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異世界恋愛短編集

男性優先の世界でも私は自由になることを諦めない

作者: 来留美
掲載日:2020/10/13

私はこの国が嫌いです。


それはこの国には女性が自由に生きる権利はないから。


私の国は全人口の9割が女性で残りの1割が男性で、圧倒的に男性が少ない。


だから男性は重宝された。


男性は自由に生き、女性はその男性を喜ばせる為の道具となっていた。


私はそんな国が大嫌い。


それなら国を変えればいいと思った。


でも、私は大人になって気づいた。


女性達は大人になるとみんな、自由に生きることを諦めていた。


私は大人になっていたが、まだ諦めていない。


自由に生きたい。




しかし、私にもその日はやってきた。


国から1つの携帯電話が家に届いた。


私はそれを見て身震いをした。


その携帯電話が届いたと言うことは私は男性に選ばれたのだ。


そう、男性の婚約者候補になった。


私達女性は男性に選ばれると男性の家へ行き1年一緒に過ごし、男性が気に入れば結婚という形になる。


それは表向きの話。


本当はその1年で子供が出来れば結婚になる。


私は好きでもなんでもない人の子供を産まなければいけなくなる。


産まなければいいと思うだろうがもし、産まなかったら私は一生その男性の世話役になってしまう。


つまりは、どちらも私は男性の道具になってしまう。


これを拒むと一生牢屋の中にいることになる。


やはり私達女性に自由はない。



「お母さんもあなたと同じだったから分かるけど、男性はみんな優しいから」



母は私のことを思って言ってくれた。


本当は行かせたくないのが伝わってくる。


でも、これが私が1番幸せになる方法だと母は分かっている。



「ごめんね。守ってあげられなくて」


「大丈夫。私は誰の子供だと思ってるの?」



私は無理をして平気な顔をする。


母は“バカ”と言って私を抱き締めた。


私はまだ諦めてなんかいない。


私は絶対に自由を手に入れてみせる。



その日から携帯電話が1日1回鳴った。


それは男性からの電話。


一緒に住む前に電話で会話をし、お互いを知ることから始めるみたいだ。


男性は普通に私と会話をした。


男性の声からして若いと思う。


女性は男性に質問を禁止されているので何も聞けない。


そんな毎日を続けていたある日、その日は突然やってきた。


明日から来てほしいと男性に言われた。


私が拒否なんてできるわけもなく私は次の日、

男性の家へと向かった。



男性の家へ入り、いきなり着替えさせられた。


キレイなドレスを着せられ、

キレイな宝石類をつけ、

そしてキレイなティアラを頭につけられた。


私はキレイに見えるように装飾された。


それから大きな部屋に入り、1人でソファに座って待っていた。


すると大きな扉が開き、1人の男性が入って来た。


その後ろから偉そうにしている女性達がぞろぞろと入って来た。



「君達はもういい」


「何を仰っているんですか? これからのことを彼女にお伝えしないと」


「俺がするから。

早く、彼女と二人にしてくれ」



その言葉で彼女達は部屋から出て行った。



「ふー、疲れた」



彼はそう言うと私の隣に座った。



「あの、私の隣ではなくあの立派な椅子にお座り下さい」


「何、その話し方」


「えっ?」


「誰もいないんだし、普通に話してよ」


「普通とは?」


「俺と同じ話し方」


「えっと、それは無理かと」


「それじゃあ婚約者候補から外すよ」


「それは困ります」


「何で?」


「母を悲しませたくないので」


「母親の心配?」


「はい」


「君はここに、なぜ来たか分かってんの?」


「はい」


「それなのに母親の心配をするの?」


「はい」



私は男性の目を真っ直ぐ見て答えた。


大丈夫。


母の為なら何でも我慢できる。



「君の母親はすごく優しい人なんだろうな」


「はい。優しくて温かい人です」


「俺の母親は嫌々、俺を産んだんだ」


「えっ!」


「だって好きでもない人の子供を産むなんて嫌だろ?」



この人、何を言ってるの?


母親がされたことを私にしようとしている人の言葉じゃない。


これが男性?


自分のことは棚にあげるの?


自分は違うって言うの?


ひどい。


残酷。


でも男性はその後、私の想像していなかった言葉を口にした。



「ごめんね。

俺が必ず君を、

いいや、

君達女性を助けるから」



彼の言葉は私の不安を全て吹き飛ばした。



「なぜ?」


「俺ができることは限られているけど、

君達女性を俺の母親みたいにしたくないし、

俺みたいに母親の愛情を知らずに生きる子供を増やしたくないんだ」


「男性は私達女性の気持ちなんて知らないと思ってた」


「他の男性はどう思っているか分からないけど俺は違う。

1人でもいい、女性を助けたい。

その為に君をここに呼んだ」


「私を?」


「俺はたくさん女性を婚約者候補にして、

婚約破棄をして俺の身近に置く。

そして君達女性を自由に過ごせるようにしたいんだ」


「自由?」


「うん。その最初が君だよ」



彼の目を見ても、嘘をついているようには見えない。


私が彼の目を見ていても彼は私の目を見たまま逸らさない。


彼は本気だ。


でもそれだと女性全員は救えない。


私だけが助かるのは嫌。



「今はこの方法しかないけど、他を考えるから君も力を貸して」


「うん」



私はいつの間にか彼と同じ話し方になっていた。




その日から私は自由に過ごした。


彼がいつでも私の近くにいた。


彼が私を、偉そうにしている女性達から守ってくれているのは私でも分かる。


私は家へ帰ることもできた。


母には全てを話して女性の仲間を作ることを決めた。


母は“今のこの国を一緒に変えよう”と声をかけ、仲間をたくさん作ってくれた。


私は家から帰り、自分の部屋へ行こうと廊下を歩いているとき偉そうにしている女性の1人に声をかけられた。



「あなたはいつになったらあのお方の部屋へ行くのですか?」


「それは私が決めることではないので」


「それでは私があのお方にお伝えしますね。

あなたが今夜、部屋に伺うと」


彼女は絶対に私達を疑っている。


これ以上は隠せないのかも。


早く仲間をたくさん作って国を変えないと。




その夜、私は彼の部屋へ向かった。


彼は扉を開け、私を迎え入れた。



「どうした?」


「私達のことを疑っているみたいなの」


「誰が?」


「1番偉い女の人」


「急がないといけないな」


「うん。でもどうしよう」


「結婚するか?」


「えっ!」


「そうすれば一時はそっちに目がいくだろ?」


「そうだけど。私達が結婚したら他の女性を助けられなくなるよ」


「えっ、気にするところってそこ?」


「何が?」


「結婚だよ? 人生で1番大事なことだろ?」


「そっか、あなたと結婚なんて違和感がなくて普通にスルーしちゃった」


「俺、一応プロポーズしたんだけど」


「あっ、ごめんなさい」


「えっ!」


「あっ、違うの。

えっと、

喜んで?」


「何で疑問形?」


「私もあなたと結婚したいです」


「次は敬語」

彼はクスクス笑いながら言った。



私達の結婚式への準備は順調に進み、

結婚式は盛大に開かれ、

一週間ほどはお祝いモードが続いた。


その間にたくさんの仲間を集めた。


自由を諦めていた女性達も声を挙げてくれた。


そして私達はその日を迎える。


仲間全員に彼の家の前へ集まるように伝えた。


テレビカメラも呼んだ。


準備万端。


彼と私はバルコニーに立つ。


テレビカメラを見つけ、そちらを見て彼は話す。



「この国は間違っている。

女性がこんなにたくさんいるのに、なぜ俺達男性の道具にされるんだ?

女性だって自由に生きたいし、

俺達男性も自由に生きたい」



彼の言葉に私は彼を見つめる。


初めて彼から自由に生きたいと聞いたから。


彼がそう言うと私達の後ろから男性達が現れた。


それも1人とかじゃない。


何百人はいる。



「俺達だって好きな人と結婚したいし、

好きな人との子供がほしい。

ちゃんと自分で選んで生きていきたい」



彼はそう言うと私を見つめた。



「俺は、彼女に出会って自分で選んで生きていきたいと思った。

彼女が幸せになるのなら彼女の自由を奪うもの全てを取り払った。

俺は自由を彼女に与えたことによって俺も自由になれた。

みんな自由に生きていいんだ。

この国は間違っている」



彼の言葉は世界中に伝わった。


そして、私の心にも伝わった。


私達は見つめ合う。



「危ない」


彼はいきなり叫んで私を覆い被さるように抱き締めた。


『ガンッ』



何か鈍い音がして私の上から何かが私の頬に落ちてきた。


私はその何かに触れて気づく。


血だ!


私はすぐに彼の腕の中にから抜け出し彼を支える。


彼はゆっくり私に倒れこみ、私はゆっくり彼の体を横にした。



「大丈夫。だから泣かないで」



彼はそう言って私の頬を一瞬、手で包み静かに目を閉じた。


彼の頭には石が当たり、血が流れていた。


すぐに彼は病院に運ばれた。


彼の命には別状はなかった。


けれど…………。



「こんにちは」


「また来てくれたんだ。

いつも顔を見せてくれてありがとう」


「私はあなたに会いたくて来てるのよ」


「そうだけど、君はいつも悲しそうに帰るから。」


「そんなことないよ。会えるだけでも嬉しいよ」


「本当にごめん。

君のこと何も思い出せなくて」



そう。


彼は私のことを忘れた。


あの日、私のこと全てを忘れた。


でも彼が生きていてくれるだけで私は嬉しいの。



彼のお陰で国は変わった。


彼は私達女性のヒーローになった。


それなのに、彼は全てを忘れている。


いつか必ず思い出してくれると信じて私は毎日、彼の元に足を運んだ。




「こんにちは」


「いつも顔を見せてくれてありがとう」



彼はいつものように笑顔で迎えてくれた。




「俺達って夫婦だよな?」


「えっ!」



記憶を失くした彼には私達が夫婦なんて言っていない。



「君は自由を手に入れたか?」


「うん。あなたと一緒にいることが私の幸せで自由なの」



私は涙を流しながら彼を抱きついた。


彼は“ヨシヨシ”と言って


私の頭を泣き止むまで撫でてくれた。

読んで頂きありがとうございます。

自由を求めていた女性だけど、男性も同じ思いだった。

自分だけじゃないと分かったとき、世界が違って見える気がします。

勇気が出てきませんか?

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