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甘夏
なんとなく安売りされていて
疲れているから口に入れた
そのはずなのに
口に含んだ途端
甘酸っぱい味が広がり
思い出がよみがえる
小さなころ
お母さんと食べた味
酸っぱくて
お菓子の方がいいと
駄々をこねて
お母さんを困らせた
今も
酸っぱいはずなのに
なぜだか
甘い味がする
あのころ
迷惑かけてごめん
あのころ
いっぱい喧嘩をして
怒らせてごめん
どんどんどんどん
涙が溢れて
思い出も溢れてくる
思い出の味が
溢れて止まらない
なんでこんなに
美味しいの
久しぶりに
お母さんの顔が見たくなった
一緒に
甘夏を食べたい