血と雨と
どうしてこうなったんだろうか。
いつもそうだ。いつも、僕は壊してばかりだ。大切で大事なものほど僕の手を滑り落ちていく。
母に、妹に会いたい。家に帰りたい。――地球に帰りたい。僕の生まれた世界に、帰りたい。
血に塗れた短剣を、離してしまいたかった。けれど、震える僕の手は、まるで言うことを聞かない。
今更だ。血に塗れているのは短剣だけではない。返り血は、僕に直接降り注いだ。
今更だ。僕が殺した。初めて人を、殺した。自分が生きる為に、殺した。帰りたいから、殺した。
雨が降っている。いつから降っていたのだろうか。それともずっと降っていたのだろうか。洗い流してはくれない。血が僕の体に染み込んでいく。決して消えることのないように、僕を逃がさないかのように。横たわったまま僕はただ、雨に打たれ続けていた。この場に倒れている人影の数は3つ。そのうち生きているのは、僕1人。ただ1人だけ。呼吸が苦しい。
「これは……!ヨウ、君が●●●●のか?」
ああ、●●●●。それが殺したという意味の言葉なのか。
彼女は、僕に汚い言葉や物騒な意味の言葉を教えてはくれなかったな。お陰で、彼には丁寧すぎてお坊ちゃんみたいだと笑われたな。会いたいな、無理だと分かってはいるけれど。
すべては僕の責任だ。だから僕を許さないでくれ。