたオレンジのジャケット。
「む、意外と良いですね……」
「ああ。白をオレンジで覆った。セラの髪は蒼――くすんだ青。だから明るすぎない落ち着いたオレンジで明度を合わせつつ暖色と寒色で対比した」
「意外と考えてるんですね」
「センスはないが流石に何も考えていないわけではない」
俺の選んだ服をそれなりに気に入ったらしいセラはその服に着替えて姿を現した。
平たい状態だったから立体になった途端にひらひらとして、結局少しあざとい感じがするが、その僅かな不快感を消して余りあるほどに――可愛らしい。
「世界に幸あれ」
「……それは似合っている、ということでしょうか?」
「……それで合っている」
通じない冗談ほど悲しいモノはない。
幸い、今回は通じた。
けれどそもそもセラはこの星の文化をまだ理解しきっていないのだから下らない引用は控えるとしよう。
「他のはどうする? 自分で探すか? それとも店頭衣装か?」
「そうですね……。他の方々の感覚も知りたいので既に組み合わされたモノにします」
少し考え込むように俯いたセラ。
その答えを聞いた俺は店員に声をかけ、セラを指さして大まかなサイズを提示しながらいくつかの店頭衣装と同じ物を要求した。
ちらりとセラに視線を送った店員はその整った容姿に少し驚きながらもすぐに表情を戻し、近くにある物品からその体格を判断してすぐに頼んだ複数の服を持ってきた。
店頭衣装だからか、セラにも似合っている。
多少カモられている気もしないではないが、どれも似合っている以上金も余っているし構わない。
「良かったのですか? 嬉しいですけどここまで買ってもらうのは……」
「いーのだよ、この程度。カワイイ格好を見られるならそっちの方が有意義だ」
初めの一着、今着ている一着、さっき渡された五着の計六着。
それなりの値段の店だからそれなりの値段がするが、せっかく俺好みの女の子が可愛らしい格好をするというのだから金を出し渋る道理はないだろう。
「シュウヤは……人を褒めるのに遠慮があまりありませんよね。たまに口籠ることがありますけど、正面から行為を向けられるのは少し気恥ずかしいのですが」
「……自分が、良いと思うモノを『良い』と口に出さない理由はない。俺はそう思っている」
「そうですか。本当に特殊な人ですね」
そんなことは言われずとも分かっていることだ。
少し話せば誰だって分かること。
俺は親しい者と話すにはあまり表裏がない分、俺は人よりも分かりやすい。
「まあ……だから……気にするな」
「分かりました。家に帰ったら存分に見せてあげます」
「期待してるぜい」
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