追憶06:果たされなかった約束は?
「.........あのね。僕、すっごく嬉んだよ?僕が頑張れるのって、黒のおかげだと思うんだよね。困ったときに、側にいてくれるって分かってるから何があっても大丈夫って思えるんだ。」
僕と男の子の二人しかいない、静かな放課後の教室。
まぁ、この教室には元々人は寄り付かないんだけど。
僕の言葉に隣に座っていた男の子、黒は嬉しそうに笑った。
「あはは。そう?何か嬉しいなー。」
嬉しそうに笑う黒に、僕はふと疑問を抱いた。
「……ねぇ、黒。黒が困ったときは、誰が助けてくれるの?」
黒はクラスの皆から気味悪がられて、友達と呼べる人は僕以外いなかったはず。
……僕も"友達"は、黒だけだけど。
クラスの皆は所詮上っ面だけの"オトモダチ"だから。
「え。困ったとき?んー……。」
黒は考えるように、首を傾げた。
それに僕は、黒の顔を覗きこんだ。
「じゃあ、僕が行くよ。黒が困ったときは、僕が一番に駆け付ける。」
僕がそう言うと、黒は驚いたように目を見開いてた。
でもすぐに嬉しそうに、そして照れくさそうに笑った。
「あ、マジで?.....うん。空が来てくれるなら、きっと何でも解決できるな。」
そんな百人力みたいに言われてもなー。
僕は、苦笑しながら答えた。
「さすがに何でもは厳しいよ、黒。でも、黒の為ならきっと頑張れるから。約束だよ?黒。」
僕は、小指を黒に差し出した。
それに黒は、優しく微笑んで小指を出してくれた。
「じゃあ、俺も空が困ってたらすぐに助けに行くから。約束。」
その言葉に僕は、自然と頬が緩むのを感じた。
僕が自然に笑えるのは、黒の前だけだなー。なんて思いながら僕は頷いた。
「うん。待ってるね。」
僕と黒は他に誰もいない静かな放課後の教室で、小指を絡ませて二人で声を揃えて言った。
「「ゆびりきげんまん。嘘ついたらはりせんぼん飲ーます。ゆびきった。」」
_____これが、唯一の信頼出来る親友とのかけがえの無い約束。
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その約束は、結局黒の突然の失踪で果たされることは無かったけど……。
いつまでも、変わらない大切な僕の思い出。
「黒、またいつか会えたら……。黒を一目散に助けに行くからね。」




