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4話:聖十字騎士団

 天職とそれに見合ったスキルをもらった僕とリリ。

 さっそくどんなスキルが使えるのか試したいところだった。


「どんな天職が授かったのか、すぐに知る方法はありますか?」

「いずれの職業であれ、鑑定スキルは使えるはずだ。心の中で自分を調べるように、鑑定とつぶやいてごらんなさい」


 言われたとおり、自分のスキルを確かめるように念じ、「鑑定」とつぶやいた。

 すると脳内にこんな情報が浮かび上がってくる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ルーク


Lv:5

天職:低位魔導師


物攻:15

魔攻:20


防御:10

攻速:10


命中:5

回避:5



<取得スキル・魔法一覧>

鑑定

魔法言語理解(中)

計算能力(小)


火系統初級魔法・ファイアボール

水系統初級魔法・ウォーターボール

雷系統初級魔法・サンダーボール



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「低位魔導師……。ステータス値からもなんだか弱そうな気が」

「あぁ、低位魔導師か。残念だったね、その天職は最下位職の一つだ。訓練次第では中位職・上位職に上がれないわけではないが、将来の成功は現段階ではあまり見込めないね」


 僕の言葉に、神官はいたわるような言葉をかけてくれた。


「そうか……。ロロナ村のみんなに期待されてここまで来たけど、現実はこんなものか」


 がっくりと肩を落とす。


「そう気を落とすことじゃない。しょせん天職は現段階での天職。これからの君の努力次第でいかようにもスキルアップできる」

「はい。分かりました。頑張ります」


「しかし低位魔導師のステータスだと、冒険者ギルドに入っても最低ランクからスタートだから、クエストの報酬もあまり多くない。地道にコツコツと力を磨くしかないね」

「前途多難ってわけですね……」


 気落ちせずにはいられなかった。

 そんな僕に、リリがおずおずと声をかけてくる。


「あ、あの……ルーク。私の」

「ん? そうだ、リリはどうだった?」


「私のこれ……見て欲しいんだけど」

「リリに鑑定使えばいいのかな?」


「そうだな。もっとも自分より高位の人間に鑑定スキルを使う場合は、相手の許可がいるがね」


 神官の言葉になるほどと納得し、僕はリリに向かって鑑定と念じてみた。



《リリ様が鑑定スキルの使用を承諾しました》


 脳内にそんな言葉が聞こえた気がした。

 こういう風になるのか。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リリ


Lv:10

天職:神級騎士


物攻:280

魔攻:250


防御:180

攻速:300


命中:200

回避:240



<取得スキル・魔法一覧>

神級剣技

・シャイニングストライク

・オーバーノヴァ

・トリプルクイック


神級魔法

・ホーリーメテオ


常時発動スキル(パッシブスキル)

・オートパリング

・オートヒール


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「つ、強い……!」


 愕然とする強さであった。

 僕のステータスやスキルとは雲泥の差だ。


「神級騎士って、これかなり強いんじゃないか!?」

「さ、さぁ……私もよく分かんないんだけど……」


「なんだと? 神級騎士だって!? 失礼だが、私もリリ殿のステータスを拝見させてもらっていいかな?」

「あ、はい。もちろんです」


 神官がリリに鑑定を使うと、驚愕した後、絶句して黙りこむ。


「む……こ、この天職とステータスは……。聖十字騎士団に即入団できるレベルだな……」

「すごいじゃないか、リリ!」


 自分のことのように嬉しかった。


 聖十字騎士団は王国の誰もがうらやむトップの職業で、高額な給料はもちろん、税金の免税や、犯罪を犯したとしても一定の罪以下であれば無罪になったり、超法規的行為も認められているという、様々な特権がついてくる。


 さらには騎士叙勲(きしじょくん)もされれば自動的に男爵(だんしゃく)の地位を得るるため、平民が聖十字騎士団に入団することは下級貴族になるということだ。

 貴族になればそれが下級貴族だろうが莫大な貴族年金が出るし、国王陛下を補佐する組織・元老院に選出される可能性もある。


 王宮に出入りする権限ももらえるし、社交界デビューも可能だ。

 そうして他の貴族の子女と交流することによって、さらに貴族界での地盤を築き、やがて貴族の頂点に立つ存在・公爵家へと成り上がる可能性もある。


 そこまで行けば、成功も成功、成り上がりの極みだ。


 このウェルリア王国の有名な童話にこんな話がある。

 姉にいじめられて冴えない生活を送っている一般庶民の女の子・アンデレラ。


 ある日アンデレラは幸運にめぐまれて祝福の儀を受けることができた。

 彼女に与えられた天職は聖天使(エンジェル)

 他人を惹きつけてやまない美貌と、カリスマ性を兼ね備える天職だった。

 

 聖天使の天職を得たアンデレラは王子様に見初(みそ)められてトントン拍子で出世していき、ついには王子様と結婚し王族入りし、やがて王国初の庶民出身の女王陛下に君臨することになる。


 この成功話はいわゆる創作の童話だが、国民に広く知れ渡っており、アンデレラみたいにものすごい勢いで成り上がっていく成功人生のことを、アンデレラストーリーと呼ぶ。


 聖十字騎士団に庶民が入るということは、アンデレラストーリーを叶えると同義であった。


「リリ! このチャンスを逃す手はないぞ。聖十字騎士団に入れば、きっと将来は安泰だ」


 僕はリリの手をとって破顔するが、リリはいまいち浮かばない様子だ。


「え、でも私、そんなところに行きたくない……」


 リリが思いつめるような瞳で、僕を見て言った。


「だってそうだよね、ルーク。私とルークは冒険者になって、一緒にロロナ村の復興をするんだよね」


 リリの言葉に、神官が首を振る。


「いや、これはそこらの冒険者なんかになって許される天職じゃないな。済まないが、有望な人材が現れたら王宮に連絡するように言われているのだ。リリ殿、承知してくれるね」


「でも、私が聖十字騎士団に入ったら、ルークは」


 リリはわずかに嫌そうな表情をにじませて言ったが、


「とりあえず王宮の偉い人の話を聞いてみても、損はないんじゃないかな」

「でも私、ルークと……」


「リリ。これはこれからの君の将来に深く関わる。聖十字騎士団って言ったら、この王国の超絶エリート集団だ。僕は別にどこだって雑用でもカバン持ちでも君についていくから、安心してよ」

「ルーク……。うん、分かった。ルークがそう言うなら、話だけは聞いてみる……」


 僕が説得すると、リリは渋々と言った表情で頷いた。



 それから大聖堂の神官に王宮に連れて行かれ、リリが神級騎士の天職を持っていることが知れると、すぐにでも国王陛下への拝謁(はいえつ)が叶うことになった。


 王城の謁見(えっけん)の間に通されたリリと付き添いの僕。

 目の前に大きな玉座があり、その左右に臣下たちがずらりと並んでいる。


 白く輝くような銀色の甲冑(かっちゅう)に身を包んだ青年たちが立ち並んでところを見ると、あれが噂の聖十字騎士団様たちだろう。

 国王陛下の御前だというのに、自信満々でふてぶてしそうな顔が多かった。


 ウェルリア王国の聖十字騎士団は、日月(じつげつ)すら動かすと言われている。

 それほどの特権階級の集団であった。


 玉座にふんぞり返る王様が、リリと僕を見下ろしながら(おごそ)かに告げた。


「神官ハーボンよ、この娘が神級騎士の天職を持っていることは(まこと)なのであろうな」

「はっ、私もじかに確認させていただきましたが、間違いはありません」


「ふむ、このような少女がな……。おい、リジェクト騎士団長。これへ」

「は。いかが致しましたか、陛下」


 壮年の、白銀の鎧を着た騎士団長が呼ばれる。

 リジェクトは陛下の御前へと進み出て、片膝をついて拝謁の姿勢をとった。


 リジェクトは中年だったが、筋骨隆々とした恰幅(かっぷく)と歴戦の強者を感じさせる古傷が、凄みを出していた。

 あれが……現在の王国最強騎士と呼ばれる、聖十字騎士団の団長・リジェクトか。


 辺境の村出身の僕も彼の名前だけは聞いたことがある。

 たしか『ウェルリアが誇る最強の矛』と呼ばれていたはずだ。

 

「そなた、あの少女と手合わせしてみせよ」

「陛下、それは構いませんが……、よろしいのですか?」

「娘の底力を測るためにも必要であろう」


 リジェクトは逡巡(しゅんじゅん)の色を見せたが、やがて神妙な顔つきで首肯した。


「では、陛下たってのお望みだ。少女リリ、私とお手合わせしてもらおうか」

「わっ、私がですかっ」


 リリが目玉が飛び出さんばかりに驚いていた。

 無理もない。

 ついこないだまで、ロロナ村で僕と一緒にうさぎを狩っていたのだから。


 それがいきなり王国最強の騎士と戦えという話だ。

 怖気(おじけ)づかないほうがおかしい。


「あ、え……と、私、ちょっと自信がないかな、なんて……」


 リリは真っ青な顔で引きつり笑いする。

 ただの手合わせで命まで取られることはないだろうが、陛下の御前だ。

 もし無様な醜態を晒してしまえば、一生王都中の笑いものになる。


 それを見透かしたのか、リジェクトは優しく笑った。


「心配するな。リリの力を見たいだけなのだから、私も手加減はする。それにこちらからは攻撃を加えない。それでどうだ?」


「ルーク、どうしよう」

「リリ。これはチャンスだと思う。聖十字騎士団に入れれば、きっとリリの人生はうまくいく」


「そうなのかな……」

「そうだよ。これを逃す手はない。リリが出世すれば、それだけロロナ村の復興は早くなる」


「でも私、ルークと離れ離れになりたくない」

「大丈夫、もしリリが騎士団に入っても、僕も修行を積んで絶対に後を追うから」


 リリは煮え切らない様子だったが、やがて渋々といった感じで頷いた。


「分かった。ずっと待ってるね、ルーク。……リジェクト団長さん、お手合わせよろしくお願い致します」

「あぁ、どこからでもかかっておいでなさい」


 謁見の間の中央にリリとリジェクトが対峙し、そのまわりに人垣ができる。

 ぽっかり空いた間の中心で、リリは剣を抜くとリジェクトに斬りかかった。


「やぁっ!」


 上段からの振り下ろしはリジェクトも読んでいたようで、リリの剣の軌跡に軽く剣を当てて軌道を逸らした。

 リリの態勢が横に流れる。


 胴ががら空きになり、誰がどう見てもそこを狙って下さいと言わんばかりだった。

 リジェクトが剣の腹でリリの横腹を軽く叩きつけようとしたが、どうやらそれはリリの陽動だったらしい。

 リジェクトの目が見開かれた。


「ほう、これは……」


 リリは横に振るわれるリジェクトの剣をかいくぐり、リジェクトに肉薄する。

 そのまま彼に向かって、鋼の剣を突き出す。


「はぁっ!」


 ゼロ距離から放たれる、リリの渾身の突き。

 しかしリジェクトは、鉄の小手をつけた手で、リリの剣を握り止めていた。


「あっ……!」


 得物をガッシリとリジェクトに捕まれ、リリは剣を押しても引いてもびくともしない。

 

「く、こ、この……」

「残念だが、少女ということもあって筋力がいささか足りなかったな。しかし戦闘センスには目を見張るものがあった。基礎能力も高い。陛下、まず間違いなくこの子は鍛えれば使い物になるでしょう」


 リジェクトは手で掴んだリリの剣を離し、ゆっくりと国王陛下を振り返って言った。


「うむ。では本日より、リリの聖十字騎士団入を認める。存分に励むが良いぞ」

「……ありがとうございます」


 リリは浮かれない顔で、至高の方に拝跪(はいき)した。

 その日の王宮は、天才少女剣士の登場で話がもちきりだった。

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【クリックで先行連載のアルファポリス様に飛びます】使えないと馬鹿にされてた俺が、実は転生者の古代魔法で最強だった
あらすじ
冒険者の主人公・ウェイドは、せっかく苦心して入ったSランクパーティーを解雇され、失意の日々を送っていた。
しかし、あることがきっかけで彼は自分が古代からの転生者である記憶を思い出す。

前世の記憶と古代魔法・古代スキルを取り戻したウェイドは、現代の魔法やスキルは劣化したもので、古代魔法には到底敵わないものであることを悟る。

ウェイドは現代では最強の力である、古代魔法を手にした。
この力で、ウェイドは冒険者の頂点の道を歩み始める……。
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