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SIDE:黒銀《クロガネ》の隊長


 王都最大のクラン『黒銀(クロガネ)』。

 その名前は、クランのトップ――クラン員からは“隊長”と呼ばれる男の容姿にちなんだものである。


 その男、まさに黒銀(クロガネ)というべき容姿で、黒いローブに身を包み、唯一黒くないところは顔面を覆う銀仮面のみ。

 本人に関する情報は、長身の男だということしか得られない。


「今日は退屈だったな、つまらん」


 黒銀(クロガネ)の男は、今、とあるダンジョンから出てきたところである。


 どうやら今日のダンジョン探索は不本意なものであったらしい。


 しかし、パーティメンバーはそうは思っていないようで……


「隊長! 退屈でいいんですよ!」


「そうだそうだ! 隊長はすぐに危険を冒そうとする!」


「それに今日はAランクカードを5枚も取れたんじゃし、十分じゃろ」


「隊長、これからが本番っスよ! 今日ゲットした金で酒池肉林といこうっス!」


「……ゴハン、ンマイ、サイコウ……」


「ほら! モガーもこう言ってるっス!」


「モガーはご飯だけで満足できる男じゃろ」


 パーティメンバーたちの雰囲気は明るい。しかし、それも当然。今回のダンジョン探索は、大成功と言ってもいいレベルでの成功だったのだから。

 会話も途切れない。


 そんな男5人が騒ぐのを尻目に、


(はぁ……退屈だな)


 黒銀の隊長はため息をついた。


「帰るぞ」


 つまらなそうに黒銀の隊長はそう言った。

 そして6人は物凄まじいスピードで駆けていくのだった。




 この冒険者パーティは、王都最大のクランの隊長が率いるパーティである。

 それ故、王都最強クラスなのは当然だろう。また、それ故、パーティの移動速度も非常に速い。ダンジョンから王都まではかなり距離があるのだが、このパーティにとっては楽な道である。


 男6人が駆ける。

 速い。

 その速度は約時速50キロ。

 人間を明らかに超越している。


 しかもパーティメンバーはおしゃべりしながら駆けていた。

 それなのに速度は全く落ちていく様子はない。


 そして超越しているのは何も、足の速さだけではなかった――



――ガガガガガガ!!!


 突然、隊長が急停止した。


 周りのパーティメンバーたちは驚く。


「爺、今、誰かの助けを呼ぶ声が聞こえた」


「いや、儂にはなんも聞こえんかったのじゃ」


「まあ爺は難聴始まってるっスから! でも俺も聞こえなかったスよ!」


 パーティメンバーたちは聞こえていないようだ。

 それも仕方ない。


 その助けを呼ぶ声はとても小さかった。隊長ですら、ギリギリ聞こえたかどうか……聞こえたような気がする、と言った程度――実際、その声の発生源からここまではかなり遠い。それなのに聞こえたのはやはり聴覚も人間を辞めているレベルだからであった。

 しかし、話しながら走っていたパーティメンバーに聞き取れるようなレベルではなかった。


 そして隊長は空耳なんて可能性を気にしない。


「声が聞こえたのは――こっちからか?」


 確信はなかったが、隊長は颯爽と駆けつけるヒーローのごとく、一瞬で加速する。


「えー、まじっスか、隊長ー!」


 パーティメンバーも渋々、隊長の後を追うのだった。


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