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桜
ふわっと風が頬を撫でる
桜の花びらが目の前を横ぎる
そっと手のひらにのせてみると
そこには思ったより小さな花が姿を見せる
時期をすっかり感じなくなり
時間が過ぎるのが早く
桜を見て
ようやく
春なんだなあと感じる
昔は
出会いと別れに
一喜一憂し
恋に溺れたこともあった
その記憶ははるか前のことで
今では遠い昔に感じる
慣性が鈍ってしまったかのようで
あまり感情を揺さぶられることも無くなった
ただ一瞬のことでうっと詰まることがある
それが今の桜のようで
感情は鈍っても
昔のことは
やはり心のどこかにある
春がやってきた