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3.14159265358979323846264338327950  作者: 軒下 晝寝
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第三話

 中々書くのが難しいです

 楽しいですけどね

「シュウヤ、シュウヤ。これはなんですか?」

「ああ、それは――」


 今日はベランダに落ちて来た翌日。

 スェイルァと言うらしい小動物(呼びにくいから『セラ』に決定)は二四時間も経たないうちに日本語をかなり習得していた。

 発音が難しいらしく、俺の名前『重見周也(しけみしゅうや)』が中々曖昧な発音である。


「なあ、セラたちは何でこの星に来たんだ? わざわざ言語を学んで、外交か? ……いらんか、こんの低文明な星のモノなんて」


 彼女たちからすればこの星の技術なんて何世紀も昔に通り過ぎた古代文明レベルのものだろうから必要性がない、もっといえば物資が欲しいなら他の星を狙えば良い。

 わざわざ来るほど重要なモノがあるとは考えられなかった。


「外部との交渉、交際という意味なら当たっています。私たちは知識を追い求める種族、異なる星で生まれた知的生命体の築き上げた文明に、興味があるのです」

「要は研究、か。んで俺らは動物観察されてる、と」


 相手の事を知るには言語を学ぶ必要がある。

 そのための言語学習。

 だがそれをするにはいくつか問題があるような気がする。


「なあ、セラたちって見た目変えれる感じか?」

「ええ、可能です。この星における美醜の感覚を我々の美醜の感覚と擦り合わせる必要があるので現在は出来ないらしいですけどね」


 なるほど、見た目を近づければ外交もやりやすい。

 正直セラと似た見た目の宇宙人が来たところで見分けがつかないだろう。

 少なくとも俺は見分けがつかない、出来ないと断言出来るほどだ。

 カラスを見たところで個体の区別が出来ないのと同じようなもの。


「……腹の探り合いが面倒になったから聞くけど。……複数で来てるって認識で良いよな?」

「○□!? ど、どうして分かったんですか?」

「いや、だって『セラたち』って言って、肯定したし今さっき『出来ないらしい』って自分で言っただろ? らしいってことは伝え聞いたってことで確定じゃねえか」


 初めから察してはいたが根拠のない仮説だった。

 だがさっきのやり取りで確信になった。

 調査経験はあるが交渉などの経験や知識は少ないのだろう。


「言外しないと信じているので言いますけど、その通りです。……調査がやり辛くなるのでしばらく黙っておいてもらえませんか?」

「良いぞ。俺に害がないなら言いふらす意味ないし、言いふらす知り合いいないし」

「ありがとうございます」


 正直なところ、俺は楽しければいいという快楽主義だ。

 VR技術が得られるなら考えなくはないが、セラたち側から機械を提供して貰えば済む話で技術を貰う必要がないから興味がない。

 その他の技術は考え付く限り正直心底どうでもいいのである。

 テレポート技術があったところで俺個人がそれを使うとしても人目のある所では使えないというクソ仕様で人目のないところで使用しようとも偶然その周囲で事件でも起きようものなら行きは防犯カメラに写っていないのに帰りは映っているなどという異常の完成、社会全体で使おうにも戦争の引き金になりかねない技術だから遠慮願いたい。

 まあそれを言えばVR技術だって兵士の育成にもってこいだから同じことが言えるが。

 他にはステルス技術だが……何をしろと? 覗きに興味はない、裸体が見たければ風俗にでも行けという話だ。

 後は浮遊技術だろうが、まあ航空法とかで面倒臭そうである。

 結論、めんどいからイヤ。なのである。


「てか『しばらく』ってことは時が来れば公に姿を現すってこと?」

「はい。親密に関わっていければと我々は考えています。けれど今は外からの観察を、と」

「了解了解、戦争さえ起こさなけりゃ構わんさ」


 公に姿を現す。

 ただそれだけなら俺たちに化けて紛れ込む、とも受け取れるが、そうではない。

 俺に対する口止めが『しばらく』ということは『しばらくすれば話しても構わない』という事であり、それはつまり正体発覚がなんら問題ない状態を築いていることを示しているのだ。

 言い換えれば『正体を明かす』ということ。

 今の姿を見せるかどうかは不明だが、宇宙から来たことを世間に明言するのは確実。

 てっきり化けて紛れ込み、調査が終われば去ると思っていたから少し驚きだ。


「現状私たちに戦争の意思はありませんよ? この星の住民から仕掛けられた場合はそれ相応の対応をさせていただきますが」

「そうなったら俺は助けてちょ。馬鹿に巻き込まれて死ぬのは死因としては最ッ高にアホらしい」

「シュウヤさんが今のままならそうします」


 命の保証を得られて少し安心した。

 見た目の違いは大して気にしないから正直セラの星に行くのもありかもしれない。

 一人暮らしだし、彼女も友達もいないボッチだから俺をこの星に縛り付けるものは重力以外何もないと思う。


「それでなんですけど。引き続きこの星のことを調べるために力を貸していただけませんか?」

「良いよ、そのノーパソ貸したげるから好きにして、ただ俺は寝る」


 昨日は一応仮眠を摂ったものの宇宙人という興奮のせいであまり寝つけず、起きた後はそのままずっとセラの言語習得に付き合っていたからかなり眠いのだ。


「今日は平日のお昼。この国では確か……ニート、と呼ぶんでしたか?」

「いーのいーの、俺は高校時代のバイトで貯めた金と気紛れに買った宝くじで得た金を元手に投資で困らない程度には金持ってるから」


 正直社会貢献なんてものに微塵も興味はないが、少なくとも金を必要としていて未来ある企業に投資するという形で社会貢献もしているから働いて社会貢献をしろと言われる義理はない。

 成長するかも分からない企業を信じて倒産しないように手助けをしているのだ、十分すぎるほどの社会貢献だと俺は思っている。


「なるほど、シュウヤさんが独りの理由が分かりました。合理的であるがゆえに社会生命であるこの星の人間とは少しすれ違っているのですねッ」

「……ウイルス対策ソフトが入ってるから適当なサイトに入っても多分平気……」


 事実だが中々失敬なことを言う奴だ。

 別に気にはしていないが喧嘩を売られているのではないかと勘繰ってしまう。


「とりあえず俺は寝る。昨日教えた犯罪行為をしなけりゃ良いが、教えたことが全部の法律じゃないからネットで調べるか本棚の六法全書読め、じゃあな」


 以前興味が湧いて買った六法全書。

 半ばで馬鹿らしくなったから全部は読んでいない。

 自分の属する国の定めた法律を守らない奴が多すぎて、その中で法律を憶えることが心底馬鹿馬鹿しく思えたのだ。

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