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20話:中級魔法

 おじさんの屋台で肉団子の甘酢かけとライスをかっくらうようにして食べ、僕は幸福な気分に満たされる。

 

 美味しい。

 やはり美味しいご飯は、人を幸せにする。


 僕は満足した気分のまま聖教会へと向かった。


 シリルカの街の通りを歩き、荘厳(そうごん)な文様が彫られている建物へとたどり着く。

 大理石で作られた聖教会の扉を開けて中へ入って行くと、いつもながらに神聖な雰囲気に包まれている。


 ステンドグラスを通した太陽の光が、七色に輝いて降り注いでいた。

 中央奥の祭壇(さいだん)までまっすぐ歩いて行って、神父さんに声をかけた。


「こんにちは、神父さん」

「おや、ルークくんだったね。ようこそ、聖教会へいらっしゃい。なに用かな?」


「成長の儀をお願いします」

(うけたま)ろう」


 神父さんは破顔してうなずいた。

 成長の儀の料金は前回と同じく銀貨1枚と銅貨5枚だったが、ここでも僕は意を決して交渉してみると、銀貨1枚まで下げてもらうことができた。


 うーん、交渉して値段を下げられるのなら、正直しない理由がないなぁ……。

 この調子で色んなところに交渉を持ちかけれるようになりたい。


 神父さんは他に仕事もなかったのか、そのまま祭壇の前で成長の儀に移ることになった。


 しばらく神父さんが祝詞や祈祷(きとう)をしているのを待つ。

 こればかりはめんどくさくて、全然楽しくない。


 それでも、これから来る成長タイムの事を思えば、胸は高鳴る。


「よし、神もルークくんに祝福を与えてくれるようだ。魔法・スキルの取得に移ろう」


 来た来た。

 魔法を新しく覚えるこの瞬間が、1番楽しい。


 僕は水晶に映る取得可能魔法とスキルの一覧を覗きこんだ。



【ルーク 取得可能魔法・スキル一覧】


<新規取得可能魔法>


雷系統中級魔法 サンダーランス

威力C 攻撃速度A 魔力消費A


雷系統中級魔法 サンダースネーク

威力D 攻撃速度B 魔力消費B(※範囲攻撃魔法)



土系統初級魔法 サンドボール

威力E 攻撃速度D 魔力消費D


土系統初級魔法 サンドロック

威力F 攻撃速度D 魔力消費C(※妨害魔法)



風系統初級魔法 ウィンドボール

威力E 攻撃速度D 魔力消費D



<火系統>


初級魔法 ファイアバレット



中級魔法 ファイアランス

     バーングラウンド



<水系統>

初級魔法 ウォーターバレット



取得可能数 2




「おー! 色々と取得可能な魔法が増えてますね」

「そのようだね。どれにするかい?」


 水晶を二人して覗き込みながら、今後の取得魔法を相談する。


「どれがいいかな……。今レスティケイブの2階層で戦っていて、圧倒的に魔法力不足を実感しているんです」

「今のルークくんのメイン魔法は、何を使っている?」


 水晶を見ながら、僕は彼の質問に応えた。


「サンダーバレットで足止めして、ファイアボールを叩き込むのが、今の僕の王道戦法ですね」

「たしかにそれだとレスティケイブでは厳しいかもしれないな……。ならおすすめは、速度を維持しつつ火力を増強できるサンダーランスだね」


 たしかに。

 サンダーランスは、完全にサンダーバレットの上位互換だ。


 攻撃速度Aのまま、威力がCに上げることができる。

 その代わり、魔力消費もAと半端ではない。


「でもこれ魔力消費が激しいですよね。こんなのをポンポンと使っていたら、すぐにガス欠を起こしそうになる気がしますが」

「それでもルークくんのレベルは着実に上がっているわけだし、総魔力量も増えているはずだよ。最初はマジックポーションなど持ち歩いて、いざという時に備えていたほうがいいと思うが」


「ふーむ……」


 神父さんの言葉に考えこむ。

 速度を落とさず火力を増強できるのは嬉しいし、サンダーランスを取っておいて損はないか。


「分かりました、とりあえず1つの目の魔法はサンダーランスにします」

「了解した」


 神父さんが神に祈りを捧げて、きらきらした光が僕の身体に集まった。


「取得完了だ」

「ありがとうございます。2つ目は……」


 続けて水晶を見て考えこむ。

 そうだ。

 2階層の罠に対処するために、トラップ探知魔法が必要だったんだ。


「トラップを探知できる魔法が欲しかったんですけど、それってどうやったら覚えられるようになります?」

「探知魔法は、上位系統の無系統の魔法になるね。水系統の習熟度をあげたら、いずれ現れるようになるよ」


 僕はあごに手をあてて考えこんだ。

 そうか。

 一種類だけに絞ってあげていたら、こういう面でも(かたよ)りが出てくるのか。


「一朝一夕には取れない感じですか」

「だね。地道に習熟度を上げて無系統の出現を待つか、改善を急ぐのなら探知スキルのついた装備品で(おぎな)うのも手だと思うが」


「装備品! その手があったか!」


 盲点を突かれた思いだった。

 今から風と土の両方をあげていたら、いつ取得できるか分からない。


 装備品で補えるのなら補いたい。


「ルークくんは、装備品はシャーレくんのお店で買っているんだろう?」

「ちょっと気だるげでダルそうな感じのお姉さんが店主のお店で、このローブは買いましたね」

「シャーレくんだね、間違いない」


 神父さんはくすくすと笑う。


「あれでいて、シャーレくんの店はなかなか優秀な装備を揃えているから、一度相談してみるといいよ」

「分かりました。ならトラップ探知は装備品で補うことにして、2つ目の魔法は妨害魔法のサンドロックというものを取ってみようかな」


 名前から想像するに土砂で敵の動きを封じる魔法のようだが、これがあればだいぶ戦術にも幅が出る気がする。

 どちらかと言うと僕は火力魔法でゴリゴリ押すより、妨害を絡めてロイさんを援護(えんご)しつつ戦うほうが性に合っている気がするし。


 それに土系統も上げていると、いつかトラップ探知が魔法で欲しくなった時にもすぐ取れていいだろう。

 上位系統の無系統の他の魔法も覚えてみたいし。


 僕は色んな系統の魔法を覚えながら、総合力で戦う魔導師を目指そう。


「では2つ目の魔法は、サンドロックをお願いします」

「了解した。ルークくんに神の祝福を」


 神々の光が僕の身体に降り注ぐ。

 サンダーランスとサンドロックを新しく覚えて、神父さんに感謝を告げると、僕は聖教会を後にした。




 それからシャーレさんの装備品店へとやってきた。

 木の扉を押して、店の中に入る。


「っしゃーせー……」

「相変わらずやる気のない挨拶ですね」


 だるそうにカウンターで頬杖をつく店主のシャーレさんを見て、僕は苦笑する。

 シャーレさんの店の中は、商品が綺麗に整理されていた。


「おぉ、ウェルリアから来た少年じゃないか」

「ルークです。また装備品を買いに来ました」


「ルークくんか。私はシャーレだよ。お得意様になってくれるんだねー。歓迎歓迎~♪」

「実は、探している装備があるのですが」


 おずおずと、切り出す。


「ん? いいよー、なんでも言ってごらん」

「レスティケイブ2階層で罠にかかったりするので、それを防ぎたいんです。トラップ探知の効果がついた装備品はありますか?」


「トラップ探知効果の装備品、ねぇ……。あるにはあるけど、でもどれも高いよー?」

「げ。や、やっぱりですか。どのぐらいします?」


 商業ギルドで銀貨4枚の収入を得て、食事に銅貨2枚、成長の儀に銀貨1枚を使った。

 だから残りの資金は、銀貨2枚と銅貨18枚。


「トラップ探知の魔法付与効果(マジックエンチャント)がつく部位にもよるねー」

「部位?」


「そそ。靴とか鎧とか、剣とか小手とか」

「あぁ、なるほど……。装備品はそれぞれの部位につけられるから、どこの部位にどの魔法効果がついた装備をつけるかも考えなきゃいけないんですね」


 そういうこと、とシャーレさんは頷く。


「両指で最大10個も装備ができる指輪でトラップ探知や毒・麻痺・凍結などの状態異常抵抗を稼ごうとするなら、かなり値段は高くなる。

 逆に鎧とか、あぁ君で言えばローブかな? ローブとか、杖でトラップ探知を稼いでもいいのなら、わりと安くなるよ」


「何故ローブや杖は安くなるんですか?」

「ローブには最大防御力・最大魔力の倍率上昇の魔法付与効果(マジックエンチャント)がつくし、杖には攻撃速度上昇や魔法攻撃力アップという超優秀な魔法付与効果がある」


「それはすごいですね」

「だね。魔導師の最終装備品で考えるのなら、やっぱり杖やローブには最大防御力、攻撃速度、魔法攻撃力、魔法習熟度上昇効果のある魔法付与(マジックエンチャント)をつけたいところだね。

 だからみんな、杖やローブにはあまり抵抗や探知なんかをつけたがらない。

 前述した魔法付与が優秀すぎるからね」


「そうか……。指輪は両手で10個つけられるから、そこでみんな毒や凍結抵抗、トラップ探知なんかを稼ぐんですね」


「そういうわけだね。っつーことで、とりあえずその場しのぎにローブや杖でトラップ探知を稼いでもいいのなら、銀貨2枚ぐらいで融通(ゆうづう)できるけど」


 どうするべきか。

 装備や魔法付与効果にも色々こだわったほうがいいのは確かなんだろうけど、今から一気に最終装備を目指して揃えるより、地道に抵抗や探知などのすぐにも役に立つ装備を揃えながら、それから徐々に改善していけばいいか。


 2階層でレベル上げができるようになると、もっとお金を稼げると思うし。


「分かりました。では杖でトラップ探知を稼ごうと思います」

「お。まいどあり~♪」


 シャーレさんは商品が売れて嬉しそうに、トラップ探知がついた杖を棚の奥から引っ張り出してきた。


「金づる金づる。美味しいねぇ」


 なんだか黒いことを言っている。


「あ、でも割引してくださいね。銀貨1枚と銅貨18枚でお願いします」

「おおう……少年もついに交渉を覚えたか」


「シャーレさんが育ててくれたおかげですよ」

「この野郎ぉー。ま、でもいっか。ルークくんみたいな見込みある新人が定期的にうちで装備買ってくれるなら、私にとっても絶対得だもんね」


「はい。末永く利用させていただきたいと思います」

「うむうむ。今回の収益でまた新しい装備仕入れとくから、困ったことがあったらなんでも私を頼るのだよ」


「ありがとう、シャーレさん」


 僕は破顔してお礼を言った。


「どういたしまして」


 こうして僕は魔法と装備を新調し、レスティケイブ2階層攻略への足がかりを作った。

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【クリックで先行連載のアルファポリス様に飛びます】使えないと馬鹿にされてた俺が、実は転生者の古代魔法で最強だった
あらすじ
冒険者の主人公・ウェイドは、せっかく苦心して入ったSランクパーティーを解雇され、失意の日々を送っていた。
しかし、あることがきっかけで彼は自分が古代からの転生者である記憶を思い出す。

前世の記憶と古代魔法・古代スキルを取り戻したウェイドは、現代の魔法やスキルは劣化したもので、古代魔法には到底敵わないものであることを悟る。

ウェイドは現代では最強の力である、古代魔法を手にした。
この力で、ウェイドは冒険者の頂点の道を歩み始める……。
+注意+

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