天地裁判
初投稿です。
「地獄行き」
目の前の天使が無慈悲にそう告げる。
天国にふさわしい煌びやかな裁判所にて、俺の進路が決定した。
実際は裁判などほぼ行われていない。いや、行うことが出来なかったのだ。
辺りを囲う天国の住人共が俺の罪状を読み上げる。本来は、家族以外の身近な人間を一人弁護人として置くことが出来るのだが、生前のことはよく覚ええていない。その為、俺を弁護してくれる人間がいなかったのだ。死んでからも交友関係が大事なのかよ、くそが。
話を聞いていた限りでは、生前の俺はアル中になって、依存するうちに急性になって死に、普段は何かの薬を売買していたらしい。後は転売くらいか。聞くに堪えないほどにつまらない人生だ。
一連の一方的なやり取りを終えた後、無慈悲にも告げられた天使の一言に反応して俺の足元に地獄門が出現した。無数の白い手に身体を引っ張られ、引きずり込まれていく。差し込んで逃さない為か、中には爪を立ててくる手もある。
どうしても納得が出来ない。
もし、俺が悪逆の限りを尽くした人間なら納得出来ただろう。しかし、我欲故の微々たる行為だ。
無駄だとは思うが、俺は必死に助けを求めた。
必死に助けを乞う俺の姿を見かねたのか、天使は俺に問いかけた。
「最後に恨んでいる人間を教えてください。この解答次第で貴方の罪が軽減される訳ではありませんが。」
減刑を狙うなら、模範解答は自分自身だろう。しかし、俺の口は考えとは裏腹に別の回答を口走っていた。
「両親」