追憶05:呼び方の違いは?
夜十神君の話す話は面白くて 、僕はいつの間にかあの教室に通うようになっていた。
夜十神君は、教室では一切関わってこない。
僕が頼んでいることだけど、まさかここまで徹底的にやってくれるとは思わなかった。
ボロが一回も出ないのには、僕より演技の才能があるんじゃないかとおもうくらい。
ケータイに勝手に連絡先を入れられてたのはビックリしたけど、連絡をしてくるわけではなくって……。
最近、だんだんと仲良くなってから連絡を取り合うようになった。
それでも頻繁ではなくって、たまに話すくらい。
はっきり言って、"オトモダチ"と比べると明らかに少なかった。
「なぁ、碧水ちゃん。」
不意に声をかけられて、僕は反射的に夜十神君の方を向いた。
「何?夜十神君。」
僕がそう聞くと、夜十神君は少し照れたように笑った。
「んーと。これから、空って読んで良い?」
「空?」
僕の下の名前の頭文字。
ニックネームみたいなもの、かな?
「うん。あ、俺のことは黒って呼んでよ。せっかく仲良くなれたからさ。名字呼びなんて他人行儀じゃん?どうかな?」
そう言って夜十神君は、照れくそうに笑って首を傾げた。
他人行儀かー……。まぁ、確かにね。
一応、夜十神君は僕の素を知ってる唯一の人だし……。
「良いよ。えっと……。じゃあ、改めてよろしくね?黒。」
そう言うと夜十神君改め黒は、嬉しそうに笑って頷いた。
「おぅ。改めてよろしくな、空。」
……空なんて呼ばれるのは初めてだから、なんか照れくさいなー。
まぁ、でも黒が嬉しそうだからいっか。
僕は嬉しそうに笑って話始めた黒の話を聞きながら、小さく笑った。
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「……あのさ、空は魔王と勇者ならどっちが好き?」
突然、黒はそんなことを言った。
何でそんなこと聞くのかな。と言う疑問は、黒の何故か真剣な目で真っ直ぐ見られると言えなかった。
「そうだなー……。魔王、かな?」
そう言うと、黒は何故かほっとした様子だった。
黒はたまによく分からない行動をとったりするけど……。
まぁ、気にしないで良いことが多い。
って言うか、考えても結局分からないから、考えるだけ無駄。
だから、僕はあまり詳しく考えずに思った通りに答えた。
「勇者って、真っ直ぐな善人とかっぽいし……。僕とは合わないかな。」
「……あー。成る程。勇者って、マジで頭いかれてるよな。他人のために、命かけて戦うなんてさ。」
「それもそうなんだけど……。僕の持論だけど、世の中に善人はいない。いるのは、偽善者だけ。だから、勇者は僕的に偽善者かなー。だって、勝手に助けて感謝されるなんて、善意の押し付けじゃん。助けて欲しいかなんて、勇者には分からないのに。」
そう僕が言うと黒は目を見開いてから、笑った。
「相変わらず、凄い思考回路してるな。まぁ、でもあながち間違ってないよな。」
凄い思考回路って……。
そうかな?僕的には、ごく普通の考えなんだけど。
「まぁ、とにかく勇者とは気が合わないと思うよ。どちからと言えば、魔王と気が合いそうかな。世界とはいらないけど、高みから見下ろすのは面白そうだし。」
そう言うと、黒は苦笑して頷いた。
「まぁ、確かにな。世界とか手に入れてどうするんだろうな。」
それに僕は首を傾げた。
「んーと。ぶっ壊す?」
こんな面倒な世界は、いらないかも。
あ。でも、黒といるのは結構楽しいかな。
「ぶっ壊すってw」
黒は僕の解答につぼったみたいで、お腹を抱えて笑いだした。
……そんなに面白かったかな?
まぁ、黒が楽しそうなら別にいいけど。
僕は笑ってる黒を見て、自然と頬が緩んだ。
こんな日常が、続けば良いのに。
____でも、いつだって"リアル人生ゲーム"は無慈悲に全て奪い去っていく。




