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23話:範囲魔法取得

 レスティケイブの2階層。

 光球が照らす暗闇の中を、僕とロイさんは探索し、ひたすら魔物を狩り続ける。


「敵近接! 5秒後にエンカウント」


 ロイさんの戦闘開幕前の言葉とともに、僕はおなじみとなった先制射撃を行う。

 雷の弾丸が漆黒(しっこく)の向こうへと吸い込まれるようにして飛んでいき、魔物の鈍い悲鳴があがる。


 やがて暗闇の向こうからぬうっと魔物たちが姿を現した。

 彼我の距離、約7ヤルド(約10メートル)


 戦闘開始前に、最後の一撃・サンダーランスをお見舞いする。

 豪雷(ごうらい)の槍が魔物の前衛だったミドルオークに命中し、断末魔の悲鳴とともに消滅。

 魔石へと変わった。


「よし。あとは俺が受け持つ」

「お願いします!」


 素早く僕は後衛に下がって、隊列を戻す。

 この隊列を守らなければ、僕は敵前衛にイチコロにされてしまう。


 敵の戦力構成は、

 

 前衛 ミドルオーク×2 エルフ武士×2

 中衛 リッチ×2

 後衛 ハイメイジ×3


 この中で最も脅威的(きょういてき)なのは、ハイメイジ。


 前回の戦闘ではあまりにサンダーランスが優秀すぎて、火力で押せ押せの脳筋戦闘スタイルになっていたところが反省点だった。

 まずは焦らず、妨害魔法で決定的な目標の無力化から(はか)る。


「どれから狙う、ルーク!」

「ハイメイジの行動をサンドロックで封じます。まずはハイメイジを叩きましょう!」

「了解した」


 短いやり取りをして、僕とロイさんは意思を疎通(そつう)させる。

 もはや恒例となった僕の先制射撃によって、敵の隊列は乱れておりハイメイジが前衛に出てきている。


 後衛職は軒並み耐久力や近接戦闘能力が低い。

 前衛に出てきた魔法職など、狙ってくださいと言わんばかりのものだ。


 僕は魔法を唱えようとするハイメイジ3体にサンドロックを仕掛け、両手両足を拘束(こうそく)

 魔法の詠唱を妨害する。


 ロイさんは僕の妨害魔法が正常に機能したことを見て取るやいなや、ハイメイジとの距離を一瞬にして詰め、その銀色の剣を一閃した。

 振りかぶった剣がハイメイジの身体を切り裂いていく。


「グゥゥゥゥ!」


 無抵抗のまま、ハイメイジはロイさんに一刀両断にされていった。

 3体のハイメイジが一瞬にして(しかばね)と化す。


 ロイさんがハイメイジを処理しているあいだにミドルオークやエルフ武士が彼を取り囲んで攻撃しようとするが、僕がそれを許さない。

 後衛から雷の弾丸を速射し、牽制(けんせい)威嚇(いかく)する。


 ミドルオークたちのターゲットがこちらに移るのを見てとると、僕は素早く後退する。

 後退しながらサンダーバレットを撃ち時間を稼ぐ、遅滞戦術(ちたいせんじゅつ)


 後退射撃も僕らの戦闘ではおなじみのパターンとなった戦術だ。


 後退射撃によって敵前衛の注意をこちらにひきつけておき、ロイさんが続く敵中衛のリッチを処理しきったところで、僕らは攻勢に転ずる。


 戦況は、僕 → ミドルオーク・エルフ武士 ← ロイさん


 という構図になり、挟撃(きょうげき)、はさみうちの成立である。

 この戦局を作ってしまえば、あとは勝利は目前に転がっているも同然だった。


 僕が前方から雷の槍を投射し、ロイさんがバックアタックで剣を振るう。

 前後から攻撃されたミドルオークたちは為す術もなく倒れ、消滅。


 魔物の(しかばね)が魔石へと変わっていく。

 戦闘終了。

 

「お疲れ」

「お疲れ様です」


 ロイさんが魔石を拾い、僕は戦闘記録をつける。


 やはり僕は、火力魔法で敵を倒すことを優先しないほうがいい。

 きっちりと妨害をやって敵の動きを止め、戦況優位を確実なものにして、一体ずつ処理していく。


 こちらには超優秀なメインアタッカーのロイさんがいるんだ。

 僕が火力として出張る必要は、まったくない。


 となると、先制攻撃用の範囲魔法の取得もそうだけど、新しい妨害魔法も覚えてもいいかもしれない。

 まずは2階層で危なげなく勝利できるようになるまで、ひたすらレベル上げか。


 この階層であと2レベルは上げたいな。


「ロイさん」

「なんだ」


「2階層であと2レベルは上げようと思います」

「街に戻るのはそれからでいいのか?」


「はい。油断しなければ範囲魔法を覚えなくとも2階層では戦えるので」

「分かった」


 僕らはコミュニケーションを取って、ひたすらレベルを上げ続けた。



 ◇ ◆



 ひたすらレスティケイブの2階層に潜って狩りし続け、無事にレベルを2つ上げてから、僕とロイさんはシリルカの街へと戻ってきていた。


 いつものように宿を決めて街の入り口で別れ、別行動を取る。

 シリルカの街は、陽気な人が大通りを行き交う、活気のある街だ。

 

 魔石を売りに商業ギルド目指して通りを歩いていると、常連となった屋台のおじさんに挨拶された。


「よう、ルーク。ダンジョン探索お疲れ様。久しぶりだな」

「おじさん。2日……ぶりぐらいですかね」


「ロドリゲスだ。今回も無事にレスティケイブに行って帰ってこれたか?」

「まぁ、なんとか」


 はにかんで笑う僕を、ロドリゲスさんは豪快に笑って迎えてくれた。


「とりあえず飯、食ってけや。腹減ってんだろ?」

「いいんですか。今日は何です?」


 僕は屋台の椅子に座る。

 昼どきを過ぎていたからか、僕の他に客は誰もいなかった。


「ホワイトラビットのチーズグラタンだ」

「うわー、懐かしい! リリが好きだったなぁ……」


「リリ? ルークのこれか?」

「そんなんじゃないですけど」


 彼女の事をふと思い出して、苦笑する。


 王国で元気にやっているといいのだが。

 リリの真っ直ぐな性格だと、不正を行う上層部と対立してそうで怖い。


 しばらくロドリゲスさんと雑談しながら待っていると、ホワイトラビットのチーズグラタンが出てきた。


 チーズグラタンは、ロロナ村にいた頃のリリの得意料理だった。


 うさぎの肉をホワイトソースでじっくりと煮込み、にんじんとブロッコリーを大きめにカット。

 それを容器に入れて、その上からチーズをふんだんにまぶしてかまどの中でこんがり焼く。

 

 ホワイトソースとチーズが絡みあう、絶妙の味。

 彼女のチーズグラタンは美味しかった……。


 僕は目の前に出てきたチーズグラタンはフォークですくうと、とろりとしていた。

 早速口に含む。


 チーズの濃厚な味と、自家製のホワイトソースの旨味が口の中に広がった。

 リリの作ったグラタンのほうが好みだったが、これはこれで美味しかった。


「うまー……」

「だろ?」


 くつくつと笑って、ロドリゲスさんは何度も頷く。


「ロドリゲスさんのお店は、炒飯だったり肉団子だったりグラタンだったり。なんでも出すんですね」

「そりゃ毎日同じメニューばかりだと客も飽きちまうからな。その日に仕入れた食材を元に、毎日のメニューを決めてるんだ」


「へー。食べる方は色んなの食べれて嬉しいですけど、作るほうは大変そうですね」

「まぁな。店なんか出してても、毎日が勉強だよ」


 やはり、料理人の世界も厳しいのだろう。

 どこの世界でも、日々精進を積み重ねなければ一流にはなれないのだ。


 僕はこんがり焼けたチーズグラタンを食べ尽くしお腹いっぱいになると、笑顔でお礼を言って銅貨3枚を手渡した。


「おい。ルークなら銅貨2枚でいいぞ」

「いえ。今日のは特に美味しかったので。それに……昔も思い出しませたし」


 表情にかすかな哀愁(あいしゅう)がにじむと、ロドリゲスさんは何も言わずに小さく頷いた。


「また、会えるといいな。そのリリって嬢ちゃんに」

「そうですね。生きていれば、いつかは必ず」


 僕は屋台を後にした。



 

 それから大通りをまた歩き、商業ギルドで魔石を売却。

 今回は中級魔石が3つあったので、合計で銀貨5枚の売上となった。


 総資産は銀貨6枚弱。

 これでだいぶ(ふところ)に余裕がでてきた。

 

 新しく装備を買うこともできる。

 まぁまずは聖教会へ行って成長の儀を受けることだ。


 魔石を売った足で聖教会へ(おもむ)き、僕は神父さんに頼んで成長の儀をやってもらうことにした。

 銀貨1枚を支払い、儀式を受ける。


 神聖な雰囲気の教会の中、神父さんの祝詞(のりと)が響き、儀式が終わる。


「今回覚えられる魔法はこれだね」


 水晶に映しだされた、取得可能な魔法一覧を眺める。



【ルーク 取得可能魔法・スキル一覧】


<新規取得可能魔法>


水系統初級魔法 ウォーターウォール

威力E 攻撃速度D 魔力消費D (※防御魔法)




<火系統>


初級魔法 ファイアバレット



中級魔法 ファイアランス

     バーングラウンド(※範囲攻撃魔法)



<水系統>

初級魔法 ウォーターバレット



<雷系統>

中級魔法 サンダースネーク(※範囲攻撃魔法)



<土系統>

初級魔法 サンドボール



<風系統>

初級魔法 ウィンドボール



取得可能数 2



 お、防御魔法が新しく取得できるようになっていた。

 先制攻撃のために範囲魔法を1つ覚えることは確定だったが、他に覚えるべき妨害魔法もないし、今回は防御魔法を習得してみるのもいいかもしれない。


 範囲魔法はバーングラウンドかサンダースネークか。

 どちらにするべきか。


 現状では雷系統が僕のメイン魔法なので、範囲魔法もサンダースネークを取って雷系統ばっかり上げるのは避けたい。

 強くなるために時間制限があるわけでもないし、今はじっくりと色んな系統の習熟度を上げていこう。


 というわけで、覚えるべき範囲魔法は火系統のバーングラウンドだ。


「とりあえず1つ確定は、バーングラウンドでお願いします」

「分かった」


 神の祝福の光が舞い、僕に新たな魔法が天啓(てんけい)される。


「それと2つめの取得魔法ですが……神父さん、水系統を使いこなせるようになれば、何か得がありますか?」

「水系統は治癒や防御が優秀な系統だから、そういう方面を伸ばしたいなら取るべきだね」


 なるほど。

 僕は総合力で戦う魔導師を目指しているから、いざというときの治癒魔法があっても損はないだろう。


 ウォーターウォールは防御魔法ということで、こないだボーンキメラ戦であったような炎のブレスを防ぐこともできるし。

 言われてみれば僕は火力や妨害ばかりで、防御方面の魔法に(うと)い。

 

 ここらで防御力を高めておこう。


「それじゃ、2つ目はウォーターウォールでお願いします」

「うむ」


 こうして僕は、範囲魔法のバーングラウンドと防御魔法のウォーターウォールを取得した。

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【クリックで先行連載のアルファポリス様に飛びます】使えないと馬鹿にされてた俺が、実は転生者の古代魔法で最強だった
あらすじ
冒険者の主人公・ウェイドは、せっかく苦心して入ったSランクパーティーを解雇され、失意の日々を送っていた。
しかし、あることがきっかけで彼は自分が古代からの転生者である記憶を思い出す。

前世の記憶と古代魔法・古代スキルを取り戻したウェイドは、現代の魔法やスキルは劣化したもので、古代魔法には到底敵わないものであることを悟る。

ウェイドは現代では最強の力である、古代魔法を手にした。
この力で、ウェイドは冒険者の頂点の道を歩み始める……。
+注意+

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