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蝉の声  作者: 畦道壱拾蓮
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たんこぶ

はじめまして。なろうで書くのは初めてで、拙い上に更新速度も速くはないかもしれないですが、手ごろな読み物が書けたらなと思います。一応恋愛でファンタジーテイストにはなりそうです。

もしよろしければ最後までお付き合いください。

 仕事から帰りネクタイを緩め息をついて、椅子に深く座ったところで今日が終わったことに安堵する。


 そんな毎日を繰り返し、明日もその次の日もまたこんな風にこの時間を過ごして気づいたら何歳かもわからなくなるんだろうな、なんて自嘲気味に笑ってテレビをつけ、気持ちをそちらへ向ける。


 今日も俺の知らないところで起きた話を聞き流していると不意にインターホンが鳴った。


 テレビの上にかけた時計を見ると21時を過ぎたころでこんな時間に宅配便はこないし、帰り路にスマホを見たが独り暮らしでもうすぐ30が来る男の家に訪ねてくる人もいない。


「はい」


 部屋にある受話器を取り、短く返事をした。カメラ付きドアホンに変えようかなとか、でもあれホラー映画とか思い出すし嫌だなとか、悪い妄想ばかりしていると、少し緊張している女性の声が聞こえた。


「あの、築山(つくやま)さんのお宅でしょうか…」

 

 もう何年も前に聞いたセミの声を思い出すような気持ちになる懐かしい声だった。急いで部屋を抜け、靴も履かずはやる気持ちのまま鍵を開け玄関の扉を、勢い良く押す。


 驚いたようにこちらを見る顔と目が合う。息をその時までするのを忘れ、鼓動が耳のそばで早く打っているのを感じた。


 でもそこにいたのはあの夏の日にいた彼女だった。僕は、全く成長していないあの子が今目の前にいることにひどく混乱し、勢い良く玄関を飛び出したのも手伝い、勢いを殺しきれず目を閉じる前に見たのは自分に近づく部屋を出てすぐの壁だった。






 目を開けた時まず飛び込んだのは窓から差し込む朝日だった。どうやら帰ってきてすぐに眠ってしまったんだな、変な夢を見たなと痛む頭を触ろうとするが右腕が動かない。


 何かが乗っているようだったので少し頭を起こし乗っているものを見ると昨日の夜の出来事を思い出すことに成功した。


 そこでふと思う。この14、5くらいの子は一体誰で、どうやって大人の俺を布団まで運んだんだろう、と。そして何のために俺を訪ねてきたのだろうか。少し考えてはみたが今悩んだところでわからない、と結論をつけテレビの上の時計を見る。


 もう家を出ていなければいけない時間だった。焦る気持ちにもならずしばらく右腕にある重みと寝息を聞きながら目を閉じた。

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