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三度目の人生はのびのび暮らしたい。  作者: 鈴木光
第一章 コレット村編
1/3

プロローグ

温かい目で見ていってください、よろっぷ。

俺が16歳で車にひかれて杉山大翔としての人生を終え、異世界に飛ばされてから早35年。

最初はいきなり飛ばされていて驚いたが、幼いころから伸ばした魔力と、鍛え上げた剣術で勇者と呼ばれるまでに成長した。


16歳でで国から勇者と認められ、魔王討伐に向かって旅をすることに。

仲間は剣士の俺、おっさん、エルフの双子、獣人の青年と少女。全員俺が旅の途中でスカウトした仲間たちだ。


いまいちまとまりのないパーティーだったが、それでも、時には3日間ぶっ続けで戦ったり、時には喧嘩したり、時には本気でバカやったり。

みんながみんなの個性を持ち合わせていて、最高に楽しかった。


そして5年の月日をかけ、俺たちは魔王を討伐した。


タンクだったおっさんは最初は騎士団は騎士団に入り、近衛騎士団の団長まで上り詰め、今は現役を引退している。

現役時代にできなかったことをしたり、新人を育成したり、もう40は超えているのに全く衰えていないらしい。


魔法使いだったエルフの双子は、魔王討伐の後はエルフの里に戻り、今は族長をやっていて、双子兄妹二人とも元気にやっているらしい。

最近はあまり連絡はとれていないのだが、元気にやってくれているならそれでいい。


戦士で前線を張っていてくれた獣人の二人はなんと結婚して、故郷の獣国で武官をやっているんだとか。しかも子供が三人もいるという幸せ家族を形成中だ。

たまに家族写真が送られてきて、仲睦まじい様子を見せてくれて、幸せのおすそ分けをしてもらっている。



そして勇者だった俺はというとーーー


「アルフレッド伯爵よ。此度の戦いは見事であった。これでミセル王国からの進行もひと段落付いたといったところだな。

感謝するぞ。アルフレッド卿よ。」


「は!ありがたきお言葉感謝いたします。国王陛下。しかしながら陛下、一つ陳情したいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」


「うむ、申してみよ。」


「は!この頃また民に対する税を増やされたそうで。しかしながら、これ以上税を上げると民の生活にも支障が出てきます。もとは平民だった私からしても、民の気力の低下は国力の低下につながります。なにとぞ、ご再考をしていただけないでしょうか。」


「はっはっは!!何を申すかと思えば、たわけたことを言うではないか。これからは帝国との戦争も控えているのだ!ここで民に頑張ってもらわないでどうする!今こそが、ミルファルド王国発展の時なんだぞ!そんな時にそんな甘ったれたことを言っていられんわ!」


「は?帝国との戦争ですか?」


「おお!卿には伝えていなかったな!やっとミセル王国との戦争がひと段落付いたんだ!ここで一気に帝国も落とす!」


「…お言葉ですが陛下、此度の戦争で兵士たちの勝利して士気が高いとはいえ、疲労がたまっています。それに、我が国は教国との戦線も抱えております。帝国に攻め込むと、各軍が各個撃破される可能性もありますし、第一兵に少し休息をとらせるのが先決かと。」


「はっはっは!何を言っているのだ卿は。卿は相変わらず視野が狭いな。今しかないというのがなぜわからんのだ。おお、そうだ。卿にはこれから帝国との前線に行ってもらうことになるからな。準備しておいてくれ。」


「へ、陛下。私も私の兵もここ最近戦い詰めなので、少し休暇をいただきたいのですが...」


「卿は勇者なのだろう?半日も休めれば十分だ!出立は明日だ!このまま帝国を落としてくれてもいいんだがな!はっはっは!」


「…は。失礼します。」



ーーー異世界で社畜になっていた。


元勇者パーティーはもらえた爵位をもらわずに各々やりたいことをやりに散らばった。

俺はネット小説で読んでいた内政や知識チート的なことがやりたくて、爵位をもらい、伯爵になった。


しかしふたを開けてみれば現実は非情だった。

元高校生で、こっちに来てからは政治の知識を全く持っていなかった俺が、政治で手腕をふるえるはずもなく、政治家はすごかったんだなと実感して。


よく見るリバーシや将棋に関しては、昔いたと言う先代勇者によって広められており、すでに数少ない娯楽や教育用として浸透しており、そう都合よくいかないなと実感して。


唯一最後まで成し遂げたことといえば、コメの栽培だったが、これは他国から知識を教えてもらっただけだったし、せっかくできたと思ったら、

「べちゃべちゃして食べにくい」とか、「木皿について片付けが面倒」とか、あまり工夫をしないこの世界の人からの評判は悪く、マイナーな食品になり、文化の違いとはすごいものだなと実感した。



こういう行く先行く先で失敗していき、内政の腕は皆無と言われ、唯一あった武官としての才能を使うということで、領地はなくなり、指揮官としてまた戦場に行くことになった。

ここまでは普通に生活していたけど、先代の王が亡くなって、今の王になってから、俺の生活は一変した。


俺がいれば基本的に戦争には勝てると踏んだ王が味を占め、他国に戦争を仕掛け始めた。

北西にある人間至上主義のシエル教国は俺たちの国が獣人差別をなくしたことで、戦争を仕掛けてきた。


これに関しては、俺の住む国、ジェナス王国から生まれた俺たち勇者パーティーに獣人もいたため、俺が王と交渉をして差別をなくさせたということでもあるが。

まあ俺たち国は人間至上主義だったのが国の上層部くらいにしかいなかったから、あまり混乱はなかったのだが。


そして次に戦争が始まったのが北にあるミセル王国だ。これに関してはジェナス王国がミセル王国の有する豊富な資源を目当てに仕掛けた戦争だ。


そして今から始めようと王が言っていたのが西にあるヴィゴル帝国との戦争だ。

ヴィゴル帝国は、人口が一番多く、要は数で攻めるような軍の拡大をしている国だ。しかし、俺たちの戦争には不可侵という方向でいる。

まあ、それなのに攻めようとしているのだが。


しかし、一騎当千どころか、一騎当万にも値するような力を持つ俺とはてんで相性が悪いため、攻め時と考えていたのかもしれないが、ジェナス王国は、東に海、北にミセル王国、北西にシエル教国、西にヴィゴル帝国と、完全に囲まれる形になる。


ちなみに南はタミア獣王国で、この近隣じゃジェナス王国唯一の友好国で、あの獣人の二人がいる国でもある。

いざとなったら兵を分けてもらい、一緒に戦うことができるのだが、教国とならまだしも、全く関係のない国との戦争で、巻き込むのは、あまりしたくないので、俺が頑張っているのだが。



「はぁ...」


謁見の間を出て、王城の廊下。王城でそのような行いはしてはいけないのが臣下というものだけど、

日頃の疲れがたまりにたまって、さすがにそろそろ限界だ。今の姿は勇者とは思えないほどみっともないだろうな。


「アルフレッド様、大丈夫ですか?お疲れのようですが。」


あまりの尚早っぷりに、俺を待っていた部隊の兵士にも心配されてしまった。


「あ、ああ。すまないな、大丈夫だ。それと、陛下からの命令で、明日には帝国に出立だと伝えてくれ。悪いな、休ませてやれなくて。」


こんなきついスケジュールなのに、俺の体の心配をしてくれるこの子のやさしさが心にしみるよ。。。


「あ、あした、ですか。それはまたなんというか、急ですね。」


「ああ、陛下曰く、今しか攻め時はないんだと。先代の王の頼みとはいえ、面倒を見るのも大変だな。」


「そうですよアルフレッド様!僕らはアルフレット様の補給などが主な任務で、実地で実際に活躍されているのはアルフレッド様なんですから!それなのになんで明日なんですか?いくら人間かどうか怪しいアルフレッド様とは言え、それでも生き物なんですから。最近全く休んでないじゃないですか。」


まったく、ひどいことを言う奴だな、まったく。でも俺を心配してこう言ってくれたんだ。こいつは将来上司にしたいランキング上位に割り込んできそうないいやつだと。頭の中のメモに刻んでおくことにしよう。


「はは....俺はちゃんとした人間だぞ。俺も、からだを休ませたいとも言ったんだがな、半日もあれば十分と言われてしまったよ。」


「うわぁ...マジですか。それなら、今日はもう休んでください!準備はもう僕たちだけでしておくので!」


「そ、それはありがたいが...みんなは大丈夫か?」


「はい!もしもの時のために、大まかな準備は終わらせていますし、あの勇者様の下で働いているんですから、大きな誉れですよ!」


「その勇者様も、今では休めなくてボロボロなんだがな。」


「そんなボロボロなのに、僕たちのことを気遣ってくれてるんですから、最高の上官ですよ!では僕はここで失礼します。」


まったく、素晴らしい青年だったな。アレク君か。しっかり覚えておくことにしよう。

あまりのつらさにすぐに人員が変わるから、多分あの子は新人だな。きついかもしれないが、頑張ってもらうしかないな。



王宮に自分の部屋が用意されているが、一回自分の隠れ家に戻ることにした。

そして無属性魔法のテレポートで自分しか知らない、自分の隠れ家の洞窟にテレポートした。


まあ洞窟といっても、決壊を何重にも張り巡らせて、中には人が暮らすには申し分ない部屋が広がっている。

国宝級の装備やアイテムは、王宮に保管されているが、それ以外の、自分の作品であったり、鍛冶をして作ってみた鎧などがある。

材料だけはたくさんあったので、いろいろ作ってみたりしたのだが、やっぱり一流の鍛冶師に造ってもらったもののほうが安定しているので、死蔵することになっているのだが。


俺は戦争に行く前に、ここでゲン担ぎとして、ご飯を食べるようにしているのだ。

全く関係ないが、自己暗示的な効果を得られたらと始めたものが、今では癖になっている。


俺が作るのは、日本の一般的な和食だ。

海を渡った向かいの、カグヤという国に、たまに仕入れに行っている。

そこはほんとに戦国時代の二本みたいな感じで、刀とかも出回っていたが、俺には才能がなかった。


コメを伝えてもらってから、向こうでは戦乱が起こっているらしく、国同士の交流はないが、俺だけはみそなどの調味料を、テレポートで飛んで行って仕入れているのだ。

これくらいのわがままは許してほしいものだね。


そうこうしている間に出来上がった。


白米にお味噌汁。魚に卵焼きと、一般的な食事だが、戦いの前には毎回やっているため、相当な腕になっている...と思う。


うん。やっぱりうまいな。ひと工夫するだけでこんなにもおいしくなるのに。もったいないことをしているよこの世界の人は。

でも文化観の押し付けとかはよくないからな、普通に焼くだけの肉とかでもうまいし。



そうこうしている間に、食べ終え、王宮の客間にテレポート。


疲れがたまりすぎて、そのままベッドにバタンキューだ。




ふう.......ああ。

もうだめだ....体から力が抜けていく......

ふわぁ.....もしまた来世があるのなら...好きにのびのび暮らしたいとか....頼んでみようかな......



ーーーやっとじゃの、よし、わかったのじゃ。





ん....?なんだ今の......幻聴か.........?

ふわぁ....さすがに.....つかれすぎだなぁ.................





ーーーそして、勇者アルフレッドは、もう目を覚ますことはなかった。

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